"スズメバチ事故の遺言" 第4話
「養蜂が蜂への備えを何も持っていなかったか。それは確かに引っかかるな」
桑名は、当の記録をもう度見直すことを約束した。
数、桑名は県警の資料で、8の記録を引っ張りした。
松吉、当72歳。
1997710、自宅くの蜂にてスズメバチに刺され、アナフィラキシーショックにより。
事件性なし。
事故として処理。
記録はごく簡単なものだった。事故として扱われたため、詳しい捜査はわれていない。類はく、写真も数枚しかなかった。
桑名は、そのい記録を1ずつ読み返した。
やがて、当の検に関する覚えきの隅に、い記述を見つけた。
蜂毒による反応とは別に、薬物への反応を疑わせる所見。
当は誰も注目しなかった文だった。
しかし、8に注射器が見つかった今、そのはまったく違って見えた。
蜂の毒だけではない。
この男の体には、別の何かが入っていた能性がある。
桑名は資料を閉じ、越に話を入れた。
「越、記録を見た。おの引っかかりは、違っていなかったかもしれん」
話の向こうで、越が息をのむ気配がした。
「これは正式に、もう度調べ直す価値がある。いうちにそっちへく。当のことをっているに、片っ端から会わせてくれ」
こうして、8に閉じられたはずの来事は、通のと1本の注射器をきっかけに、再びき始めた。
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5の初め、桐原は初の気配に包まれていた。
田んぼの稲は青く伸び、々の若葉はごとに濃くなっていった。昼は汗ばむも増え、畦にはいが点々と咲き始めていた。
その町に、桑名がやって来た。
背はく痩せていて、し背を丸めて歩く癖があった。髪にはいものが混じっていたが、目だけは鋭く、よくいた。、の表の奥にあるものを見抜いてきた刑事の目だった。
桑名はまず駐所で越と顔をわせた。
若い頃に机を並べた2が、髪の混じる齢になって、再び1つの来事をに向かいっていた。懐かしさはあったが、余計な傷に浸るはなかった。
桑名は言った。
「まずは、松吉さんの周りにいたたちに話を聞こう。くなるの様子、誰と付きっていたか、の入り、体調。な仕事だが、それしかない」
越はうなずいた。
2は桐原の町を1軒ずつ訪ね歩いた。
最初に向かったのは、商の物だった。松吉の蜂蜜を置いていたで、棚の片隅には、今も松吉が最にろしていった蜂蜜の瓶が1つ残されていた。売り物ではなく、主が記に取っておいたものだった。
琥珀の蜜は、8経った今も静かにを集めていた。
主は松吉の名を聞くと、懐かしそうに目を細めた。
「松吉さんは本当に正直なでしたよ。
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蜂蜜の量を1度だってごまかしたことがない。今はがくて蜜の来が悪いなんて言いながら、それでも約束した分はきっちり持ってきてくれてね」
そこで主は、し考えるように声を落とした。
「ただ、くなる1くらいからかな。し元気がなくなったように見えたんです。みたいに話をしなくなって、痩せたなあともいました」
くなる1ほどから元気がなくなった。
痩せていた。
桑名はその言葉を胸に刻んだ。
次に2が訪ねたのは、農協の事務所だった。松吉は養蜂だったが、わずかな田畑も持っており、組とはい付きいがあった。
古い職員は松吉をよく覚えていた。
「真面目なでした。借りたものはきっちり返す。期に遅れたことなんて1度もない」
しかし、その職員は話の途で表を曇らせた。
「これはきな声では言えないんですが、松吉さんはくなるしに、まとまったおをて替えてほしいと相談に来たことがありました」
桑名と越は顔を見わせた。
「おを?」
「ええ。きな額ではありませんでした。でも松吉さんはおにきれいなで、から借りるようなことは滅にないだった。だから覚えているんです」
「何に使うと言っていましたか」
職員は記憶を探るように目を細めた。
「古い借りを返さなきゃいかん、と言っていました」
古い借り。
桑名はその言葉に引っかかりを覚えた。
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