みかん小説
本棚

"雨の日の給食費制裁" 第8話

どこへっても、あのイベントのことを囁かれ、まともな職には就けなかった。

結局、2がありつけたのは、夜のビル清掃の仕事だけだった。

ある夜、弓は泣きながらモップをに投げ捨てたという。

「もう嫌。なんで私がこんな汚いトイレの掃除なんてしなきゃいけないのよ」

「うるさい。これも全部、お遣いの荒さのせいだろうが。自業自得だ」

鳴り返す。

「お母様こそ、向こうの財産は私たちのものだなんて言って調子に乗るから!」

「あのイベントで惨めな姿をさらしたのは、おのせいよ!」

「なんですって!」

かつて互いを飾りてるためにしていた親子関係は、今や憎しみと責任のなすりつけいに変わり果てていた。

そして、私の息子だった武志。

彼はもちろん会社を懲戒解雇され、額の損害賠償と慰謝料の支払いを命じられた。

づるを失った弓は、あっさりと婚届を突きつけたそうだ。

族も、仕事も、社会位も、すべてを失った武志は、借を返すために雇いの肉体労働でいつなぐしかなかった。

慣れない力仕事で体はぼろぼろになり、かつて役員として振るっていた面はどこにもない。

あるの夕暮れ、彼は事現の帰りに、公園のベンチで1たい弁当をべていた。

その、ふと目のを通り過ぎる幸せそうな2の姿に目を奪われたという。

広告

それは、しいワンピースを着て、嬉しそうに私のを取る里の姿だった。

「あ……里……母さん……」

武志の声は、誰にも届かなかった。

私と里は、楽しそうに笑いいながらデパートのへ消えていった。

かつて彼が、妻たちの贅沢のために利用し、娘のためには使わなかった所へ。

その景を見つめながら、武志の目から涙がこぼれ落ちたそうだ。

「俺は何を違えたんだ……」

彼は嗚咽を漏らしながら、で叫んだという。

「俺が守るべきだったのは、本当に切にすべきだったのは、あっちだったじゃないか」

悔。

絶望。

そして、取り返しのつかない喪失

武志にとっての本当の獄は、位を失ったことではない。

自らので、本物の宝物を踏みにじってしまったことに、今さら気づかされたことだった。

けれど、もう遅かった。

里はもう、彼の元へ戻らない。

私は正式な続きを経て、里を引き取った。

もちろん簡単なではなかった。弁護士との話しい、学との連絡、活環境の備、必類。やるべきことはほどあった。

けれど、里をあのから救いすためなら、私は何でもできた。

里が私ので暮らすようになってから、最初の数週は、まだ怯えが残っていた。

事をすと、里はさな声で尋ねた。

「これ、べてもいいの?」

「もちろんよ」

広告

しい文具を用すると、里はすぐには受け取ろうとしなかった。

「ばぁば……られない?」

私はそのたびに、胸が痛んだ。

「もう誰もらないわ。里が使うためのものよ」

も、消しゴムも、ノートも、も。

本来なら子どもが当たりに持っていていいものばかりだった。

それを受け取ることにまで怯えるほど、里は追い詰められていたのだ。

私は急がなかった。

毎朝「おはよう」と声をかけ、毎晩「おやすみ」と言った。

卓には温かいご飯を並べた。

であったことを聞いた。

泣きたいは泣いていいと言った。

そうしてしずつ、里の表に柔らかさが戻ってきた。

費はすぐに支払った。

には事を説し、里が肩の狭いいをしないようにお願いした。

担任の先げた。

里さん、本当にしていたんですね。これからはこちらでも注して見守ります」

私は里のを握り、静かに頷いた。

あるれたの午、私は里を連れてデパートへった。

あの、弓に奪われたワンピースのことがずっとに残っていたからだ。

子ども売りに着くと、里は最初、私のろに隠れるように歩いていた。

里、好きなものを見ていいのよ」

「でも……」

「今は、里のために来たの」

私はそう言って、里の背をそっと押した。

里はしずつ棚へづいた。

そして1着のワンピースのを止めた。

淡いのワンピースだった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: