みかん小説
本棚

"弁当箱の中の復讐" 第8話

私は両わせた。

娘を守れなかった悔しさは消えない。

けれど、娘を侮辱した者をそのままにはしなかった。

それだけは、母親としてやり遂げたかった。

、精算のために美度だけを訪れた。

久しぶりに会う美は、ずいぶんやつれていた。髪は以よりも乱れ、目のにはがあった。いつもえていた化粧も、どこか力がなく見えた。

そして、彼女は無職になっていた。

あのボイスレコーダーの音声データについて、会社でちょっとした騒ぎになったらしい。

最初、周囲のたちは美の本性に半信半疑だった。普段の美は猫をかぶるのがかった。男性社員にはよく、困ったには甘え、仕事も表面はきちんとこなしているように見せていた。

だから社も、いきなり解雇するのではなく、しばらく謹慎させて様子を見るつもりだったという。

けれど、そこで例のお局がいた。

「あの子は普段から仕事もを抜いていますし、請けには失礼な態度ばかり取るような子でしたよ」

その言をきっかけに、社内の空気が変わった。

お局だけではなかった。

請けへの態度を見ていた社員。

の言葉に違を覚えていた

彼女に都よく使われたことのある

それぞれがしずつ、「そういえば」と話し始めたのだという。

広告

謹慎が解けた、美を信じるはもういなかった。

男性社員たちの態度もたくなった。以なら美が困った顔をすれば誰かが助けてくれたのに、今は誰も目をわせない。社も必限の連絡しかしない。直属の司も、個な雑談を避けるようになった。

会社にいるだけで、針のむしろのようだったのだろう。

結果、美は自ら退職を選んだ。

「自分を見つめ直す会になりました」

精算に来た美は、最にそう言った。

「ありがとうございました」

その言葉が本だったのか、皮肉だったのか、私には分からない。

けれど、以のようにを見し、笑いながら侮辱する声ではなかった。なくとも、痛みをったの声ではあった。

私は美の幸せを願う気持ちにはなれなかった。

娘を侮辱された記憶は、消えない。

けれど、彼女が今としてしでも成できるならいいとはった。

それが、の先輩であり、は義理の母だった者の、最の願いだった。

久はしばらくの数がなくなった。

婚を決めたのは自分だった。けれど、信じていた妻の本性をった傷はかったのだろう。

「母さん、俺、見る目なかったな」

ある夜、久はぽつりと言った。

私は台所でお茶を淹れていたを止めた。

「そんなことないわ。

広告

面だけじゃ分からないもの」

「でも、ゆりえのことをあんなふうに言うを、俺はに入れてしまった」

久の声には悔が滲んでいた。

私は湯呑みを置き、久の向かいに座った。

「あなたが悪いわけじゃない。美さんは、でいい顔をするのがだった。それに、あなたはゆりえを事にっていたからこそ、同居を提案してくれた。その気持ちは、ゆりえにも伝わっていたとうわ」

久は目を伏せた。

「本当にそうかな」

「ええ。あなたがさい頃、ゆりえのことで悔し泣きしたを、私は今でも覚えている。あなたはあの頃からずっと、ゆりえの方だった」

そう言うと、久は唇を噛み、しだけ涙ぐんだ。

ゆりえを失い、美を失い、久のでも何かがきく変わったのだとう。

けれど、は止まらない。

しみのでも、活は続いていく。

私たちは、しずつしい常に慣れていくしかなかった。

それからしばらくして、久は転勤を命じられ、実ていった。

再婚はしていない。

けれど仕事は楽しいらしく、以よりもずっときして見えた。職で評価され、ぐんぐん昇していった。美婚してから、活費や無駄な費も減ったのだろう。気づけば、かなり貯も増えたようだった。

ある久から話がかかってきた。

「母さん、猫を飼った」

私はわず聞き返した。

「猫?」

「ベンガル。級血統付きにゃんこ」

話越しの久の声は、妙に弾んでいた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: