みかん小説
本棚

"8年目の生マイク" 第10話

「無理やりに乗せました。そして、真岡町の柿畑へったんです」

「到着してからは」

正弘は唇を噛みしめた。

「畑に着くと、さゆりも気づいたんです。のドアを掴んで、『どうしてここに来たの。私に何をするつもり』と叫びました」

彼の声がさくなった。

「柿のに引きずっていって、あらかじめ準備していた鈍器で……」

そこで言葉が詰まった。

は急がせなかった。

正弘はようやく息をえた。

を打ちました。1度、2度……そのは記憶がびです。気がつくと、さゆりは息をしていなくて、私はスコップを握って面を掘っていました」

「そのは」

「ビニールで包んで埋めました。け方7頃にへ戻り、シャワーを浴び、着替えてから、7半に息子へ話しました。『お母さんがけ方に散歩へったまま帰ってこない。配だ』と」

正弘は乾いた笑いを浮かべた。

「さゆりの携帯話は、帰る途に川沿いのU歩むらへ投げ捨てました。散歩に事件に巻き込まれたように見せるためです」

は最に尋ねた。

「8、その畑へったことは」

正弘は激しく首を振った。

「ただの1度もありません。見るのも嫌だったし、けば嘘が割れるのが怖かった」

彼は井を見げ、つぶやいた。

「放送局のマイクが、休憩にもオンになっているなんてにもいませんでした。

広告

もテレビの世界できてきたのに、あんな基本なことを忘れるなんて」

拳をテーブルに打ちつけ、声を震わせた。

「あの、たった言が、自分の首を絞めることになるとはいませんでした」

は録音止ボタンを押した。

「本田さん、今の取り調べはここまでです」

正弘は顔をげられず、テーブルに額を押しつけたまま、獣のような声を漏らし続けた。

は、佐藤にく言った。

「この真実1つを聞きすのに、8もかかった」

20075、宇都宮方裁判所の法廷は傍聴で埋め尽くされていた。

かつて域の尊敬を集めた名キャスター、本田正弘。

そして8、彼が劇の夫を演じ続けていたという衝撃。

その裁判を見届けようと、くの々がを運んでいた。

被告席の本田正弘は、背筋を伸ばして正面を見つめていた。だが目元はかつての輝きを失い、くくぼんでいた。

裁判が厳粛な表で判決文を読みげると、法廷はを打ったように静まり返った。

「被告、本田正弘を懲役20に処する」

正弘は表を変えなかった。

ゆっくりとげた。

隣に座っていた弁護士が控訴の向を尋ねたが、正弘は力なく首を横に振った。

「受け入れます」

もう遅すぎた。

裁判の過程では、さらに皮肉な事実がらかになった。

正弘は犯、初めてさゆりの保険の受取が自分ではないことをった。

広告

本田さゆりは、夫に内緒で命保険に加入していた。

しかし受取に指定していたのは、夫ではなく2の子どもだった。

さゆりは静かに、子どもたちの未来だけを準備していたのである。

検察官は法廷の央で、正弘に厳しく言葉を向けた。

「被告は1000万円ののためにりを募らせ、さらに妻の命の代価である保険まで狙ったと自しました。しかし、被告の予とは裏腹に、受取は最初からあなたではありませんでした」

傍聴席のあちこちから、いざわめきが広がった。

正弘の肩が、い荷物に押しつぶされたようにさく震えた。

続いて、黒いスーツを着た鈴匠が証席にった。

38歳の匠は、8よりもはるかにやつれた顔でマイクのっていた。

「証。8という、なぜ真実を語らずに沈黙していたのですか」

匠はくうつむいた。

「1000万円です。あのおのせいで、僕が犯にされるんじゃないかと怖かったんです。自分のかわいさにを閉ざした卑怯者です」

涙が頬を伝った。

「おばさんが最話してきた、おばさんは『怖い』と言って、僕を頼りました。それなのに、僕は何もしなかったんです」

匠は乱暴に目元を拭った。

「あのけ方、僕が1度でも駆けつけていれば、おばさんがあんなたいで8も忘れられることはなかったのに」

法廷は、痛みに満ちた沈黙に包まれた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: