"20年目の神隠し夫婦" 第5話
株で300万円の損失か」
記事は、俊介が結婚資を株の投資で失ったかのようにきてていた。しおりはその事実をらなかったとも報じられた。
追い打ちをかけるように、しおりの学代の元恋が、モザイク越しにテレビへ演した。
「結婚の2か、突然彼女から話がありました。会いたいという誘いは断りましたが、声がひどくに震えていて……」
それらの報は、またたくにネットニュースのトップを独占した。
世の目は、配からたい分別へと変わっていった。
だが、それらはすべて、聴率とアクセス数を稼ぐために真実を歪めたものだった。
警察が俊介の証券座を調べた結果、実際の損失額は80万円程度だった。到底、結婚活を破綻させるような額ではなく、週刊誌の報はきく誇張されていた。
元恋との通話記録も調べられたが、通話はわずか3分らず。しかもしおりの方から方に話を切っていたことが判した。
けれど、度暴を始めた群衆の狂気は、つまらない真実など見向きもしなかった。
やがて衆の疑いは、最も抵抗できない所へ向けられた。
標になったのは、2が最に泊まっていた奄美島の民宿の老夫婦だった。
「あの民宿の老が何かを隠しているんじゃないか」
「目当てで若い2に何かした能性もあるぞ」
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夜、民宿の固定話がけたたましく鳴り響いた。
受話器を取ると、「本当のことを言え」というくたい声がして、すぐに切られる。無言話と嫌がらせが続き、老夫婦はにに顔を失っていった。
結局、精神に限界まで追い詰められた主は、した宿の板をろし、ひっそりと廃業することを余儀なくされた。
この残酷すぎる状況に、両の族はく傷つき、眠れぬ夜を過ごした。
俊介の父親は、これ以の誹謗傷を止めるため、ついに記者会見をく決断をした。
無数のカメラのフラッシュが容赦なくたかれる、たった1週で10歳も老け込んだように見える父親は、マイクのにった。
そして90度の角度で、く、くをげた。
い沈黙の、震える声で絞りすように語り始めた。
「この度は、世をお騒がせして変申し訳ありません」
被害者の族であるはずの彼が、まず社会に対して謝罪の言葉をにした。
それが、そのの世の圧力だった。
「ですが、息子は真面目で責任のあるです。何かから逃げるような子ではありません。どうか、どうか根拠のない噂を広めるのはやめてください」
しかし翌朝の聞には、彼の涙よりも、センセーショナルな疑惑の見しがきく踊っていた。
しおりの姉である結も、りとしみに震えながら、妹のブログに文の記事を投稿した。
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妹がどれほど結婚を待ちにしていたか。
婚旅用の鞄を、2で京の吉祥寺へ買いにったのこと。
古いの片隅で、あせたような茶い革の鞄をに取った妹。
「これ、俊介さんも好きかな」
そう言ってはにかむように笑った、あの無邪気な瞬。
結はそれを、今もはっきり目に浮かぶと綴った。
「どうか妹たちの幸せな記憶を汚さないでください」
その切実な願いは、たいデジタルのので、ただ静かに漂っていた。
やがて数週が過ぎると、世の関はしいスキャンダルへと移っていった。たな目撃者も現れず、決定ながかりもないまま、警察の捜査本部の規模は徐々に縮されていった。
事件の真実は、分いコンクリートの底のようないへ、音もなく沈んでいこうとしていた。
事件から数かが過ぎた2004の。
耐えがたい猛暑の、俊介の父親が突然、自宅の居で倒れた。
ドン、という鈍い音が響き、駆けつけた母親が見たのは、に倒れ込み、苦しそうに顔を歪める夫の姿だった。救急で運ばれた先の病院で告げられた病名は、脳卒だった。
幸い命は取り留めたものの、半にい麻痺が残ってしまった。
担当医は、期にわたって蓄積された極度のストレスと疲労が原因だと静かに告げた。
父親は、息子の失踪以来、まともに眠れていなかった。
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