"湖底の五本柱" 第2話
さらに1が経過し、はついに猛吹へと変わった。窓ガラスに叩きつけられるの音は、警備のにいてもはっきり聞こえた。
異変をじた建設会社の現監督は、ただちに捜索隊を編成した。自らも4輪駆に乗り込み、数の作業員を連れてへ向かった。
午8過ぎ。
捜索隊は、彼らのを発見した。
所は龍鳴寺へ続く参の。に埋もれた広のような所だった。
黒いセダンは、自然な状態でしていた。
ヘッドライトは点灯したまま、を切り裂くようにい面を照らしている。エンジンはかかっており、マフラーからはい排気ガスがちっていた。ワイパーもいたままで、フロントガラスに積もるを必に払いのけている。
しかし、内には誰もいなかった。
運転席、助席、部座席。すべてのドアが半きになっていた。内灯だけが虚しく灯り、座席のには誰かがつい先ほどまで座っていたような温もりの名残があった。
現監督と捜索隊員たちは、顔を見わせた。
「どこへったんだ……」
誰かがそう呟いた。
彼らは懐灯をに、の周囲を慎に確認した。
そこで、この事件を解なものへ変える決定な事実が判した。
の周囲にはがり積もっていた。
しかし、からへ続く跡が、どこにもしなかったのである。
広告
ドアがいているにもかかわらず、そこから誰かがりた形跡がない。まるで3がにた瞬、翼でもえて空へびったか、あるいはそので体だけが蒸発してしまったかのように、面は滑らかなままだった。
捜索隊員は膝をついて面を照らした。
「り続くが消したんじゃないのか」
そう言う者もいた。
だが、の根に積もったの量と、周囲の積の状態を見比べると、彼らが消えてからそれほどは経っていないはずだった。もし誰かが歩いて移したなら、いのには必ず痕跡が残る。
それでも、半径50メートル方をライトで照らして見つかったのは、捜索隊自の跡だけだった。
内には3の所持品がそのまま残されていた。
相馬の用していた帳。
寺のタバコとライター。
そしてが切にしていたという古い懐計。
財布や免許証などの貴品もつかずだった。争った形跡も、血痕も、何ひとつない。
ただ、だけが忽然と姿を消していた。
さらに奇妙なことがあった。
彼らが目指していた龍鳴寺の梵鐘である。
先していたはずのクレーン付きトラックは、寺の境内で発見された。エンジンは止まっており、鍵は運転席に差し込まれたままだった。
しかし、そこにも運転や作業員の姿はなかった。
広告
そして肝の梵鐘は、すでに釣鐘堂からされ、面に敷かれたブルーシートのに鎮座していた。
作業は完していたのだ。
梵鐘を運びす直に、すべてのがいなくなったことになる。
消息を絶ったのは、セダンの3だけではなかった。
トラックの作業員2も消えていた。
計で5のが、この閉ざされたので姿を消したのである。
ただし、トラックの周辺には無数の跡が乱雑に残されていた。作業員たちが梵鐘をすためにき回った痕跡だろう。だからこそ、セダンの周囲に跡が切ないことが、いっそう異様に見えた。
警察の当初の見解は、トラックの作業員2が何らかのトラブルに巻き込まれ、から来たセダンの3が彼らを探しにったのではないか、というものだった。
しかし、それならばなぜセダンの周囲に跡がないのか。
なぜエンジンをかけたまま、ドアをけ放ち、貴品を残して消えたのか。
その夜、鏡の気温は氷点5度までがった。
猛吹のため、本格な捜索は翌朝へ持ち越されることになった。
ので、誰もいないセダンのヘッドライトだけが、いを照らし続けていた。
翌朝、県の岳救助隊や隊も加わり、規模な捜索が始まった。
吹はしまっていたが、はいに覆われていた。
ヘリコプターが空を旋回し、では数百の捜索員が列を作ってんだ。
廃となった集落のを軒軒確認し、井戸の底をのぞき込み、に埋もれた納の戸をけた。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日
妹を事故で亡くし、遺された六歳の双子を男手一つで育てる伊吹公平。仕事と育児に追われる毎日の中、彼が最も苦手としていたのは、職場で「氷の女」と恐れられる経理主任・桐谷エリカだった。ところがある日、保育園へ迎えに行った公平は、娘たちに囲まれて優しく微笑むエリカの姿を目撃する。しかも、誰にも甘えようとしなかった内気な妹・りこが、彼女の服を握って離さない。冷たい視線の裏に隠されていた意外な素顔。そして、少しずつ変わり始める三人の暮らし。孤独を抱えた大人たちと、小さな双子が紡ぐ、温かな家族の物語。人生逆転|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|金銭問題1.9万字5 460 -
完結第18話
離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私
十五年間の結婚生活を終え、四十二歳で一人になった沙耶。途方に暮れていた彼女に、突然、六億円を超える宝くじの当選という奇跡が訪れる。両親を助け、人生をやり直そうと実家へ帰った沙耶だったが、弟の健太は「この家に姉ちゃんの居場所はない」と冷たく言い放った。理由も分からず傷つく沙耶。しかし、弟夫婦が十二年間背負ってきた現実を知り、彼女の考えは大きく揺らぎ始める。さらに当選を打ち明けた夜、健太が突きつけた一言が、家族の隠してきた本音を浮かび上がらせる。六億円があっても取り戻せないものとは――。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係|金銭問題1.8万字5 866 -
完結第10話
元夫に投げつけられたカード、残高は一億五千万円
「もう二度と、俺の前に現れるな」離婚の日、夫の大地に冷たく突き放され、ひな子は六歳の息子とともに家を追い出された。渡されたのは、養育費を振り込むという一枚のキャッシュカードだけ。ひな子はそれを封印し、工場で働きながら必死に息子を育ててきた。三年後、口座を解約するため銀行を訪れると、なぜか支店長自らが現れ、特別応接室へ案内される。通帳に記されていた残高は、なんと一億五千万円。さらに差し出されたのは、元夫の筆跡で「ひな子へ」と書かれた一通の封筒だった。あの日の冷酷な離婚には、誰も知らない秘密が隠されていた――。夫婦|真実|第二の人生|金銭問題|熟年離婚1.6万字5 980 -
完結第18話
離婚翌日、父と食事中の私を「また金持ちに寄生か」と笑った元夫の末路
結婚生活のすべてを一円単位で折半しながら、家事だけは妻に押しつけていた夫・亮介。「お前は寄生虫だ」と離婚を突きつけられた綾乃は、静かに別れを受け入れた。 その翌日、実父と高級ホテルで食事をしていると、偶然現れた亮介と不倫相手が「もう次の金持ちを捕まえたのか」と嘲笑する。因果応報|夫婦|真実|金銭問題|修羅場|不倫1.9万字5 478 -
完結第12話
大家だった姑の逆転
夫を亡くしてから、息子を育てながら八世帯のアパートを守ってきた私。四十歳の息子が迎えた若い嫁は、「お母さんを支えたい」と同居を望んだ。ところが結婚後、私は台所にも立てず、夕食は寝室で一人。ついには「年金暮らしの無職は邪魔。出て行って」と言い放たれる。嫁が信じていたのは、息子がアパートの大家だという嘘だった。本当の所有者が私だと知っても、息子夫婦は名義を譲るよう要求してくる。私は静かに承諾した。しかし、二人が欲しがったアパートには、まだ知らない重大な問題が隠されていた。親不孝|裡の顔|絶縁|親子関係|退職金|金銭問題1.6万字5 750 -
完結第20話
義両親をこき使う伯父に、嫁の私が反撃した日
法事の席で、義父母は親戚から召使いのように扱われ、会食代まで余分に払わされそうになっていた。八年間その光景に耐えてきた奈央は、夫の健太に「私、やり返してもいい?」と尋ね、ついに伯父へ反論する。伯父が振りかざすのは、二十四年前に義父母を救った二百万円の「恩」。しかし、その借金は十八年前にすでに完済されていた。古い家計簿と振込票が明かす義父母の苦労。そして押入れから見つかった業務日誌には、伯父の会社の創業にまつわる、誰も知らなかった過去が記されていた。長年の屈辱に終止符を打つため、家族はついに立ち上がる。裡切られた|怒り|兄弟姉妹|嫁姑|第二の人生|金銭問題2.2万字5 1111 -
完結第18話
4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い
義父母が住む場所を失った十五年前、黒田彩は自分名義の家を無償で貸した。ところが義母・文子の古希祝いで、突然「あの家は次男の公平に譲る」と宣言される。親族が賛同する中、普段は母親に逆らえない夫が立ち上がり、衝撃の事実を告げた。しかし義母は、彩が昔書いた一通の手紙を持ち出して反論。因果応報|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|金銭問題2.0万字5 1917 -
完結第20話
「施設へ行け」と家を追われた七十五歳、亡き妻の山で見つけた宝
妻を亡くした七十五歳の佐伯源次郎は、一人息子の「一緒に暮らそう」という言葉を信じ、長年守ってきた自宅の名義を譲った。しかし、待っていたのは冷たい仕打ちと老人ホームへの入居命令だった。すべてを失った源次郎が向かったのは、亡き妻が幼い頃から愛した信州の山奥。荒れ果てた古民家を直し、畑を耕し、村人たちと心を通わせる日々の中で、妻が遺した「甘い水」に思いがけない価値が見つかる。相続|親不孝|親子関係|介護|金銭問題2.9万字5 852 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 1893 -
完結第10話
残高ゼロの通帳
経理主任として働く三十九歳のゆきは、同居する義母から突然、給与明細を突きつけられる。「月四十万円も稼いでいるなら、通帳は私が管理するわ」。勝手に給料の使い道を決められ、夫に助けを求めても返ってきたのは「母さんに任せれば楽だろ」という言葉だった。ついに「嫌なら出ていけ」と言い放たれたゆきは、抵抗するどころか、笑顔で通帳を差し出す。しかし、その夜、彼女は誰にも知られず一つの手続きを済ませていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|金銭問題1.5万字5 3068