"湖底の五本柱" 第7話
り積もるの、の太いタイヤ跡は通常のの轍とは異なる形状を残す。しかし、捜索隊が到着するまでの数、激しいがその溝を埋め、単なるの凹凸に変えてしまったのではないか。
初捜査において、捜査員たちはの跡を探すことに固執しすぎた。
幅広のタイヤ跡がに埋もれたものを、形の部だと誤認した能性がい。
寺の自殺。
佐藤の殺体。
これで者は3となった。
残る方者は2。
建築士の相馬賢。
元の茂蔵。
そして、消えた1500万円。
寺が自殺に使った拳銃について、鑑識から速報が入った。
その銃は、旧本軍の将が使用していた26式拳銃だった。登録番号は削り取られていたが、保状態は極めて良好だった。
このような骨董品とも言える銃を、若社員の寺が所していたとは考えにくい。
このの特定の世代のなら、話は別だが。
そのだった。
洞窟のさらに奥、暗のから、かすかな、しかしはっきりとした音が響いてきた。
規則な属音。
藤は懐灯を向け、拳銃を構えた。
「誰だ」
声が洞窟内に反響した。
返事はない。
ただ音だけが続く。
カチリ。
カチリ。
それは、計の蓋をけ閉めするような音だった。
藤たちは慎に奥へんだ。
空洞のき止まり、岩に1の男が座り込んでいた。
広告
建築士の相馬賢だった。
彼はきていた。
しかし、その様子は尋常ではなかった。
極度の体温と恐怖で顔は青く、目は虚ろに点を見つめている。彼のには、さな属製のものが握られていた。
それは、方の茂蔵が用していた、あの懐計だった。
相馬は震えるで懐計の蓋をけ閉めし、その音を虚しく洞窟に響かせていたのである。
藤が駆け寄り、毛布をかけると、相馬はゆっくり顔をげた。
その瞳には、狂気と正気の境界線で揺れくような、い絶望が宿っていた。
「相馬さん、丈夫か。何があった」
藤の問いかけに、相馬は乾いた唇をかした。
声は、ささやきのようにさかった。
「鐘だ……鐘が鳴ったんだ……ので……」
相馬はうわごとのように繰り返した。
「全部、あの老の計画だったんだ。俺たちは踊らされただけだ」
相馬の保護により、事件の核に迫る証言が得られるはずだった。
しかし彼は極度のショック状態にあり、断片な言葉をにするだけで、論理な会話は成しなかった。
ただ1つ、彼が繰り返しにした言葉があった。
老の計画。
それが茂蔵を指していることはらかだった。
そして、そのだけが、依然としてどこにも見つかっていなかった。
も、も、煙のように消えたままだった。
広告
藤は相馬が握りしめていた懐計を証拠品として預かった。
その計は止まっていた。
針は午245分を指していた。
あの、彼らが寺で写真を撮られた直の刻である。
なぜ相馬がの計を持っているのか。
そしてなぜ、寺はに、相馬だけがき残ったのか。
藤は、止まった計を見つめながら、事件がまだ終わっていないことをじていた。
捜査本部は、相馬の回復を待ちながら、彼の周辺調査を再した。
すると、な事実が浮した。
相馬賢は、鏡ダム建設プロジェクトにおいて、過に設計変更を巡り建設会社の層部と対していたことがあった。表向きには計画に協力していたが、内部では盤の定さを理由に、いくつもの危険を指摘していたという。
そして自殺した寺武は、その建設会社側から、相馬の同を監する役割を担わされていた能性があるという内部告発が寄せられた。
さらに、茂蔵の過を洗っていた捜査員が、の古文から驚くべき記録を見つけした。
治代、この鏡で起きた事件に関する記述だった。
の力者たちがを巡って争い、殺しい、その体を旧坑に隠したという伝承である。
は、その事件にく関わっていた。
藤ので、ばらばらだった断片が気な絵柄を描き始めていた。
これは単なる銭トラブルではない。
ダムに沈むの因縁が、100以のを超えて現代のたちをみ込んだのかもしれない。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日
妹を事故で亡くし、遺された六歳の双子を男手一つで育てる伊吹公平。仕事と育児に追われる毎日の中、彼が最も苦手としていたのは、職場で「氷の女」と恐れられる経理主任・桐谷エリカだった。ところがある日、保育園へ迎えに行った公平は、娘たちに囲まれて優しく微笑むエリカの姿を目撃する。しかも、誰にも甘えようとしなかった内気な妹・りこが、彼女の服を握って離さない。冷たい視線の裏に隠されていた意外な素顔。そして、少しずつ変わり始める三人の暮らし。孤独を抱えた大人たちと、小さな双子が紡ぐ、温かな家族の物語。人生逆転|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|金銭問題1.9万字5 460 -
完結第18話
離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私
十五年間の結婚生活を終え、四十二歳で一人になった沙耶。途方に暮れていた彼女に、突然、六億円を超える宝くじの当選という奇跡が訪れる。両親を助け、人生をやり直そうと実家へ帰った沙耶だったが、弟の健太は「この家に姉ちゃんの居場所はない」と冷たく言い放った。理由も分からず傷つく沙耶。しかし、弟夫婦が十二年間背負ってきた現実を知り、彼女の考えは大きく揺らぎ始める。さらに当選を打ち明けた夜、健太が突きつけた一言が、家族の隠してきた本音を浮かび上がらせる。六億円があっても取り戻せないものとは――。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係|金銭問題1.8万字5 866 -
完結第10話
元夫に投げつけられたカード、残高は一億五千万円
「もう二度と、俺の前に現れるな」離婚の日、夫の大地に冷たく突き放され、ひな子は六歳の息子とともに家を追い出された。渡されたのは、養育費を振り込むという一枚のキャッシュカードだけ。ひな子はそれを封印し、工場で働きながら必死に息子を育ててきた。三年後、口座を解約するため銀行を訪れると、なぜか支店長自らが現れ、特別応接室へ案内される。通帳に記されていた残高は、なんと一億五千万円。さらに差し出されたのは、元夫の筆跡で「ひな子へ」と書かれた一通の封筒だった。あの日の冷酷な離婚には、誰も知らない秘密が隠されていた――。夫婦|真実|第二の人生|金銭問題|熟年離婚1.6万字5 980 -
完結第18話
離婚翌日、父と食事中の私を「また金持ちに寄生か」と笑った元夫の末路
結婚生活のすべてを一円単位で折半しながら、家事だけは妻に押しつけていた夫・亮介。「お前は寄生虫だ」と離婚を突きつけられた綾乃は、静かに別れを受け入れた。 その翌日、実父と高級ホテルで食事をしていると、偶然現れた亮介と不倫相手が「もう次の金持ちを捕まえたのか」と嘲笑する。因果応報|夫婦|真実|金銭問題|修羅場|不倫1.9万字5 478 -
完結第12話
大家だった姑の逆転
夫を亡くしてから、息子を育てながら八世帯のアパートを守ってきた私。四十歳の息子が迎えた若い嫁は、「お母さんを支えたい」と同居を望んだ。ところが結婚後、私は台所にも立てず、夕食は寝室で一人。ついには「年金暮らしの無職は邪魔。出て行って」と言い放たれる。嫁が信じていたのは、息子がアパートの大家だという嘘だった。本当の所有者が私だと知っても、息子夫婦は名義を譲るよう要求してくる。私は静かに承諾した。しかし、二人が欲しがったアパートには、まだ知らない重大な問題が隠されていた。親不孝|裡の顔|絶縁|親子関係|退職金|金銭問題1.6万字5 750 -
完結第20話
義両親をこき使う伯父に、嫁の私が反撃した日
法事の席で、義父母は親戚から召使いのように扱われ、会食代まで余分に払わされそうになっていた。八年間その光景に耐えてきた奈央は、夫の健太に「私、やり返してもいい?」と尋ね、ついに伯父へ反論する。伯父が振りかざすのは、二十四年前に義父母を救った二百万円の「恩」。しかし、その借金は十八年前にすでに完済されていた。古い家計簿と振込票が明かす義父母の苦労。そして押入れから見つかった業務日誌には、伯父の会社の創業にまつわる、誰も知らなかった過去が記されていた。長年の屈辱に終止符を打つため、家族はついに立ち上がる。裡切られた|怒り|兄弟姉妹|嫁姑|第二の人生|金銭問題2.2万字5 1111 -
完結第18話
4億円の私の家を義弟に譲る義母――夫の一言で凍りついた古希祝い
義父母が住む場所を失った十五年前、黒田彩は自分名義の家を無償で貸した。ところが義母・文子の古希祝いで、突然「あの家は次男の公平に譲る」と宣言される。親族が賛同する中、普段は母親に逆らえない夫が立ち上がり、衝撃の事実を告げた。しかし義母は、彩が昔書いた一通の手紙を持ち出して反論。因果応報|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|金銭問題2.0万字5 1917 -
完結第20話
「施設へ行け」と家を追われた七十五歳、亡き妻の山で見つけた宝
妻を亡くした七十五歳の佐伯源次郎は、一人息子の「一緒に暮らそう」という言葉を信じ、長年守ってきた自宅の名義を譲った。しかし、待っていたのは冷たい仕打ちと老人ホームへの入居命令だった。すべてを失った源次郎が向かったのは、亡き妻が幼い頃から愛した信州の山奥。荒れ果てた古民家を直し、畑を耕し、村人たちと心を通わせる日々の中で、妻が遺した「甘い水」に思いがけない価値が見つかる。相続|親不孝|親子関係|介護|金銭問題2.9万字5 852 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 1893 -
完結第10話
残高ゼロの通帳
経理主任として働く三十九歳のゆきは、同居する義母から突然、給与明細を突きつけられる。「月四十万円も稼いでいるなら、通帳は私が管理するわ」。勝手に給料の使い道を決められ、夫に助けを求めても返ってきたのは「母さんに任せれば楽だろ」という言葉だった。ついに「嫌なら出ていけ」と言い放たれたゆきは、抵抗するどころか、笑顔で通帳を差し出す。しかし、その夜、彼女は誰にも知られず一つの手続きを済ませていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|金銭問題1.5万字5 3068