"母の墓に立つ母" 第12話
美優の目が、はっと見かれた。
翌朝、美優は図を広げ、朝という名をい見つめていた。
何の当てもない旅ちだった。けれどその胸には、自分でも説のつかない確信があった。
バスを何度も乗り継ぎ、美優はの麓のさなへたどり着いた。の入りで畑仕事をしていたおばあさんを呼び止め、美優は震える声で尋ねた。
「あの、このくに10歳くらいの子どもと、お母さんがんでいるはありませんか?」
おばあさんの表が瞬で曇った。
鍬を持つを止め、おばあさんは気の毒そうな目で美優を見つめた。
「いたよ。でも、かわいそうに。その子のお母さんは3にくなったんだ」
その言葉を聞いた瞬、美優のから力が抜けた。
に持っていた鞄が面にどさりと落ちる。鳴りがし、目のが真っ暗になった。そのに崩れ落ちそうになった美優を、おばあさんが慌てて支えた。
何とか気を取り直した美優は、おばあさんが教えてくれたを歩き始めた。
取りは何度もよろめいた。
坂の先にさな盛りが見えた、美優はそのに、しらず崩れるように座り込んだ。
「お姉ちゃん……お姉ちゃん、どうして?」
声は途切れ途切れだった。
美優はを握りしめ、泣き叫んだ。あれほど探し求めた姉と、こんな形で再会するとはってもいなかった。
広告
7くも1で子どもを育て、耐え抜いてきた姉の最期が、このさな盛り1つに残されている。その事実が、胸を張り裂くようだった。
美優は墓のにを投げし、しばらくの、声をげて泣き続けた。これまでこらえてきたしみと罪悪が、気に溢れた涙だった。
しばらくそうして泣いていると、背にの気配をじた。
美優は涙でぐしょ濡れになった顔のまま、ゆっくり振り返った。
そこには、見覚えがあるような、ないような、1の男の子がっていた。
子どもが先にをいた。
震える声で、信じられないというように言った。
「母さん……?」
その言に、美優の全が凍りついた。
子どもの顔と向きった瞬、を超えたような既に襲われた。そして子どもの首、の袖からわずかに覗くその所に線が届いた瞬、美優は息をんだ。
豆ほどのきさの赤いあざ。
10、そのさな体を腕に抱き、最に目に焼きつけた所だった。
美優の目から、再び涙がどっと溢れした。
姉への申し訳なさと、この子が受けるであろう衝撃への恐れが同に押し寄せ、胸が詰まった。
しばらく何も言えないまま、美優は震えるを伸ばし、子どもの顔をそっと包み込んだ。
「私は……あなたのお母さんの双子の叔母よ」
声は最までうまくず、かすれてしまった。
広告
子どもの目に宿る戸惑いと懐かしさを見つめながら、美優はそので崩れるようにハルトを抱きしめた。
ハルトの体からは、で育った子ども特の乾いた匂いがした。の匂いとの匂いが混じったりだった。
美優はその匂いを嗅いだ瞬、胸が詰まりそうになった。
姉がこの子を腕に抱いてきてきた痕跡だった。
美優は子どもの背を撫でながら、しばらく話すことができなかった。
やがて体をしたハルトが、濡れた目で見げてきた。何かを決したように何度か唇をかした、ようやく言葉を絞りした。
「おばさん……僕、もうすぐ国にくんです」
美優の目がきく見かれた。
瞬、聞き違えたかとった。
「え?」
「施設の園さんが、来週、僕を国に養子にすって言いました」
ハルトの声は震えていた。
子どもは必に平然を装っていたが、その平静の裏に隠された恐怖は、美優の目にはっきり見えた。
ハルトは美優のの裾を両で固く握りしめた。
「僕がっちゃったら、もう母さんのお墓には来られません。おばさん、僕を連れてってくれませんか? 僕、ここにいたいんです。母さんのそばにいたいんです」
その言言が、美優の胸にナイフのように突き刺さった。
目のが真っ暗になった。
姉を失っただけではなかった。
姉が命懸けで守り抜いたこの子まで、このまま見らぬへ送りされようとしている。
その事実が、美優の息の根を止めそうだった。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
四十九日の絶縁
夫を突然亡くした三十七歳の裕子。悲しみに暮れる間もなく迎えた四十九日法要の日、帰宅した彼女を待っていたのは、ゴミ捨て場に放り出された自分の荷物だった。「息子が死んだら嫁は赤の他人よ!」そう言い放つ姑は、さらに幼い二人の子供まで裕子から引き離そうとする。だが、姑が三歳の息子だけを異常に可愛がる裏には、恐ろしい計画が隠されていた。子供たちを守るため、裕子は静かに反撃の準備を始める。そして数か月後、助けを求めて電話してきた姑に、裕子が告げた言葉とは――。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|介護2.3万字5 1465 -
完結第13話
俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日
妹を事故で亡くし、遺された六歳の双子を男手一つで育てる伊吹公平。仕事と育児に追われる毎日の中、彼が最も苦手としていたのは、職場で「氷の女」と恐れられる経理主任・桐谷エリカだった。ところがある日、保育園へ迎えに行った公平は、娘たちに囲まれて優しく微笑むエリカの姿を目撃する。しかも、誰にも甘えようとしなかった内気な妹・りこが、彼女の服を握って離さない。冷たい視線の裏に隠されていた意外な素顔。そして、少しずつ変わり始める三人の暮らし。孤独を抱えた大人たちと、小さな双子が紡ぐ、温かな家族の物語。人生逆転|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|金銭問題1.9万字5 460 -
完結第18話
離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私
十五年間の結婚生活を終え、四十二歳で一人になった沙耶。途方に暮れていた彼女に、突然、六億円を超える宝くじの当選という奇跡が訪れる。両親を助け、人生をやり直そうと実家へ帰った沙耶だったが、弟の健太は「この家に姉ちゃんの居場所はない」と冷たく言い放った。理由も分からず傷つく沙耶。しかし、弟夫婦が十二年間背負ってきた現実を知り、彼女の考えは大きく揺らぎ始める。さらに当選を打ち明けた夜、健太が突きつけた一言が、家族の隠してきた本音を浮かび上がらせる。六億円があっても取り戻せないものとは――。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係|金銭問題1.8万字5 866 -
完結第20話
「息子が高熱なのに来い!」夫一家に185万円の請求書を押しつけられた私の正体
夫と義家族から「何もできない専業主婦」と見下され、金銭まで搾り取られてきた松岡美央。しかし彼女には、世界的なホテルグループの最高責任者という、誰にも明かしていない秘密があった。ある夜、高熱を出した息子を看病していると、義母から三十件以上の着信が届く。「緊急事態だから今すぐ来なさい!」慌ててホテルへ駆けつけた美央を待っていたのは、豪華な食事を楽しむ夫一家と、185万円もの請求書だった。裡切られた|怒り|嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場2.6万字5 1803 -
完結第18話
「片親の貧乏人」と息子を叩いた社長、母の正体を知って絶句
結婚の挨拶から帰宅した息子・祥太の頬には、くっきりと平手打ちの跡が残っていた。婚約者の父親から「片親の貧乏人」と罵られ、結婚まで白紙にされたという。二十五年間、女手一つで息子を育ててきた桃江は、静かに電話をかけた。実は彼女は、父の急逝を受けて大企業の社長に就任したばかり。しかも相手の食品会社は、長年その企業との取引に支えられていた。桃江の正体を知り、突然態度を変える婚約者一家。しかし、亡き父が残した調査記録には、結婚騒動をはるかに超える重大な秘密が隠されていた。因果応報|親子関係|修羅場2.6万字5 4001 -
完結第20話
高熱の娘を置き去りにした姉は、私の夫と不倫旅行中だった
結婚五年目の美和は、実の姉・麻里奈から生後十一か月の姪を十日間預けられる。ところが、姉が海外旅行へ出発した直後、幼い心ちゃんの容態が急変。必死に救急搬送する美和だったが、姉にも出張中の夫にも連絡がつかない。不審に思って姉のSNSを調べると、南国の写真に写り込んでいたのは、見覚えのある夫の腕時計だった。怒り|夫婦|親子関係|不倫1.8万字5 2053