"土俵下の12年" 第7話
6ため込んできたりが、気に噴きした。岳司は吉田を押し返した。
吉田は予の反撃に驚いた。
2は俵のでもみいになった。
ほかの力士たちが異変に気づき始めた。
「おい、何やってるんだ」
親方も振り向いた。
「何をしている。止めろ」
しかし、2は止まらなかった。
吉田が岳司をく押した。
岳司はろへ倒れそうになった。
膝が耐えられなかった。
が崩れ、体が横へ傾く。
吉田は岳司をつかんでいたをした。
その瞬、岳司は完全にバランスを失った。
俵のへ向かって、ゆっくりと倒れていく。
その瞬だけ、岳司にはすべてがゆっくり見えた。
俵の縁。
のコンクリートの。
伸ばした。
けれど、何もつかめなかった。
体が宙にい、そして落ちた。
からコンクリートのに激突した。
鈍い音が稽古に響いた。
岳司の体はかなくなった。
瞬、が止まったようだった。
誰も声をせなかった。
親方が駆け寄った。
「林。おい、林。返事をしろ」
しかし岳司はかなかった。
目を閉じたまま、息をしていなかった。
部から血が流れしていた。
親方は震えるで岳司の脈を確認した。
そして顔を変えた。
「……んでいる」
吉田はそのにち尽くしていた。
顔は青ざめ、唇が震えていた。
「俺は……ただ……」
親方は吉田をにらんだ。
「お、何をした」
吉田は答えられなかった。
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ほかの力士たちも呆然としていた。
ついさっきまで緒に稽古していた仲が、今、目ので命を落としている。
親方はを抱えた。
どうする。
どうすればいい。
このまま警察に連絡すれば、部は終わる。
事故だったとしても、世は許さない。
吉田は逮捕される。
部の名誉も、自分のも、すべて終わる。
親方のので、いくつもの考えが渦巻いた。
そして、恐ろしい決断をした。
これは、なかったことにする。
岳司の体を隠す。
失踪として処理すればいい。
親方は力士たちを集め、い声で言った。
「いいか。これから言うことは、絶対にへ漏らすな」
力士たちは震えていた。
誰も反対できなかった。
親方の言葉は、部のでは絶対だった。
「林の体を運ぶ。警察には、朝の散歩にたまま戻らないと届ける。おたちは何も見ていない。何もらない。分かったな」
誰も返事をしなかった。
けれど、誰も逆らわなかった。
若い力士2が、震えるで岳司の体を毛布に包んだ。
まだ温かい体だった。
さっきまで息をしていた仲だった。
2は涙をこらえながら、岳司を抱きげた。
かった。
部の裏から親方のまで運ぶ、誰も言葉を発しなかった。朝の空気はたく、京の町はしずつ目を覚まし始めていた。
親方は運転席に座り、若い力士たちに言った。
「ここで待っていろ。
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誰が来ても、林は朝の散歩にたと言え」
力士たちは青ざめた顔で頷いた。
親方はを発させた。
岳司の体を乗せたは、京の朝の町をり抜けていった。
親方は考えていた。
岳司をどこに隠すか。
京ではすぐに見つかる。
くへ。
目につかない所へ。
そして親方は、ある所をいした。
川県の漁。
岳司がまれ育った故郷。
以、入に岳司の実を訪ねた、のれに古い相撲の俵があった。祭りのに使われる伝統な俵だと聞いた。最はほとんど使われていないとも聞いていた。
あの俵のなら、誰も気づかない。
親方はそう考えた。
「岳司を故郷へ返す」
親方は自分の為を、そう言い換えようとした。
せめてまれ育った所に戻してやるのだ。
そうすれば、岳司もしは救われるだろう。
しかしの奥では分かっていた。
これは弔いではない。
隠蔽だった。
親方は速をり続けた。
京から川までは何もかかる。部座席に横たわる岳司の姿が界に入るたび、罪悪が胸を刺した。だが、もう戻りはできなかった。
夕方、親方は川県に着いた。
に入るにを止め、夜を待った。
暗くなってから、親方は目につかないを選んでへ入った。古い俵はのれにあった。周囲に民はなく、波の音だけが聞こえていた。
親方はを止め、辺りを確認した。
誰もいない。
静かな夜だった。
親方はから岳司の体をろした。
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