"湯殿床下の女将日記" 第7話
しかし、彼女はそれを捨てた。
息子のために。
造は続けた。
沢子は峠を越えた先の駅まで向かった。
そこから列に乗り、本側の町へ向かった。
「最に何か言っていましたか」
塚の問いに、造はしばらく黙った。
そして、ゆっくり答えた。
「ありがとう……と」
「私のような者を最まで支えてくれてありがとう、と」
老の声が震えた。
「あの方は、最まで女将さんでした」
「自分のしみより、への謝を先ににされる方でした」
塚は静かに目を伏せた。
6、彼が見ていた事件。
それはたい失踪事件ではなかった。
誰にもられない所で、1の女性が族を守ろうとした物語だった。
しかし、塚にはまだやるべきことが残っていた。
沢子を見つけること。
そして、彼女が命をかけて守った息子、彦の今を確かめること。
翌から、塚の調査が始まった。
沢子の記。
造の証言。
そこに残されたさながかり。
彼は1つずつ追っていった。
記には、沢子が若い頃世話になったの名。
昔訪れた。
いの所。
断片な報しかなかった。
何度もき止まりになった。
しかし、塚は諦めなかった。
6、未解決のまま終わった事件。
今度こそ、自分ので最まで見届けたかった。
そしての終わり。
塚はついに1つの町へたどり着いた。
本に面したさな漁師町。
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観でもなく、きな施設があるわけでもない。
ただと共に静かな活を続ける町だった。
造が言った所。
「本の見える静かな町」
沢子が最に望んだ所だった。
塚は町で聞き込みを続けた。
すると、さな旅館で1の女性についての話を聞いた。
50代半ばの女性。
数からみ込みで働いている。
目つことを避けるように、静かに暮らしている。
その特徴は、記に残された沢子の性格と致していた。
夕暮れ。
へ沈む太陽が町全体を赤く染めていた。
さな旅館の裏から、1の女性がてきた。
洗濯物を抱えている。
背筋は伸びている。
髪にはいものが混じっていた。
6よりし歳をねていた。
しかし、そのち姿。
そのき。
塚にはすぐ分かった。
「鍛原沢子さんですね」
女性のが止まった。
ゆっくり振り返る。
その顔には驚きと、そしてどこか覚悟したような表が浮かんでいた。
「……とうとう、見つけられてしまいましたか」
その声は6と変わらなかった。
塚は警察帳を見せた。
しかし、彼女を責めるためではなかった。
沢子は何も悪いことをしていない。
誰かを傷つけたわけでもない。
ただ、追い詰められた母親だった。
2は旅館のさな部で向かいった。
塚はこれまでの来事を話した。
糸が取り壊されたこと。
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から記と帯留めが見つかったこと。
造が6約束を守り続けていたこと。
「造さん……」
沢子の目から涙がこぼれた。
「まだ、私との約束を守ってくださっていたんですね」
「6、度もをきませんでした」
「お優しい方でした、と」
その言葉を聞いた瞬。
沢子は顔を覆った。
あの無な助が、自分のために孤独を背負っていた。
その事実が胸に突き刺さった。
「造さんらしいですね……」
しばらくして、沢子はさく笑った。
しい笑顔だった。
しかし、どこかしたような表でもあった。
そして、彼女が最も気にしていたこと。
それは息子、彦のことだった。
「……あの子は、今どうしていますか」
塚は静かに答えた。
「元気に暮らしています」
沢子の目がきくいた。
「借を作った相は、数に別の事件で逮捕されました」
「もうあなたや息子さんを追うことはできません」
「そして、彦さんは借を理し、今は京で真面目に働いています」
その瞬。
沢子の表が崩れた。
6。
毎ので息子の無事だけを願ってきた母親。
その願いが、ようやく届いた瞬だった。
「……そうですか」
「きて……ちゃんときているんですね」
涙が頬を伝った。
しみではなかった。
堵だった。
「私が消えたは……あったんですね」
塚は静かに頷いた。
「ありました」
「あなたが守ろうとしたものは、もう失われていません」
「息子さんはち直りました」
沢子は何度も頷いた。
そして、い沈黙の、静かに言った。
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