"消えた父子の23枚" 第6話
伊藤輝という名は初めて聞いたはずなのに、なぜか胸の奥が激しく揺れていた。
幼い頃から、湊は同じを繰り返し見ていた。暗い森ので誰かに抱かれ、「ハルト、父さんが守るからな」と呼びかけられるだった。
湊は本棚から熊のぬいぐるみをろし、縫い直されたを指先でなぞった。
「どうして父さんと母さんは、僕が2歳になるのことを何も話してくれないんだろう」
初めてにした疑問は、静かな部のでく響いた。
翌朝、優斗は学の図館で斎藤彩佳について調べ始めた。養子縁組センターで働き、湊がしい庭へ迎えられた直に姿を消した女性だった。
検索をねると、20175に掲載されたい記事が見つかった。斎藤彩佳というソーシャルワーカーが、突然仕事を辞めたに連絡を絶ち、族から失踪届がされたという内容だった。
警察は数週、自発な失踪と判断して捜査を終していた。しかし、記事の末尾には、彩佳が最に奥摩付で目撃されたと記されていた。
「また奥摩だ」
優斗はすぐ奈へ話をかけた。
「斎藤彩佳も、奥摩で姿を消している。偶然とはえない」
『私も湊君の養子縁組記録を調べていたの。でも、元の名やが完全に消されているわ。普通なら最限の報が残るはずなのに、湊君の記録は最初からだった』
そのの午、優斗は記事をいた方聞の記者を訪ねた。
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60代のは最初こそ警戒したものの、学の研究だと説すると、古い取材ノートを取りした。
「斎藤彩佳さんの事件は、妙なほどく捜査が終わりました。警察も、ほかの聞社も、それ以関を示さなかった」
は周囲にがいないことを確認し、声をくした。
「実は失踪、彩佳さんから私に連絡がありました。きな正を告発したいと言っていたんです。しかし、約束した所には現れませんでした」
「何を告発しようとしていたか、分かりませんか」
「正確にはりません。ただ、彼女と連絡を取っていた元同僚がいます。田さんという女性で、現は練馬区の老福祉センターでボランティアをしているはずです」
優斗はそので練馬区へ向かった。「温かい」とかれた老福祉センターを訪ねると、堂の隅で1でコーヒーをむ50代半ばの女性を見つけた。
「田さんですか。斎藤彩佳さんについて、しお話を伺いたいのですが」
女性の顔が瞬こわばった。彼女は周囲を見回し、優斗へづくよう招きした。
「ここで、その名をさないでください。誰に頼まれたんですか」
「誰にも頼まれていません。奥摩で、伊藤輝と赤ん坊が写ったカメラを見つけました」
優斗の言葉を聞くと、田はすぐにちがった。彼をセンターの裏にある倉庫へ案内し、内側から扉を閉めた。
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暗い倉庫ので、田は鞄から古い付けハードディスクを取りした。
「これが、彩佳が残した唯のものです。失踪するの晩、何があっても守ってほしいと私に預けました」
優斗がノートパソコンへ接続すると、膨な量のメール、写真、メモ、類のコピーが表示された。そのに「最終警告」と名づけられた、送信されていないメールのきが残っていた。
――親なる刑事へ。
このメールを読んでいる頃、私はすでに危険な状況にあるかもしれません。
彼らは伊藤輝を黙らせれば、すべてが終わるとっています。しかし、輝はっていました。あの子が権力を持つ政治の息子であり、彼らがそのを歴史から消そうとしていることを。
優斗は息を止め、続きを読んだ。
――あの赤ん坊は、伊藤輝の実の息子ではありません。輝は、子供の母親から託された保護者でした。母親は事故に見せかけて命を奪われました。彼らは証拠を消すため、今度は子供を探しています。
――もし私に何かあったら、「しい始まり養子縁組センター」を調べてください。そして鈴湊という子を探してください。その子こそが、輝の守ろうとした赤ん坊です。
斎藤彩佳。
優斗は画面を見つめたまま言葉を失った。湊が政治の隠し子であり、輝は血のつながらない赤ん坊を守るために逃げていたことになる。
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