"消えた父子の23枚" 第7話
田は声を震わせながら話した。
「彩佳は、もっとくのことをっていたといます。でも、私を巻き込まないために詳しくは話しませんでした。彼女が消えた、私も誰かに監されているような気がして、センターを辞めました」
ハードディスクには、改ざんされた養子縁組類の写しも残されていた。湊の名とは図に削除され、別として登録された痕跡があった。
さらに、奥摩で撮された別の写真には、輝と赤ん坊をれた所から見つめる男の顔が写っていた。カメラの写真に繰り返し現れていたと同じ物だった。
優斗がすべてのデータを自分のパソコンへ複製し、センターをると、すでに空は暗くなっていた。奈へ連絡すると、彼女も緊張した声でなことを伝えた。
『湊君から連絡が来たの。伊藤輝という名について、いしたことがあるから会いたいって』
「どこで会う約束をした?」
『学の図館よ』
「今すぐ向かう。1でかないでくれ」
話を切った直、優斗は誰かに見られている覚を覚えた。振り返っても、灯の届かないにはが見えなかった。
しかし、暗のでは、1の男が優斗の姿を見つめていた。そのには、学の名簿から印刷された優斗と奈の写真が握られていた。
広告
学の図館へ着くと、奈がベンチからちがった。優斗の青ざめた顔を見てづき、配そうに周囲を見回した。
「誰かにつけられている気がする」
優斗は彩佳のメールと政治の話を伝えた。奈は驚きを隠せなかったが、すぐに唇を引き結び、決を固めた。
その、図館の階段から湊が姿を現した。暗いのパーカーを着てさな鞄を持ち、疲れ切ったような顔をしていた。
「来てくれてありがとうございます。でも、ここで話すのは危険な気がします」
3は学のないさなカフェへ移した。の奥の席へ座ると、湊はしばらく両を握ったまま黙っていた。
「このは鳴ってしまって、すみませんでした。伊藤輝という名を聞いた、ので何かがいたんです」
湊は幼い頃から繰り返し見るについて話した。森ので男性に抱かれ、「ハルト、父さんがおを守る」と言われるだった。
「両親は、僕はまれたから湊だったと言います。でも目を覚ました直、誰かにハルトと呼ばれていた気がするんです」
奈は鞄から、警察へ渡すに複製していたカメラのデータを取りした。優斗が画面をき、伊藤輝と赤ん坊の写真を湊へ見せた。
輝の顔が映った瞬、湊の呼吸が止まった。指先を画面へづけ、震える声を漏らした。
広告
「このです。ので僕を抱いていたは、このです」
最の写真には、洞窟で熊のぬいぐるみを抱くハルトが写っていた。湊は涙をこぼし、何度も画面と自分の鞄を見比べた。
「僕のぬいぐるみだ。どうして、こんなところに……」
優斗は逃げずに真実を伝えることを決めた。
「湊君。君は、6に奥摩で失踪した伊藤ハルトだとう。伊藤輝さんは、君を守るためにへ逃げた」
湊は何度も首を振った。
「そんなはずはありません。父と母は僕をしてくれています。僕に嘘をつく理由なんて……」
「育ててくれたご両親も、すべてをらされていなかった能性があるわ」
奈の言葉を聞き、湊はしばらく俯いた。やがて涙を拭い、2をまっすぐ見つめた。
「もう度、カメラを見つけた洞窟へ連れていってください。そこへけば、何かいせるかもしれません」
翌朝、3は奥摩側の洞窟へ向かった。朝に覆われたをみ、優斗と奈が調査をしていた所へ到着した。
洞窟のへ入った湊は、懐灯のを頼りにゆっくり歩いた。初めて来たはずなのに、壁の形や岩の位置に、かすかな懐かしさを覚えていた。
「ここをっているような気がします」
湊は洞窟の奥にある細い隙のでち止まった。何かに導かれるように膝をつき、素でを掘り始めた。
優斗がスコップを渡し、3で慎にとを取り除いた。数分、の布が現れ、引きすと古い消防士用のジャケットだと分かった。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
帰国した僕を待っていたボロ家
7年間、アメリカで必死に働き続けた木村健二。 妻と息子、そして母のために仕送りを続け、岐阜の実家も新しく建て替えた。帰国の日、健二は家族が立派な新居で自分を待っていると信じていた。 しかし、そこで彼を迎えたのは母と兄夫婦だけ。妻・早苗と息子・勇気の姿は、家のどこにもなかった。 不審に思った健二が辿り着いたのは、町外れの川沿いに建つ古びたプレハブ住宅。そこには、やつれた妻と、破れた問題集を大切に使う息子の姿があった。 自分が送った大金は、どこへ消えたのか。 なぜ妻子だけが新居から追い出されたのか。 7年間信じてきた“家族”の裏側で、健二の知らない嘘と沈黙が静かに積み重なっていた――。夫婦|真相|親子関係2.0万字5 310 -
完結第13話
5人目だけが若かった
1999年夏、岐阜県の山あいにある青川村で、豪雨による土砂崩れが起きた。 崩れた山肌から現れたのは、黒い縄でつながれた5体の遺骨。村人たちは、それを6年前に行われた古い合葬の名残だと説明する。 しかし鑑定の結果、5体のうち1体だけが明らかに若すぎることが判明した。 老人5人が眠っているはずの棺に、なぜ24歳前後の若い女性が紛れ込んでいたのか。そして、本来そこにいるはずだった5人目の老人はどこへ消えたのか。 口元に押し込まれていた黄色い布、祠の裏道に残された車の痕跡、6年前の夜に聞こえた女の声。 迷信と沈黙に守られてきた山村の秘密が、雨によって少しずつ地上へ押し出されていく――。ミステリー|真実|真相1.9万字5 458 -
完結第12話
3万円を払った元タクシー運転手
雨の月命日、64歳の笠原和子は、夫の墓参りへ向かうため一台のタクシーに乗った。 目的地まではわずか5kmほど。ところが運転手はメーターを動かさず、遠回りをした末に、霊園の前で「料金は3万円です」と告げる。 相手は足の悪い高齢女性。文句を言えず、泣き寝入りするとでも思ったのだろう。和子はその場では静かに3万円を支払い、何も言わずに車を降りた。 しかし、運転手は知らなかった。 後部座席に座っていたその“おばあちゃん”が、40年間タクシーとハイヤーの運転席に座り続けてきた元プロの運転手だったことを。 そして彼の声も、名前も、車両番号も、すべて記録されていたことを。 翌日、和子が正式に動き出した時、悪質な運転手と会社が隠してきた過去が少しずつ明らかになっていく――。真相|金銭問題1.8万字5 600 -
完結第10話
「洗剤を入れた嫁」にされた私
45歳の私は、助産師として夜勤をこなしながら、夫と2人で静かに暮らしていた。 そんなある日、夫から義父の認知症を理由に、義両親との同居を頼まれる。家族のためならと受け入れた私だったが、同居が始まってから、義母の態度は少しずつ変わっていった。 夜勤明けに責められ、家事を押しつけられ、身に覚えのない悪口まで夫に吹き込まれる日々。それでも夫は、いつも義母の言葉だけを信じた。 やがて私は、義父の“認知症”にある違和感を覚える。 そしてある夜、義母はついに言い放った。 「食事に洗剤を入れたでしょう!」 その嘘を信じた夫は、私に「出ていけ」と告げる。 1か月後、私は離婚届を持って、もう一度あの家の玄関に立った。 その時、義家族が本当に恐れていたものが、ようやく明らかになる――。嫁姑|夫婦|裡の顔|真相1.5万字5 234 -
完結第11話
裏口に回された仕立て屋
孫の発表会の日、68歳の佐和子は嫁から「業者は裏口から入ってください」と告げられる。 舞台に立つ47人の子どもたちが着る衣装は、すべて佐和子が三か月かけて縫い上げたものだった。材料費も立て替え、客席にも座れず、舞台裏で補修を続けた佐和子。 しかし終演後、保護者たちの会話から、嫁が衣装代として大金を集めていたことを知る。 さらに衣装箱には見知らぬ店名のシールが貼られ、ネットには佐和子の作業場が“嫁の実績”として掲載されていた。 家族のため、孫のため。そう思って飲み込んできた佐和子だったが、ある書類に自分の名前が勝手に使われていることを知った瞬間、静かに立ち上がる。 奪われたのは、お金だけではなかった。 名前も、時間も、技術も――。 佐和子は、自分の仕事を取り戻すため、初めて家族に「無償ではない」と告げる。嫁姑|親不孝|真相1.6万字5 330 -
完結第10話
20年後、坊ちゃんは帰ってきた
財閥家の御曹司・優人は、母を亡くした直後、新しく屋敷に入ってきた女によって濡れ衣を着せられ、わずか8歳でアメリカ留学へ追いやられる。 実の父にまで見捨てられた優人のそばに残ったのは、亡き母から「この子を守って」と託された家政婦・白石千鶴子だけだった。 行き先も学校も用意されないまま、異国の地へ捨てられた二人。千鶴子は皿洗いをしながら優人を育て、優人もまた、悔しさを胸に必死で学び続ける。 そして11年後、母が残した一冊の日記から、隠されていた資産と最後の願いが見つかる。 それからさらに時が流れ、20年後。 日本の大和グループが経営危機に陥った時、正体不明の投資家「黒札」に救いを求めることになる。 しかし彼らはまだ知らなかった。 その「黒札」こそ、かつて屋敷から追い出した少年だったことを――。人生逆転|裡切られた|真相|親子関係1.4万字5 846 -
完結第11話
7人の妊娠と密封された患者服
2011年、富山県の山あいにある黒部女子刑務所で、信じがたい事件が発覚した。 男性との接触が厳しく制限された隔離区画で、7人の女性受刑者がほぼ同時期に妊娠していたのだ。 監視カメラはなぜか壁だけを映し、薬の管理記録には説明のつかない空白が残されていた。だが、疑惑の中心にいた医務課長・九条匠は完璧な記録と証言に守られ、事件は証拠不十分のまま闇へ葬られていく。 声を奪われた7人の女性たち。真相を追いながら左遷された刑事。社会的成功を手にし、15年間“勝者”として生き続けた男。 そして2026年、死を目前にした元警備課長が残した一つの鉄箱によって、封じられていた過去が再び動き出す。 永久に開かれないはずだった患者服の中に、15年間眠り続けていた小さな証拠とは――。ミステリー|真実1.6万字5 382 -
完結第11話
消えた神童、10年後の手紙
2001年秋、北陸の小さな町で、サッカーの才能を持つ10歳の少年・立花陸が、父・剛とともに突然姿を消した。 数日後、海辺の岸壁で見つかった白いバン。車内には父の作業服と、陸のスパイクが片方だけ残されていた。やがて町では、「父が息子を連れて海へ入ったのではないか」という噂が広がり、母のゆみ子は長い孤独と偏見の中で10年を過ごすことになる。 しかし、失踪から10年後。 ゆみ子のもとへ、ドイツから一通の手紙が届く。 そこに書かれていたのは、信じられない一文だった。 「私の名前は陸です。ドイツで暮らしています」 海に消えたはずの息子は、なぜ異国で生きていたのか。車に残された片方のスパイクは、本当に陸のものだったのか。そして、父・剛が最後に守ろうとしたものとは何だったのか。 10年前に見落とされた小さな違和感が、封じられていた事件の真相を少しずつ暴き出していく――。ミステリー|真相1.7万字5 169