みかん小説
本棚

"復讐とんかつの逆転便" 第5話

の客が帰ると、綾音が議そうに尋ねた。

「まだ何かあるの?」

「話がある」

琢磨は父親と母親にも席へ着いてもらい、持参した資料をテーブルへ広げた。

「この凍とんかつを、俺の運営するECサイトで販売したいとっています」

父親が眉を寄せた。

凍とんかつを?」

「先、試作品をべました。べるものとほとんど変わらない品質でした。あれなら、全国へ売れます」

琢磨は具体な条件を説した。

商品ページの制作費。

費。

広告費。

販売始に必な初期費用。

それらはすべて、琢磨の会社が負担する。

さらに最初の半は、売から受け取る数料を最限に抑えると伝えた。

あまりにも柏利な条件だった。

父親は腕を組み、、琢磨の顔を見つめた。

「堀川さん」

い声で尋ねた。

「あんたの話はありがたい。だが、どうしてそこまでしてくれる」

琢磨はすぐには答えられなかった。

綾音を見返すために弁当を注文し始めたとは、言えるはずがない。

しばらく考えた、目のの資料へ線を落とした。

「本当にうまいものが、売れずに埋もれていくのはおかしいとうからです」

それは紛れもない本だった。

そして、必に働くこの族を助けることが、会うことのできなかった母親への償いになるような気もしていた。

広告

自分が幼い頃には理解できなかった苦しみを、今ならしだけ理解できる。

だが、そこまでは言葉にできなかった。

父親は黙ったまま資料を見つめた。

やがて、ゆっくりと頷いた。

「あんたを信じてみるよ」

その横で、綾音が目を潤ませていた。

契約が決まると、琢磨のきは驚くほど速かった。

には社内で担当チームを作り、商品の撮と販売を決めた。さな会社だからこそ、決定から実までにをかける必がなかった。

商品名、パッケージ、キャッチコピー、販売ページの構成。

琢磨は1つひとつに妥協しなかった。

は、柏の厨にカメラマンとスタッフを連れていった。

揚げたてのとんかつへ包丁を入れ、断面から湯気と肉汁が溢れる瞬を何度も撮した。

父親は最初こそ落ち着かない様子だったが、撮が始まると職の顔に戻った。

「肉を押さえつけるな。肉汁が逃げる」

スタッフへそう言いながら、のつけ方を実演した。

「油の温度は数字だけじゃ分からない。音と泡を見るんだ」

琢磨はその言葉を聞き逃さず、販売ページへ盛り込むよう指示した。

創業から3代続くの歴史。

肉のさやの細かさ。

を落とさないため、揚げる直までの程を作業でっていること。

琢磨は単に品を売るのではなく、そのとんかつを作ってきた族の物語まで届けようとした。

広告

作業の、綾音がさなコップに入れたお茶を差ししてきた。

「休まなくて丈夫?」

「おの方が休んでないだろ」

「まあね」

綾音は苦笑した。

代には見たことのない、力の抜けた笑顔だった。

琢磨はコップを受け取りながら、ふと尋ねた。

「お、毎配達もしてるのか」

「昼と夜は。注文が入ったら配達。夜凍商品の準備」

「寝てるのか」

しは」

綾音は冗談めかして答えたが、目のにはい隈があった。

琢磨はそれ以、何も言えなかった。

販売始の、琢磨は自社のオフィスでアクセス数を確認していた。

最初の数は、ほとんどきがなかった。

広告をしても、見たことのないさなの商品をすぐに買う客はない。琢磨も最初から爆発に売れるとは考えていなかった。

ところが夕方、1の購入者が商品をSNSへ投稿した。

凍とはえないの軽さと、肉の柔らかさを褒める内容だった。

、その投稿を見た別の客が注文した。

さらにその客が、揚げたての断面を撮して投稿した。

コミはしずつ広がり始めた。

販売始から1週、注文数は当初の予測を超えた。

2週には、柏だけでは梱包作業がわなくなり、琢磨の会社から数が応援に入った。

そして3週

「社!」

オフィスで社員の声ががった。

「ランキング、見てください!」

琢磨が画面を覗き込むと、自社サイトの品部で「とんかつ柏

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: