"復讐とんかつの逆転便" 第6話
が1位になっていた。
社員たちから歓声ががった。
琢磨は画面を見つめたまま、しばらくけなかった。
自分の会社が成したにも、もちろんびはあった。
だが今回のびは、それとは違う温度を持っていた。
を稼ぐためだけではない。
誰かの未来を守るために、自分の力が役にっている。
その覚が、胸の奥を温かく満たした。
琢磨はすぐに柏へ話をかけた。
話にたのは綾音だった。
「1位になった」
数秒の沈黙の、話の向こうでさな声がした。
「本当に?」
「ああ。凍品部で1位だ」
綾音が息をのむ音が聞こえた。
そのろで、母親が何事か尋ねている。綾音が「1位だって」と答えると、今度は父親のい声がした。
話の向こうが急に騒がしくなり、琢磨はわず笑った。
「注文、かなり入るぞ。準備しておけ」
「うん」
綾音の声は涙で揺れていた。
「ありがとう、堀川君」
その言葉を聞いても、以のような居の悪さはなかった。
「礼は全部発送してからにしてくれ」
琢磨はそう答え、話を切った。
注文はそのも増え続けた。
柏の厨は朝から晩までき、父親は嬉しい鳴をげながらも、1枚ごとの品質を決して落とそうとしなかった。
「数が増えたからって、肉をくするな」
「をつけたまま放置するな」
「揚げるが変わっても、同じをせ」
広告
父親の求は厳しかった。
綾音と母親は疲れながらも、その指示に従った。
琢磨も週に何度もへを運び、発送数と製造量を確認した。
次第に、柏の表にもるさが戻った。
綾音は配達の途でも、以より笑うようになった。
父親は無なままだったが、琢磨がへ来ると黙って揚げたてのとんかつをすようになった。
「っていけ」
それだけ言って厨へ戻る。
琢磨はカウンターでとんかつをべながら、族3の会話を聞くことが増えた。
のない言い争い。
母親の言。
綾音の笑い声。
それらは、広いマンションでは決して聞こえない音だった。
あれほど執着していた復讐は、いつのにかの片隅へ追いやられていた。
琢磨自、その変化に々気づいていた。
しかし、順調にみ始めた仕事は、いもよらない敵を呼び寄せることになった。
ランキング1位を獲得してから1週ほどたった朝、琢磨のオフィスに内容証郵便が届いた。
差は、品メーカーの全フーズ。
売が数千億円に達する巨企業だった。
封筒をき、面へ目を通した琢磨の表が、瞬でこわばった。
そこには、「とんかつ柏」の凍とんかつが、全フーズの保する特許を侵害していると記されていた。
直ちに製造と販売を止すること。
広告
販売済み商品の数量と売を示すること。
さらに、特許侵害品の販売を仲介した事業者についても、共同侵害として責任を追及する能性がある。
標にされているのは柏だけではなかった。
琢磨の会社そのものも、訴訟の対象に含まれていた。
仮に裁判へ発展すれば、商品の販売を止せざるを得ない。
それだけではない。
ECサイトの運営会社が特許訴訟を抱えているという報が広がれば、取引先が斉にれる能性がある。
3かけて築きげた会社の信用が、根こそぎ崩れるかもしれない。
琢磨は面を握ったまま、子へく沈み込んだ。
ようやく守りたいとえるものを見つけた。
そのすべてが、自分のので壊れていく。
そんな予が胸に広がった。
琢磨はそののうちに、柏を訪れた。
閉の暗い内で、父親は警告を読んだ。
最まで読み終えたが、さく震えていた。
「特許侵害なんて、に覚えがない」
父親は掠れた声で呟いた。
「うちのとんかつは、爺さんの代から同じ作り方だ。誰かの真似なんかしてない」
だが、その声には力がなかった。
相は本に商品を流通させる巨企業である。
本気で争えば、さなとんかつなど、資力の差だけで押し潰される。
父親はテーブルへ両をつき、くうなだれた。
「堀川さん、もうやめよう」
琢磨は顔をげた。
「何を言ってるんですか」
「販売をやめてくれ。これ以、あんたに迷惑をかけられない」
「緒に戦いましょう。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
現地払いの還暦旅行
旅行会社に勤める弘志は、義父の還暦祝いに伊豆の高級ホテルを手配する。ところが旅行当日、義父母と義姉、さらには妻の優希までが、駅で「お前はもう帰れ」と弘志を追い返した。 屈辱をこらえて帰宅した弘志のもとに、妻から不可解なメッセージが届く。一方、義家族はホテルで高級料理や酒、エステを次々と注文していた。 しかし彼らは、旅行のしおりに記された重要な支払い条件を見落としていた。チェックアウトの日、彼らを待ち受ける驚愕の請求と、妻が隠していた秘密とは――。人生逆転|兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|絶縁|修羅場2.8万字5 53 -
完結第10話
銀座の384万円
巨大企業グループの総帥という身分を隠し、平凡な専業主婦として暮らす美央。夫と義母に見下されながらも、温かい家族を夢見て五年間耐え続けてきた。 義母の誕生日、55万円の高級バッグを用意して銀座のレストランへ向かうと、義家族はすでに食事を終えていた。美央の席も料理もなく、代わりに突きつけられたのは384万円もの請求書。 「会計はあなたが払って」 その言葉に、美央は静かに微笑んで店を去る。しかし義家族はまだ知らなかった。自分たちが誰を敵に回したのかを――。因果応報|人生逆転|嫁姑|夫婦|金銭問題|修羅場1.6万字5 48 -
完結第20話
山奥の身代わり花嫁
29歳の水野美緒は、幼い頃から姉ばかりを優遇する両親のもとで、家事と仕事に追われる日々を送っていた。 ある日、姉が見合いの直前に逃げ出し、美緒はその身代わりとして山奥の男に嫁ぐよう命じられる。逆らえば家にも戻れない。古い鞄一つで送り出された美緒だったが、たどり着いた先は想像もしなかった大きな屋敷だった。 しかも門が開いた瞬間、使用人たちが深々と頭を下げ、「お帰りなさいませ、奥様」と迎えた。 まだ結婚の返事すらしていない美緒を、なぜ彼らは待っていたのか。そこには、家族が隠していた縁談の秘密があった。人生逆転|兄弟姉妹|第二の人生|親子関係2.8万字5 61 -
完結第14話
同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼
中学卒業から十五年。貧しい母子家庭で育ち、いじめに耐えてきた梅本瑞江は、故郷の同窓会に姿を現した。上品な大島紬をまとった彼女を見て、かつてのいじめの主犯・熊切勢子は激怒。友人の借金を盾に保証人になるよう迫り、ついには瑞江の頭からビールを浴びせてしまう。 さらに勢子は、暴力団組長である夫の力を使い、瑞江を脅そうとする。しかし、連れ込まれた奥の宴会場で、誰も予想しなかった光景が待っていた。 十五年前に見下されていた少女が隠していた、驚くべき現在の姿とは――。人生逆転|真相|第二の人生|修羅場2.0万字5 416 -
完結第15話
「25万円振り込め」と脅す夫へ、私はもう妻じゃない
フリーランスの設計士・美穂は、三年間無職の夫・浩司と同居する義母・富江を、自分の収入で養い続けてきた。感謝されるどころか、夫からは「離婚するぞ」と脅され、生活費として25万円を要求される日々。 ところが、夫の浮気だけでなく、義母まで愛人を家へ招き入れ、亡き父から相続した家を奪おうとしていることが発覚する。 半年間、証拠を集め続けた美穂は、三年前に夫が署名した離婚届を手に、静かな反撃を決意する。しかし、何も知らない夫と義母は、さらに300万円を要求してきて――。怒り|夫婦|金銭問題|修羅場1.8万字5 480 -
完結第20話
同窓会で頭取の娘に脅された俺、300億を全額解約
卒業から24年、150人が集まる同窓会に出席した堀口弘樹。質素なスーツ姿を見た銀行頭取の娘・久我エリは、高校時代と同じように彼を見下し、「パパに頼んで取引を打ち切ってもらう」と脅してきた。 しかし、弘樹の正体は年商2100億円の物流グループを率いる創業社長。東王銀行には300億円を超える預金があった。 「じゃあ、全部解約で」 翌日、銀行から100件もの電話が殺到する。だが、弘樹と頭取の間には、20年前の知られざる恩義があった。彼が最後に下す決断とは――。職場逆転|因果応報|第二の人生2.7万字5 1355