"復讐とんかつの逆転便" 第9話
と言った社員がをげた。
「社」
琢磨は彼を見た。
「俺、あのとんかつったんですよ」
社員はを掻きながら続けた。
「正直、めちゃくちゃうまかったです。あれが、でかい会社に脅されただけで消えるのは、何か違うといます」
隣の社員が頷いた。
「うちのサイトって、うまいものを見つけて売るために始めたんですよね」
別の社員もをいた。
「売が落ちたら、また別の商品を見つければいいじゃないですか」
「柏さんの商品が売れたのも、社1の力じゃありません。俺たちもページを作ったんです。最まで関わらせてください」
1、また1と頷いた。
琢磨は全員を見回した。
胸の奥から込みげるものがあり、言葉がなかった。
これまで琢磨は、誰も信用していないつもりだった。
社員も結局、料のために働いているだけだとのどこかでっていた。
だが、彼らは会社の危険を理解したうえで、琢磨と同じを選ぼうとしていた。
琢磨は子からちがり、くをげた。
「ありがとう」
やっとのいで、それだけを言った。
そのの午、琢磨は全フーズの法務部へ直接連絡した。
担当者に3つの事実を伝えた。
柏の製法と全フーズの特許は、技術に別物であること。
その比較分析資料をすでに作成していること。
過10にわれた、企業への警告履歴をすべて把握していること。
広告
さらに、その報を業界メディアへ提供する準備がっていると告げた。
話の向こうが沈黙した。
琢磨は静かに続けた。
「々は御社と争うことを望んでいません。誤った警告を撤回していただければ、資料を部へす必もありません」
担当者はい声で答えた。
「脅迫ですか」
「事実を伝えているだけです」
琢磨は怯まなかった。
「御社にとって、どちらが得か。判断はお任せします」
話を切った、全から力が抜けた。
返答はすぐには来なかった。
1目。
連絡なし。
2目。
何のきもなかった。
3目の夜、琢磨はほとんど眠れなかった。
自分の判断は正しかったのか。
本当に撤回されるのか。
社員たちの未来を危険にさらしただけではないのか。
4目の朝、全フーズから正式な面が届いた。
封筒をく琢磨の指先が、わずかに震えた。
社内調査の結果、当社の見解に誤りがあったことを認める。
「とんかつ柏」及び関連事業者に対する、切の請求を取りげる。
そこには、全面撤回のが記されていた。
琢磨は何度も文章を読み返した。
違いない。
勝ったのだ。
自分1ではない。
社員たちと、柏と、全員で守り抜いた。
そのの夕方、琢磨は撤回面を持って柏を訪れた。
父親は面を最初から最まで読み、もう度最初へ戻って読み直した。
内には綾音と母親もいたが、誰も声をさなかった。
広告
い沈黙の、父親が顔をげた。
その目は赤くなっていた。
「本当に……終わったのか」
「請求はすべて撤回されました。販売も製造も、これまで通り続けられます」
琢磨が答えると、父親は面をテーブルへ置いた。
そして何も言わず、琢磨のを両で握った。
ごつごつとして、油とさな傷の痕に覆われただった。
何もとんかつを揚げ、と族を守ってきた。
そのが震えていた。
「あんたは、恩だ」
掠れた声だった。
琢磨は握り返しながら、首を横に振った。
「俺だけじゃありません。会社の皆が緒に調べてくれました。それに、商品が本物だったから守れたんです」
「それでも、あんたがいなければ、俺は諦めていた」
父親のに力がこもった。
琢磨は何も答えられなかった。
の隅では、綾音が顔を覆って泣いていた。
母親がその肩をそっと抱いている。
琢磨はその景を見ながら、自分のにあった固い何かが崩れていくのをじた。
帰り、夜空を見げた。
父親のの温度が、まだのひらに残っていた。
それだけで分だとった。
を稼いだにも、会社の売が伸びたにも得られなかった覚だった。
自分がここにいることで、助かったがいる。
自分のが、誰かの荷ではなく、力になった。
企業との騒を乗り越えたことで、「とんかつ柏」
の名度はさらにまった。
広告
おすすめ作品
-
完結第8話
藤蔵は二度生きた
1815年、武蔵国多摩郡中野村に生まれた8歳の少年・小谷田勝五郎は、ある日、兄と姉に不思議な問いを投げかけた。 「生まれる前に、どこにいたか覚えている?」 勝五郎は、自分が以前は山の向こうの程久保村で暮らす「藤蔵」という少年だったと語り始める。前の両親の名前、家の場所、亡くなった時の記憶、そして死後に見たという白い髭の老人――。 最初は家族だけの秘密だったその話は、やがて実際の村や家族の記録と重なり始める。 初めて訪れたはずの程久保村で、勝五郎は迷わず“前世の家”へ向かった。さらに、家族しか知らない出来事や、土の中に隠された小刀の場所まで言い当てていく。 これは本当に生まれ変わりなのか。 それとも、江戸時代の村に残された不思議な偶然なのか。 8歳の少年が語った記憶は、学者や文人たちの手によって記録され、やがて日本で最も有名な生まれ変わりの物語として語り継がれていく。人生逆転|真実1.2萬字5 0 -
完結第11話
夫の顔と20年目の罪
8歳の事故で母と光を失った桜田はるかは、暗闇の中でピアノだけを支えに生きてきた。 父の死後、叔父に勧められるまま結婚した相手は、名門病院の跡取り息子・桜田真一。寡黙ながらも優しく、毎日花束を贈ってくれる夫を、はるかは心から信じていた。 そしてある日、20年待ち続けた角膜移植手術の順番が回ってくる。 初めて夫の顔を見られる――。 そう思って迎えた包帯を外す日。眩しい光の中で、はるかの前に立っていたのは、愛していたはずの夫とはまるで違う男だった。 「あなたは誰?」 病室に凍りつく空気。夫を名乗る男、黙り込む周囲、そして誰もが隠していた結婚の嘘。 やがてはるかは、20年前の事故と、ガーベラに隠された本当の意味へとたどり着いていく。人生逆転|夫婦|真相1.7萬字5 102 -
完結第9話
中卒社員の逆転邸宅
中卒というだけで副社長に見下され、追い出し部屋へ異動させられた真司。 かつて父の会社を救うため進学を諦め、20年以上エンジニアとして働いてきた彼だったが、新しく就任した副社長は学歴だけで人を判断し、低学歴の社員たちを次々と窓際部署へ追いやっていく。 それでも真司は、妻の出産を控え、家族を守るために耐え続けていた。 やがて無事に子どもが生まれ、職場へ復帰した真司に、副社長はさらに残酷な言葉を投げつける。 「低学歴、低収入の子供がどんな顔してるのか見てみたいな」 その瞬間、真司は静かに微笑んだ。 「いいですよ。今週の土曜日、うちに来てください」 冷やかし半分で自宅へやって来た副社長たち。だが、案内された先で彼らが目にしたのは、想像もしなかった豪邸と、リビングで待っていた“ある人物”だった。 中卒と笑われ続けた男が、家族と仲間を守るために仕掛けた静かな反撃とは――。ミステリー|因果応報|人生逆転1.3萬字5 143 -
完結第17話
母の墓に立つ母
10歳の少年・ハルトは、3年間、亡き母の墓に通い続けていた。 しかし、イギリスへの養子縁組が決まったある日、最後の別れを告げるために訪れた墓前で、彼は見知らぬ女性と出会う。 その女性は、母と同じ顔をしていた。 「……お母さん?」 震える声で呼びかけた瞬間、女性の顔色が変わる。彼女もまた、ハルトの顔に信じられないものを見ていた。 なぜ、亡くなったはずの母と同じ顔の女性が墓の前にいたのか。 なぜハルトは、突然海外へ送られようとしているのか。 そして、彼の出生に隠された真実とは何なのか。 10年前に引き裂かれた恋、双子の姉妹、山奥で守られ続けた小さな命。 すべての秘密が動き出した時、少年は初めて、自分を守るために誰が何を犠牲にしてきたのかを知ることになる。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係2.6萬字5 95 -
完結第9話
止められた12枚
離婚届に判を押した瞬間、夫と姑は私を追い出し、新しい嫁を笑顔で迎え入れた。 私はただの“稼ぐ妻”だった。夫の遊び代、姑の美容代、義実家の贅沢――すべて私のカードで支払われていたのに、彼らは最後までそれを当然だと思っていた。 だから私は、何も言わずに12枚のカードを止めた。 数日後、元夫は新しい婚約者との豪華なパーティーで、300万円の支払いを求められる。だが差し出したカードは、すでに利用停止済み。 招待客の前で崩れていく見栄。逃げ出す新しい嫁。そして、義実家がようやく気づいた時には、すべてが遅すぎた。 彼らが迎え入れたのは、幸運の女神ではない。 欲望に姿を変えた、破滅そのものだった。因果応報|夫婦|金銭問題1.3萬字5 405 -
完結第13話
名刺一枚の逆転縁談
美容師として働く藤井まなみは、恋人・桜庭優馬からプロポーズを受け、結婚を決意する。 しかし、優馬の両親は最初からまなみを見下していた。服装、髪色、職業、そして実家のことまで決めつけ、「うちの息子とは釣り合わない」と一方的に別れを迫ってくる。 迎えた両家顔合わせの日。 港区のタワーマンション暮らしを誇る優馬の父は、まなみの父が「スーパーで働いている」と聞いた途端、露骨に笑った。 「スーパー勤めのお父さんでは、家柄がねぇ」 その場で結婚をなかったことにしようとする桜庭家。まなみは悔しさに言葉を失うが、父は最後まで穏やかな表情を崩さなかった。 そして静かに、1枚の名刺を差し出す。 それを受け取った瞬間、優馬の父の顔色が変わった。 見下していた“スーパー勤めの父”の本当の正体とは。 家柄や肩書きで人を判断した家族が、たった1枚の名刺で言葉を失う――痛快な逆転劇。人生逆転|裡の顔2.0萬字5 2924 -
完結第12話
桜袴の女組長
娘の入学式の日、シングルマザーの水島美咲は、校門の前でボスママ・霧谷礼子に袴を引き裂かれた。 それは、亡き母が一針一針仕立ててくれた大切な形見だった。さらに礼子は、娘の前で父親のいない家庭を嘲り、母の思い出まで踏みにじる。 美咲はただ黙って耐えていた。 娘の晴れの日を壊したくなかったから。 しかし、礼子が最後の一線を越えた時、美咲は静かにスマートフォンを取り出す。 5分後、校門前に次々と黒塗りの車が現れた。 誰も知らなかった。 この“貧しいシングルマザー”と見下された女に、学校中が凍りつくもう一つの顔があることを――。修羅場1.8萬字5 5904 -
完結第19話
青いハンカチの花嫁
親友の結婚式に招かれた浩司は、車椅子で会場の隅に座っていた。 10年前、雨の交差点で車に轢かれそうになった少女を助け、代わりに自分の足の自由を失った浩司。だが彼は、その少女の未来を守るため、自分が命の恩人であることをずっと黙っていた。 ところが披露宴の最中、花嫁の由美が突然、浩司を見つめて呟く。 「ずっと探していました」 彼女の手には、10年前の事故現場に残された青いハンカチ。浩司の腕には、消えることのない傷跡。 その瞬間、新郎・健一の顔色が変わる。 本当の恩人は誰だったのか。なぜ浩司は10年間も沈黙していたのか。そして、親友を名乗る男が隠し続けてきた嘘とは――。 祝福に包まれるはずだった披露宴で、10年前の真実が静かに暴かれていく。因果応報2.8萬字5 804 -
完結第9話
赤い口紅と信託離婚
定年退職の日、香川週一郎は40年勤めた会社を静かに去ろうとしていた。 その日は、妻・のり子の誕生日でもあった。だが朝、赤い口紅を引いて出かけていく妻を見ながら、週一郎はすでにすべてを知っていた。 大学時代の恋人との再会。共通口座からの不審な出金。退職金を使った「別人生」の計画。 のり子は、夫が何も気づいていないと思っていた。 しかし週一郎は半年間、何も言わずに証拠を集めていた。そして退職金2700万円は、妻が一切触れられない場所へ移されていた。 その日の夕方、妻が帰宅した時、家から夫の痕跡だけが消えていた。 ダイニングテーブルに残されていたのは、手紙と信託公正証書、そして離婚調停申立書。 翌朝、銀行の窓口に立ったのり子は、初めて知ることになる。 夫が怒らなかった本当の理由を――。因果応報|夫婦|金銭問題1.4萬字5 1103