"復讐とんかつの逆転便" 第12話
そう考えかけて、琢磨はさく首を振った。
過は変えられない。
母親に言われた言葉も、綾音に笑われた昼休みも、なかったことにはできない。
だが、目のにいる誰かの今を、しだけ温かくすることはできる。
「どうだ」
琢磨が尋ねると、男の子はいっぱいにとんかつを頬張ったまま、何度も頷いた。
「すごく、おいしい」
その言葉を聞き、厨から綾音の笑い声がした。
カウンターの奥では、父親がいつもと変わらない顔で、次のとんかつを揚げている。
母親は男の子のへ、そっとご飯と噌汁を置いた。
「とんかつだけじゃ、お腹いっぱいにならないでしょう」
男の子は戸惑った顔をした。
「これも試」
母親が笑うと、男の子もさく笑った。
琢磨はエプロンを締め直し、のへ戻った。
代、綾音から言われた言葉は、い、琢磨のを支配していた。
見されないためにを求め、傷つかないためにをざけた。
そして復讐するために、何度もとんかつ弁当を注文した。
だが、その注文がなければ、綾音と再び向きうこともなかった。
柏を救うことも、社員たちを信じることも、母親へ話をかけることもなかった。
何より、自分のが誰かを苦しめるだけではないとることもなかった。
「琢磨、皿がたまってるよ」
綾音に呼ばれ、琢磨は振り返った。
「今やる」
「さっきから全然減ってないけど」
「客と話してたんだよ」
「言い訳しない」
父親が厨からを挟んだ。
「皿洗い、をかせ」
「はいはい」
琢磨が流し台へ向かうと、のに笑い声が広がった。
男の子はになって、ご飯ととんかつをべている。
油のはじける音。
器がなる音。
誰かの笑う声。
「おかえり」と言ってくれるがいる所。
琢磨がを稼いでもに入れられなかったものが、今はここにあった。
すべては、復讐のために注文した、1つのとんかつ弁当から始まった。
けれど、最に琢磨のに残ったものは、復讐のびではなかった。
誰かと卓を囲む温かさと、目ののを助けられる自分でありたいという、さく確かな願いだった。
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