"天井裏の元彼" 第2話
そうい、く考えなかった。
数、テーブルに置いていた3個のリンゴが、朝になると2個になっていた。
べた記憶はなかった。しかし、仕事が忙しく、最は帰宅のことをぼんやりとしか覚えていないもあった。
夜に目を覚まし、無識にべたのかもしれない。
里奈はそう自分に言い聞かせた。
だが、奇妙な来事は続いた。
いつもソファの端に置いているテレビのリモコンが、キッチンのテーブルに移していた。
寝るまで読んでいた本が、本棚の番に戻されていた。
洗面台に置いたはずのヘアブラシが、ベッドのから見つかったこともある。
つつは、単なる物忘れで説できた。
しかし、それが何度も続くと、里奈は自分の記憶に自信が持てなくなった。
ある、仕事から帰って玄関をけた瞬、微かな煙の臭いをじた。
里奈は煙を吸わない。
そのは誰も訪ねてきていなかった。
窓は閉まっており、ベランダにもはいない。隣の部から換気を通って流れ込んだのだろうかとい、すぐに窓をけた。
それでも、胸の奥にさな違が残った。
決定にになったのは、蔵庫からべ物が頻繁に消えるようになってからだった。
プリンが1個なくなった。
チーズの塊が半分に減った。
買ったばかりのソーセージが数本消えた。
広告
里奈は暮らしだった。
鍵を持っている者はいない。鍵は誠と別れた直に交換している。
が入った形跡もなかった。
それでもべ物は確実に減っていた。
里奈は蔵庫のを携帯話で撮するようになった。
ジュースの位置、卵の数、パンの枚数まで記録した。
翌朝、写真と見比べる。
すると、やはり数がわなかった。
夜に自分でべているのだろうか。
遊病のような症状があるのではないか。
そんな疑いが浮かぶと、恐ろしくなった。
自分のらない自分が、夜になると部を歩き回り、蔵庫をけている。
そのほうが、が侵入していると考えるより現実だった。
だが、夜に聞こえる音だけは説できなかった。
カサカサ。
初めは、ネズミが井裏をっているような軽い音だった。
古い建物なのだから、珍しいことではない。
しかし数、音は変わった。
ごとり、といものを置くような鈍い音。
何かをゆっくり引きずるような音。
板と板が擦れうような、細い引っかき音。
それは決まって、里奈がベッドに入ってから聞こえてきた。
音の所は、のすぐだった。
里奈の部は最階にある。
にはいない。
井の向こうにあるのは、根と配管を通すための狭い空だけだった。
ある夜、里奈はベッドので目をいた。
広告
部は暗く、カーテンの隙から灯のが細く差し込んでいた。
井から、ぎし、と音がした。
続いて、何かがゆっくり移する気配が伝わってきた。
の音に似ていた。
音をてないよう慎に、井板のを歩いている。
里奈は毛布ので息を止めた。
を澄ませば澄ますほど、そこに何者かがいるようにえた。
そして突然、音が止まった。
静かになったのではない。
相もこちらの気配を窺うために、きを止めた。
里奈には、そうじられた。
里奈は眠れなくなった。
寝るに玄関の鍵を3回確認し、窓の留めを確かめた。ワンルームには本来必のない寝用の簡易錠まで取り付けた。
それでも、誰かがいるという覚は消えなかった。
線をじる。
着替えているも、事をしているも、ベッドへ入ったも。
部のどこかから見られている。
振り返っても、そこには壁しかなかった。
20126、里奈はとうとう警察へ話した。
「のに、誰かが入っているかもしれません」
駆けつけた警察官は2だった。
里奈は、消えるべ物や移する物、夜に井から聞こえる音について説した。
警察官は玄関や窓を調べ、内を通り確認した。
だが、鍵に異常はなく、窓にもこじけられた跡はなかった。
「侵入した形跡はありませんね」
の警察官が、穏やかな調で言った。
「古い建物ですから、パイプが鳴ることはあります。井の音も、ネズミかもしれません」
「でも、べ物がなくなるんです」
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
宅配箱を盗む隣家の子…餌を入れた翌朝、母親が激怒
ペットショップを営む榊哲也の家で、宅配ボックスから荷物が次々と消える。近所の目撃情報が指したのは、隣家の小学五年生・航太。しかし母親の千晶は「子どもを疑うな」と哲也を非難し、町内に悪い噂まで広め始める。哲也は自分宛ての荷物に店で扱う乾燥コオロギの餌を入れ、防犯カメラで行方を確かめることに。すると映像には、少年の行動以上に不可解な親子のやり取りが残されていた。さらに消えた荷物を追ううち、地域の見守り活動に関わる不自然な書類まで浮かび上がる。小さな宅配トラブルの裏に、何が隠されているのか。怒り|真相|修羅場2.8万字5 242 -
完結第22話
「慰謝料500万円」ママ友が出した弁護士の名刺に驚愕
夫を亡くし、九歳の娘すももを一人で育てる弁護士・水瀬ひまり。ある日、投資で多額の借金を抱えたママ友の香織から、突然「夫との浮気の慰謝料500万円を払え」と迫られる。 証拠として突きつけられたのは、身に覚えのないLINEと、弁護士を名乗る男の名刺。ところが、その名刺には、ひまり自身の名前が記されていた。 偽りの請求、広がる不倫の噂、そして娘の学校生活にまで及ぶ嫌がらせ。ひまりが証拠を集め始めると、思いもよらない金銭トラブルが浮かび上がる。母として、弁護士として、彼女が下す決断とは――。怒り|裡の顔|真相|第二の人生|金銭問題2.8万字5 595 -
完結第12話
昭和39年、給食費泥棒にされた少女
昭和39年、村の小学校で給食費9,600円がなくなったと騒ぎになり、11歳の岸田和子は担任から泥棒だと決めつけられた。無実を訴えても信じてもらえず、和子は転校を余儀なくされる。それから35年。廃校となった母校で古い出納簿を見つけた和子は、問題の給食費が事件の二日前に全額入金されていたことを知る。なぜ教師は、なくなっていないお金を盗んだと少女を責めたのか。食数の合わない給食記録、突然退職した調理員、沈黙する元同級生。忘れられた帳簿を手がかりに、和子は35年間隠されてきた学校の秘密を追い始める。時代|歴史|昭和|真相3.1万字5 361 -
完結第12話
昭和44年、終電後に消えた駅員――28年目に見つかった記録
昭和44年、長野県の小さな駅で働く杉原修一は、最終列車を見送った夜、8万6,400円の現金とともに姿を消した。父を泥棒と呼ばれながら育った娘の美緒は、28年後、取り壊しが決まった駅舎で古い駅務日誌を発見する。そこには、父が終電の55分後、赤いランプを持って七号橋へ向かったという不可解な記録が残されていた。運休したはずの貨物列車、書き換えられた帳簿、沈黙を守る関係者たち。父はあの夜、何を知り、なぜ帰ってこなかったのか。昭和の小駅に封じられた28年間の謎を追う、家族と真実の物語。時代|歴史|昭和|ミステリー|真実2.9万字5 278 -
完結第12話
雨宮停留所の黄色い傘
私は六十二歳。幼いころから、ときどき人には見えない姿や声を感じることがある。 山梨の小さな町で叔母の家を片づけていたある雨の日、廃止された停留所の水たまりに、黄色い傘を差した少年が映った。 そこで出会った老女は、四十年近く前に失踪した息子を今も待ち続けているという。 「まだ帰れない」 少年が残した言葉を手がかりに調べ始めると、破り取られたバスの運行日誌、隠された手紙、そして家族が長年伏せてきた秘密が浮かび上がる。 あの少年は、いったい何を伝えようとしているのか。日常ホラー|ミステリー|真相|親子関係2.2万字5 214 -
完結第12話
母の葬儀写真に現れた女――銀の花に隠された秘密
幼いころから、人には見えないものが見える紀子。62歳になった彼女は、87歳の母を亡くした葬儀の日、誰も立っていなかったはずの場所に、黒い服の女が写っていることに気づく。女の胸には、銀色の花のブローチ。さらに母の遺品から、見知らぬ女性との古い写真と、秘密の子どもについて書かれた手紙が見つかった。生前、母が繰り返し呼んでいた「千恵子さん」とは誰なのか。そして、棺のそばで聞こえた「あの子はまだ生きてる」という声の意味とは。葬儀写真に残された不可解な影が、半世紀以上封じられてきた家族の秘密を呼び覚ます。日常ホラー|真相|親子関係2.2万字5 334 -
完結第14話
同窓会でビールを浴びた私に、51人の男が最敬礼
中学卒業から十五年。貧しい母子家庭で育ち、いじめに耐えてきた梅本瑞江は、故郷の同窓会に姿を現した。上品な大島紬をまとった彼女を見て、かつてのいじめの主犯・熊切勢子は激怒。友人の借金を盾に保証人になるよう迫り、ついには瑞江の頭からビールを浴びせてしまう。 さらに勢子は、暴力団組長である夫の力を使い、瑞江を脅そうとする。しかし、連れ込まれた奥の宴会場で、誰も予想しなかった光景が待っていた。 十五年前に見下されていた少女が隠していた、驚くべき現在の姿とは――。人生逆転|真相|第二の人生|修羅場2.0万字5 1923 -
完結第13話
疎開から戻った娘が、再び村へ帰りたがった理由
昭和二十年の秋。戦争で夫と家を失った文江は、集団疎開から戻った十二歳の娘・幸子と、焼け跡の東京でようやく再会した。 ところが三日後、娘は突然「あの村へ帰りたい」と言い出す。母との暮らしを喜んでくれると思っていた文江は、深く傷ついた。 やがて娘の行李から見つかった一通の手紙。そこには、長野の農家で暮らす九歳の少女・千代との、切実な約束が隠されていた。 自分たちの生活さえ苦しい母娘は、その約束にどう向き合うのか。戦後の厳しい暮らしの中で、家族の絆と本当の居場所を見つめ直す、心温まる物語。時代|歴史|昭和|ミステリー|親子関係2.8万字5 181 -
完結第13話
昭和21年、米を没収された母が引き返した理由
昭和21年秋、食糧難の大阪。三人の子どもを育てる森川澄子は、大切な着物と引き換えに手に入れた二升の米を、買い出し列車で警察に取り上げられてしまう。途方に暮れる母へ、十歳の息子が告げたのは、米袋の中に隠された小さな鉄の箱の存在だった。次の駅で引き返し、警察に事情を話した澄子。しかし、その箱に刻まれた三本の稲穂の印は、母子寮から消えた救援物資と、夫が隠していた仕事の秘密へとつながっていく。家族の生活さえ脅かされる中、一人の母親がたどり着く真実とは――。時代|歴史|昭和|真相2.7万字5 202