"9,000億円の離婚届" 第10話
おの負けだ」
浩司と美穂はへ乗り込み、のをりった。
私はたい面へ座ったまま、テールランプが消えていくのを見送った。
しみも絶望もなかった。
浩司が奪った箱に入っているのは、でも権利でもない。父が若い頃から集めていた、古い切や景印のコレクションだった。
本当の遺産である9,000億円のビルの類とマスターキーは、私のバッグの奥にある。
「怪はありませんか、ゆみさん」
背から声がし、きな傘が差しかけられた。振り返ると、弁護士がっていた。
「にわず、申し訳ありません。管理会社から連絡を受け、急いで来たのですが」
「丈夫です。をし擦りむいただけですから」
私は自力でちがった。
「あのたち、古い切の箱を遺産だとって持っていきました」
さんはし目を見き、静かに頷いた。
「そうですか。浩司さんは、またきな罪を犯しましたね」
偽造文の使用、居への法侵入、そして窃盗。
浩司は私を追い詰めたつもりで、自分の逃げを塞いでいた。
鍵を交換されたため、私はさんの配したビジネスホテルへ移ることになった。温かいシャワーでえ切った体を温めると、擦りむいたのひらがし痛んだ。
窓のではがり続き、京ののかりが滲んでいた。
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あののどこかに、父が残した巨なビルがある。9,000億円という額は、まだ私には現実がなかった。
ただ、父が私を守るため、これほどの力を残してくれたことだけは分かった。
もう浩司の鳴り声に怯える必はない。
丸テーブルへ座り、さんから預かった茶封筒をけた。親族会議のに読んでほしいと言われた、父の本当の遺言のだった。
『ゆみ。おがこのを読んでいるということは、私はもうこの世にいないのだろう。そして、浩司君がおを裏切ったということだ』
最初の数で、目に涙が滲んだ。
父は、自分がくなったのことまで見通していた。
『私は昔、産事業できな財産を築いた。しかし、おはを変えてしまう。親戚は遺産を巡って争い、友は私を騙そうとした。私は、そんな醜い世界からおを守りたかった』
だから父は事業を退き、古いアパートの管理として暮らした。
『おには苦労をかけた。だが、あのアパートで静かに暮らしたこそ、私ので番幸せだった。ゆみ、本当にありがとう』
私は声をさずに泣いた。
毎朝作った弁当も、緒にべた見切り品の果物も、父はからんでくれていた。私の3は、父にとって幸だけのではなかったのだ。
の最には、箱について記されていた。
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『浩司君は私を見していた。私の財産を、数万円の通帳と押入れの古い箱だけだとっている』
臓がきく鳴った。
『もし彼がおを捨て、財産を奪おうとしたなら、必ずあの箱へをつけるはずだ。箱には底がある』
私は息をんだ。
『そこへ入れてあるのは、遺産ではない。浩司君が7、会社のを横領した証拠類だ』
7、浩司がひどく酒に酔い、部で震えていた期があった。仕事のストレスだと言っていたが、実際には会社のへをつけ、投資で失敗していたのだ。
浩司は父へ泣きついた。父は、私を犯罪者の妻にしたくないといういから、自分の定期預を解約して分を補填した。
しかし、浩司がいた自認と、当の会社の裏帳簿の写しは保管していた。
『もし浩司君が自分の欲のために箱を奪い、底をけたなら、そのこそ彼自の罪がらかになる。ゆみ。もう彼を許す必はない。自分ので、彼に引導を渡しなさい』
私はを丁寧に封筒へ戻した。
浩司はが入っていると信じ、自分の犯罪の証拠を自ら盗みした。そしての親族会議で、親戚全員ので箱をけようとしている。
父は浩司の欲さを、完全に見抜いていた。
私はベッドへ横になり、目を閉じた。
も恐怖も、もうなかった。
は、全てを終わらせるだった。
翌朝、はがり、ひとつない青空が広がっていた。
私はホテルの鏡ので紺のスーツをえ、背筋を伸ばした。
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