"51%の警備員" 第6話
34歳だった。
正雄は、当2歳だった娘の恵美を残した。
葬儀で正雄の妻は気を失い、その3、しいを選んでをていった。
松蔵は引き止めなかった。
たださな恵美のを握り、膝をついた。
「恵美、これからは、じいちゃんと暮らそう」
幼い恵美は、涙に濡れた顔で松蔵を見た。
「おじいちゃん、お料理できるの?」
「噌汁だけは絶品だぞ」
「ほかは?」
「これから覚える」
々は尋ねた。
息子をなせた会社を、なぜ守り続けるのかと。
松蔵は答えず、毎朝、正のガラスを磨いた。
そのガラスの向こうを歩く4000の社員が、松蔵にはすべて正雄に見えたからだった。
弁護士は、3かに1度、曜の夕方に警備を訪れた。
たい焼きやみかんを持ってくるため、周囲からは松蔵と親しい常連客にしか見えなかった。
しかし狭い警備で交わされる話は、数百億円をかすものだった。
「ご老、今回の配当を含めて、信託座の残は420億円を超えました」
「そうか」
「そうか、ではありません。しは使ってください」
弁護士は本気で困った顔をした。
「恵美さんの学費まで、どうして警備員の料から払うんですか?」
「あのは、俺のじゃない」
「受益者はご老です」
「夫から預かっただ。あいつが俺に残したのは、じゃない。宿題だ」
「その話を、もう10以聞いています」
弁護士はため息をつきながらも、類を丁寧に理した。
広告
だが、その頃から、彼が持ってくる報告の内容が変わり始めた。
「会社ので、妙なの流れがあります」
弁護士は声を落とした。
「貴彦専務が、内の名義で協力会社を3社設しています。その会社を経由して、部品の単価を自然に引きげているようです」
「額は?」
「現点で確認できるだけでも、80億円を超えます」
松蔵のので、コップが止まった。
「証拠はあるのか?」
「まだ決定なものはありません。会計処理が何にも隠されています」
弁護士はさらに続けた。
「それより配なのは、現会の体調です。病院へ入りする回数が増えています。会が倒れれば、貴彦専務がグループを完全に掌握します」
松蔵はしばらく黙っていた。
「もうしだけ見守ろう」
「まだ待つのですか?」
「貴彦も夫の血を引くだ。目を覚ます会を与えずに切ることはできん」
「ご老。それが、あなたの点です」
弁護士はちがり、類カバンを閉じた。
「がすぎます」
その、2はまだらなかった。
貴彦に与えられた最の会が、もうすぐ完全に失われることを。
そのの6、現会が専務で倒れた。
脳血だった。
命は取り留めたものの、識は完全には戻らなかった。
会が沈黙すると同に、貴彦は待っていたかのようにき始めた。
最初に提されたのは、経営効率化案だった。
広告
警備、清掃、施設管理部の齢者を斉に解雇し、業務を部企業へ委託する。削減額は18億円。
商3000億円の成グループにとっては、わずかな額だった。
それでも貴彦は、削減効果をげさに調した。
2つ目の計画は、さらにきかった。
創業以来の主力拠点である仙台のを売却するというものだった。
表向きの理由は、資産の流化。
しかし、弁護士が調べた報は違っていた。
売却先の裏には、貴彦が実質に支配する会社があった。
協力会社を通じて流した87億円の穴が監査でるみにるに、仙台の売却益で覆い隠そうとしていたのである。
その夜、松蔵は警備で1通のをいた。
く握ったボールペンの跡が、の裏側まで残った。
――仙台売却の助言会社と、優先交渉対象企業の資本関係を確認してください。
――協力会社3社の実質所者を調査してください。
――会社の血が流れています。
宛先は、グループ監査。
差の名はかなかった。
を受け取った監査は、それを持って貴彦の部へ向かった。
監査もまた、貴彦に逆らえない役員の1だった。
貴彦はを読み、で笑った。
「最の怪文は、随分と貧乏臭いな」
文字を見れば、圧のい配者がいたことは像できた。
「どこかの寄りが送ったんだろう」
貴彦はを半分に破った。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
赤ワインの逆転離婚
因果応報|夫婦1.6萬字5 53 -
完結第15話
残り物少年の奇跡
「残り物をください。そしたら、あなたに歩き方を教えます」 高級レストランでそう言ったのは、破れた靴を履いた8歳のホームレス少年・翔太だった。 相手は、事故で歩く力も家族も希望も失った大富豪・佐藤孝志。世界中の医師から「もう歩けない」と告げられ、人生を諦めかけていた男だった。 ただ食べ物を求めて現れたはずの少年は、なぜか孝志の心の奥に隠された絶望を見抜いていた。 毎晩8時の夕食。少年の小さな手が、動かない足に触れるたび、孝志の中で何かが少しずつ変わり始める。 これは奇跡なのか、それとも少年が見つけた“生きる理由”なのか。 残された一皿のサーモンから、壊れた家族と失われた人生が静かに動き出す――。人生逆転|金銭問題2.3萬字5 7 -
完結第13話
霧葬の山岳会
1998年10月、長野県の山岳会で、ただ1人の女性会員・高木真美が白い霧の中から姿を消した。 翌年に結婚を控えていた28歳の真美。仲間たちと向かった秋の黒岩岳で、彼女は突然行方不明となり、事故による滑落として処理された。赤いキャップとちぎれたザックの一部だけを残して、遺体は見つからなかった。 残された母は、娘の死を受け入れられないまま、毎年10月12日になると警察へ手紙を書き続けた。 「あの日、娘に何があったのか。どうか、もう一度調べてください」 そして16年後。 黒岩岳の岩の隙間から、古い登山靴と人骨が発見される。そこは、滑落した人間が偶然たどり着くにはあまりにも不自然な場所だった。 さらに遺骨には、事故では説明できない傷が残されていた。 16年前、霧の中で本当は何が起きていたのか。 そして、山岳会の仲間たちはなぜ同じ証言を繰り返したのか。 母の手紙が止めなかった時間が、ついに閉ざされた山の沈黙を破り始める。因果応報|行方不明|孤獨2.0萬字5 12 -
完結第8話
消えた仕送り720万円
真冬のある日、55歳の富代は、母の暮らす古いアパートを訪ねた。 部屋の中は外と変わらないほど冷え切り、母は暖房もつけず、毛布にくるまって震えていた。冷蔵庫にはわずかな食材しかなく、長年仕送りをしてきたはずの富代は胸を痛める。 「もっと仕送りを増やすね」 そう告げた瞬間、母は不思議そうに首をかしげた。 「仕送り? 知らないけど」 12年間、毎月5万円。合計720万円。 母のために送っていたはずのお金は、どこへ消えていたのか。疑念を抱いた富代が口座を調べ直すと、そこには夫と義家族が隠し続けていた信じがたい事実があった。 仕送り先を本来の口座に変えた日から、義母、夫、義姉の態度は一変する。 なぜ彼らはそこまで焦ったのか。 凍える母の部屋から始まった違和感は、30年の結婚生活を揺るがす真実へとつながっていく――。因果応報|人生逆転|金銭問題1.2萬字5 946 -
完結第10話
車椅子妻の断罪
建築事務所の代表として成功し、銀座に複数の商業ビルを所有していた鈴木加奈。 しかし3か月前、現場での転落事故により下半身不随と診断されてから、彼女の人生は一変する。献身的な夫を演じる健二は、病室で薬に朦朧とする加奈の指を使い、財産と経営権を奪う書類に指印を押させていた。 さらに、加奈の回復の可能性を隠し、リハビリまで中止させていたことが判明する。 何も知らない患者のふりをしながら、加奈は密かに証拠を集め、夜ごと誰にも知られず足を動かす訓練を続けていた。 そして真夏のある日、健二は加奈を山奥へ連れ出す。 車椅子のブレーキを外れかけにしたまま、夫は妻を置き去りにした。 だが、夫の車が完全に見えなくなった瞬間、加奈は静かに顔を上げる。 彼女はもう、何もできない妻ではなかった――。因果応報|夫婦1.4萬字5 399 -
完結第15話
9,000億円の離婚届
父を見送る火葬場で、ゆみは夫・浩司から離婚届を突きつけられた。 「お前の役目は、もう終わったんだよ」 父の遺骨すら拾っていないその場で、夫と義母は冷たく言い放つ。3年間の介護も、夜の清掃パートも、家を支えてきた28年の結婚生活も、彼らにとってはただの重荷でしかなかった。 しかも浩司には、すでに新しい女性がいた。 父の遺産を奪い、妻を捨て、愛人と新しい人生を始める――。浩司はそう信じて疑わなかった。 だが、亡き父はすべてを見抜いていた。 ゆみに託された黒いカード。古い木箱に隠された証拠。そして、東京駅前にそびえる“あるビル”の存在。 数日後、浩司は初めて知ることになる。 自分が捨てた妻こそ、9,000億円の資産を受け継ぐただ一人の相続人だったことを――。因果応報|人生逆転|夫婦2.3萬字5 441 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 941