"51%の警備員" 第9話
おすすめ作品
-
完結第12話
「貧乏人」と笑われた男
「片親育ちで施設出身って……普通に無理なんだけど」 合コンの席で、頭取令嬢の玲奈は俺を見て笑った。 父は幼い頃に家を出て、母は俺が5歳の時に亡くなった。その後、俺は児童養護施設で育った。 会社名も資産も明かさず、「決済関係の仕事です」とだけ答えると、彼女は俺を貧しい会社員だと思い込んだ。 「人間の価値は、家柄と学歴と収入で決まるでしょ」 俺は静かに、父親が頭取を務める銀行から預金を移すと告げた。 「どうぞ。100万でも500万でも、好きにすれば?」 翌朝、俺は自社の財務責任者へ取引銀行の見直しを指示した。 復讐ではなく、600人の社員と会社の資金を預ける相手として、本当に信頼できるのかを再検討した結果だった。 そして銀行へ届いた資金移管の通知には、法人と個人を合わせて100億円を超える数字が記されていた。 3日後、俺が古いリュックを背負って銀行本店へ入ると、頭取本人が応接室で待っていた――。人生逆転|真実|金銭問題1.8万字5 1239 -
完結第12話
母親ではないと言われた日
「あの人は本当の母親ではありません」 小学5年生の授業参観で、姑・光江は教室中に聞こえる声で、継母の佳奈恵を否定した。 理子が5歳で実母を亡くしてから、佳奈恵は6年間、食事や通院、学校生活を支えてきた。それでも夫の俊一は「母さんに悪気はない」と繰り返すだけだった。 翌朝、佳奈恵は学校から一本の電話を受ける。理子の緊急連絡先が佳奈恵から光江へ変更され、その書類には俊一の署名まであった。 さらに姑は、英語教室や私立校への転校まで、本人に黙って決めようとしていた。 家族会議の日、11歳の理子は青いノートを抱えて現れた。表紙には《勝手に決められたこと》――そこには、祖母だけでなく父が娘へ強いてきた「我慢」が、2年分の日付とともに記されていた。因果応報|嫁姑|親子関係1.7万字5 384 -
完結第13話
一枚のタダ券から始まった家族
夫を亡くし、家賃も食費も尽きかけていた早苗は、5歳の娘・歩美を連れ、冷たい雨の町をさまよっていた。 道端で拾った「唐揚げ1個サービス」の券を握り、閉店間際の《川村食堂》を訪れた早苗。ところが店主の健一は、券の使い方を間違えている彼女を追い返さず、母娘の前に大盛りの唐揚げ定食を置いた。 さらに健一夫婦は、行く場所のない2人を食堂の2階へ住まわせることにする。しかし案内された部屋には、色鉛筆や子ども服、若い夫婦と少女が写った古い家族写真が、暮らしていた当時のまま残されていた。 写真の裏に書かれていた少女の名前は、早苗の娘と同じ「歩美」。しかもその部屋は、健一夫婦が10年間、誰にも使わせずに守り続けてきた場所だった。 なぜ君子は初対面の少女を見た瞬間、「歩美ちゃん」と呼んだのか。雨に濡れた一枚の券から始まった母娘との出会いが、帰らない家族を待ち続ける老夫婦の止まった時間を動かしていく――。人生逆転|真相2.0万字5 495 -
完結第13話
金曜日の一冊
離婚をきっかけに、人と物を分け合うことが苦手になった藤原千紘。 新しく越してきたマンションで、彼女は隣の部屋の前に置かれた小さな木箱を見つける。そこには毎週金曜日、一冊だけ本が置かれていた。 本を借り、付箋で感想を残したことから、千紘と隣人の時計職人・桐谷直人の間に、不思議なやり取りが始まる。 顔を合わせればただの隣人。けれど本の中では、少しずつ本音を交わしていく二人。 そんなある日、木箱から本が消える。直人の姿も見えなくなり、不安を覚え始めた千紘の玄関前に、一冊の絶版本が置かれていた。 それは、亡き父が大切にしていた、千紘が長年探し続けていた写真集だった。 なぜ直人は、その本のことを知っていたのか。 そして最後のページに挟まれていた一枚の紙が、千紘の止まっていた時間を静かに動かし始める――。人生逆転|真実2.0万字5 139 -
完結第12話
私の名前を消した夫
東京国際リハビリテーション医療センターの着工記念式典当日、神崎しおりは会場入口で足を止められた。 招待者名簿から、彼女の名前だけが消されていたのだ。 3年間かけて基幹設計を作り、祖父から受け継いだ絵画を売って5億円まで投じたプロジェクト。その晴れ舞台に立っていたのは、夫・尚弥と、しおりのVIPバッジを胸につけた若い女性だった。 「肩書きを貸すだけだ」 そう言い放つ夫を前に、しおりは静かに会場を去る。 しかしその直後、彼女が一本の電話をかけた瞬間、巨大プロジェクトは音を立てて崩れ始める。 奪われた名前、盗まれた設計、消えた5億円。 すべてを踏みにじられた女が、自分の名で立ち上がる逆転劇――。人生逆転|夫婦|不倫1.7万字5 971 -
完結第10話
月8万円の町工場社長
俺は34歳の町工場社長。 肩書だけなら立派だが、役員報酬は月8万円。工場を守るために作った800万円の借金まで抱えていた。 そんな俺に、大手機械メーカー・白石精機の社長令嬢との見合い話が舞い込んだ。断られるつもりで貯金もないと正直に話したのに、琴子さんは微笑んだ。 「三浦さん。あなた、合格です」 ところが数日後、白石精機の幹部が工場へ現れた。琴子さんとの関係を断てば、年間数千万円の仕事を回すという。 工場には、治療を続ける妻を持つ職人も、子どもの学費を抱える社員もいる。断れば皆の生活に影響する条件だった。 さらに白石精機から、他社がすべて断った緊急部品の依頼が届く。材料は15本、必要数は12個。しかし6本を加工した時点で、合格品は一つもなかった。 残り9本では、どう計算しても足りない。 追い詰められた俺が開いたのは、亡き父の黒いノートだった。その中には22年前、まったく同じ部品を削った記録が残されていた――。職場逆転|人生逆転1.6万字5 628 -
完結第12話
夜逃げ社長に捨てられた4人
社長が突然姿を消し、3か月分の給料を受け取れないまま職場を失った38歳の看板職人・沢村光一。 一緒に取り残されたのは、営業担当の真希、経理担当の春奈、そして住む部屋まで失いかけていた23歳のデザイナー・凛だった。「どこか泊めてください」と頭を下げる凛を前に、光一はほかの2人も見渡し、「うちに来い。全員だ」と告げる。 築古の一軒家で始まった、1日500円の食費による4人の共同生活。再就職先さえ見つからない中、彼らはそれぞれの技術を持ち寄り、自宅の1階で小さな看板屋を始めることを決意する。 ところが開業準備中、春奈がインターネット上で奇妙な会社を発見した。そこには4人が以前制作した看板が実績として掲載され、代表者には消えた社長・黒田剛の名前が記されていた。 しかも、その会社が設立されたのは、黒田が夜逃げしたわずか4日後だった。給料も社員も捨てた男は、最初から自分だけ再出発する準備をしていたのか。すべてを失った4人の小さな挑戦が、黒田の隠していた計画と再び交差していく――。人生逆転|怒り|第二の人生|修羅場1.7万字5 202 -
完結第11話
娘がいない夜も、足音がした
午後10時43分になると、必ず天井から足音がする。 そう訴えてくるのは、階下に住む理事長の森田だった。小学5年の娘・咲と2人で暮らす私は、何度も謝り、防音マットを敷き、娘にも夜は歩かないよう気をつけさせていた。 しかし、苦情は止まらない。 咲が寝ている夜も、家にいない夜も、森田は「また走らせた」と責め続ける。娘はついに、夜中にトイレへ行くことさえ怖がるようになってしまった。 本当に音を出しているのは、私たちなのか。 確かめるため、私は咲を連れて家を空け、603号室を完全に無人にした。 そしてその夜も、午後10時43分。 誰もいない部屋で、あの音が鳴った――。因果応報|怒り|修羅場1.6万字5 313 -
完結第12話
愛人とタイへ行った夫の10日後
夫の浩司は「タイ出張」と言い残し、10日間家を空けた。 その間、寝たきりの義母の介護を任された由美は、いつものように暴言と呼び鈴に追われる日々を送るはずだった。だが、夫のスマートフォンに残された一通のメッセージから、出張が嘘だったことを知ってしまう。 浩司は若い愛人と海外旅行へ行き、しかも由美の父が残した遺産まで使い込んでいた。 さらに書斎の奥から見つかったのは、すでに署名された離婚届と、愛人からのピンク色の便箋。そこには、由美を介護要員として使い捨てる計画が書かれていた。 28年間、妻として嫁として耐え続けてきた由美は、その日初めて家を出る。 そして10日後。 何も知らずに帰国した浩司を待っていたのは、由美が静かに整えた反撃の場だった――。因果応報|夫婦|不倫|熟年離婚1.8万字5 1607 -
完結第10話
ヤクザが凍りついた夜
東京下町の路地裏にある小さな居酒屋「はっちゃん食堂」。 その夜、店の一番奥には、いつものように静かに酒を飲む78歳の老人・高原誠一が座っていた。妻を亡くして以来、季節の変わり目にだけ現れる、物腰の柔らかな常連客。誰もが彼を、ただの寡黙な年金生活者だと思っていた。 しかし午後11時半、三人の強面の男たちが店へ押し入り、店主や常連客を威圧し始める。やがて標的にされたのは、何も言い返さない誠一だった。 酒をこぼされ、肩をつかまれ、拳を振り上げられても、誠一は怒鳴らなかった。 だが次の瞬間、店内の空気が凍りつく。 78歳の老人が見せた、あまりにも静かで正確な動き。誰も知らなかった彼の過去が、赤提灯の下で少しずつ浮かび上がっていく――。人生逆転|怒り|修羅場1.5万字5 782