"51%の警備員" 第9話
「昨の夜、川氏側から提供された報を基に、保されていた会計データを確認しました」
監査役はファイルをいた。
「協力会社3社の請求額は、適正価格より平均で32%く設定されています。また、支払われたの部は複数の会社を経由し、最終に森貴彦専務が実質に管理する座へ流れています」
役員たちのにどよめきが広がった。
貴彦は机をく叩いた。
「でたらめだ!」
「では、これは何ですか?」
モニターに、座の送記録が映しされた。
協力会社からコンサルティング会社へ。
コンサルティング会社から法へ。
そして法から、貴彦が管理する資産運用座へ。
幾にも隠されたの流れが、本の線で結ばれていた。
「これまでに確認された正流額は、なくとも87億円です」
弁護士は静かに続けた。
「仙台の売却代は、その穴を埋めるために利用される予定でした」
「証拠があるのか!」
「こちらです」
次に映しされたのは、仙台の売却に関する内部文だった。
売却先として選ばれていた企業の代表者は、貴彦の学代の友。その企業へ資を提供していた投資会社の実質所者は、貴彦の妻の兄だった。
売却価格は、第者関の評価額より120億円もかった。
取締役たちの顔が変わった。
もし売却が承認されれば、成グループはな産拠点を失い、その方で貴彦の関係者だけが巨額の利益をにすることになる。
広告
「こんなことをすれば、会社がどうなるか分かっているのか」
松蔵が初めて声をめた。
貴彦は振り返った。
「老に経営の何が分かる」
その言葉を聞いた瞬、会議の空気が再び静まり返った。
松蔵は鳴らなかった。
ただ、貴彦の目をまっすぐ見つめた。
「おが今売ろうとしている仙台は、俺が図面を引き、正雄が命を落としただ」
貴彦の表がわずかに揺れた。
「のに最初の線を引いたのも、械を入れるためにへをげたのも俺だ。そこで働くの族が何いるのか、おはっているのか」
「で会社はかせない」
「その通りだ」
松蔵はうなずいた。
「だから数字を持ってきた」
弁護士が、最の資料を配った。
仙台の過5の利益、保技術、取引先、将来の受注予測。売却したの損失と、設備を更したの成予測が細かく記されていた。
仙台は赤字拠点ではなかった。
古い設備を更すれば、5以内にグループ最の利益をむ能性を持つだった。
「売却は経営判断ではない」
松蔵は言った。
「自分の失敗を隠すために、会社の骨を切り売りしようとしているだけだ」
貴彦のが震え始めた。
昨、松蔵の震える指を笑った男が、今度は自分のを机のへ隠そうとしていた。
松蔵は弁護士へ目を向けた。
広告
「決議に移ろう」
「承しました」
弁護士は正式な議案をいた。
第1号議案。
森貴彦の代表取締役選任案を否決すること。
第2号議案。
仙台売却案を撤回すること。
第3号議案。
森貴彦を企画統括専務および取締役から解任すること。
第4号議案。
正取引に関する第者委員会を設置し、捜査関へ資料を提すること。
「信託保株式51%について、すべての議案に賛成の議決権を使します」
その言葉で、すべてが決まった。
成グループで最の力を持つ票が、静かにされたのだった。
「待て!」
貴彦の声が会議に響いた。
「こんなものは無効だ。俺は森のだ。この会社は祖父が作り、父が育てた会社だ!」
松蔵は、その言葉を黙って聞いていた。
「おみたいな警備員が、突然現れて会社を奪えるわけがない!」
貴彦は机のの資料を払い落とした。
が面に散らばった。
昨、の類をロビーへ散らしたと同じ景だった。
しかし、今度は誰も拾わなかった。
松蔵は子からちがった。
「貴彦」
老の静かな声に、貴彦のきが止まった。
「おは、この会社を森の持ち物だと言ったな」
「当然だ」
「違う」
松蔵は首を横に振った。
「会社は、そこにを預けたたちのものだ」
で油まみれになった夫。
を担保に差しした松蔵。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
赤ワインの逆転離婚
因果応報|夫婦1.6萬字5 57 -
完結第15話
残り物少年の奇跡
「残り物をください。そしたら、あなたに歩き方を教えます」 高級レストランでそう言ったのは、破れた靴を履いた8歳のホームレス少年・翔太だった。 相手は、事故で歩く力も家族も希望も失った大富豪・佐藤孝志。世界中の医師から「もう歩けない」と告げられ、人生を諦めかけていた男だった。 ただ食べ物を求めて現れたはずの少年は、なぜか孝志の心の奥に隠された絶望を見抜いていた。 毎晩8時の夕食。少年の小さな手が、動かない足に触れるたび、孝志の中で何かが少しずつ変わり始める。 これは奇跡なのか、それとも少年が見つけた“生きる理由”なのか。 残された一皿のサーモンから、壊れた家族と失われた人生が静かに動き出す――。人生逆転|金銭問題2.3萬字5 7 -
完結第13話
霧葬の山岳会
1998年10月、長野県の山岳会で、ただ1人の女性会員・高木真美が白い霧の中から姿を消した。 翌年に結婚を控えていた28歳の真美。仲間たちと向かった秋の黒岩岳で、彼女は突然行方不明となり、事故による滑落として処理された。赤いキャップとちぎれたザックの一部だけを残して、遺体は見つからなかった。 残された母は、娘の死を受け入れられないまま、毎年10月12日になると警察へ手紙を書き続けた。 「あの日、娘に何があったのか。どうか、もう一度調べてください」 そして16年後。 黒岩岳の岩の隙間から、古い登山靴と人骨が発見される。そこは、滑落した人間が偶然たどり着くにはあまりにも不自然な場所だった。 さらに遺骨には、事故では説明できない傷が残されていた。 16年前、霧の中で本当は何が起きていたのか。 そして、山岳会の仲間たちはなぜ同じ証言を繰り返したのか。 母の手紙が止めなかった時間が、ついに閉ざされた山の沈黙を破り始める。因果応報|行方不明|孤獨2.0萬字5 14 -
完結第8話
消えた仕送り720万円
真冬のある日、55歳の富代は、母の暮らす古いアパートを訪ねた。 部屋の中は外と変わらないほど冷え切り、母は暖房もつけず、毛布にくるまって震えていた。冷蔵庫にはわずかな食材しかなく、長年仕送りをしてきたはずの富代は胸を痛める。 「もっと仕送りを増やすね」 そう告げた瞬間、母は不思議そうに首をかしげた。 「仕送り? 知らないけど」 12年間、毎月5万円。合計720万円。 母のために送っていたはずのお金は、どこへ消えていたのか。疑念を抱いた富代が口座を調べ直すと、そこには夫と義家族が隠し続けていた信じがたい事実があった。 仕送り先を本来の口座に変えた日から、義母、夫、義姉の態度は一変する。 なぜ彼らはそこまで焦ったのか。 凍える母の部屋から始まった違和感は、30年の結婚生活を揺るがす真実へとつながっていく――。因果応報|人生逆転|金銭問題1.2萬字5 947 -
完結第10話
車椅子妻の断罪
建築事務所の代表として成功し、銀座に複数の商業ビルを所有していた鈴木加奈。 しかし3か月前、現場での転落事故により下半身不随と診断されてから、彼女の人生は一変する。献身的な夫を演じる健二は、病室で薬に朦朧とする加奈の指を使い、財産と経営権を奪う書類に指印を押させていた。 さらに、加奈の回復の可能性を隠し、リハビリまで中止させていたことが判明する。 何も知らない患者のふりをしながら、加奈は密かに証拠を集め、夜ごと誰にも知られず足を動かす訓練を続けていた。 そして真夏のある日、健二は加奈を山奥へ連れ出す。 車椅子のブレーキを外れかけにしたまま、夫は妻を置き去りにした。 だが、夫の車が完全に見えなくなった瞬間、加奈は静かに顔を上げる。 彼女はもう、何もできない妻ではなかった――。因果応報|夫婦1.4萬字5 400 -
完結第15話
9,000億円の離婚届
父を見送る火葬場で、ゆみは夫・浩司から離婚届を突きつけられた。 「お前の役目は、もう終わったんだよ」 父の遺骨すら拾っていないその場で、夫と義母は冷たく言い放つ。3年間の介護も、夜の清掃パートも、家を支えてきた28年の結婚生活も、彼らにとってはただの重荷でしかなかった。 しかも浩司には、すでに新しい女性がいた。 父の遺産を奪い、妻を捨て、愛人と新しい人生を始める――。浩司はそう信じて疑わなかった。 だが、亡き父はすべてを見抜いていた。 ゆみに託された黒いカード。古い木箱に隠された証拠。そして、東京駅前にそびえる“あるビル”の存在。 数日後、浩司は初めて知ることになる。 自分が捨てた妻こそ、9,000億円の資産を受け継ぐただ一人の相続人だったことを――。因果応報|人生逆転|夫婦2.3萬字5 441 -
完結第12話
復讐とんかつの逆転便
とんかつ弁当を注文した堀川琢磨の前に現れたのは、高校時代に自分を見下していた金持ち令嬢・柏木綾音だった。 かつて高級ブランドを身につけ、貧しい琢磨を笑っていた彼女は今、実家のとんかつ店を守るため、配達員として頭を下げていた。 「お前が配達?令嬢なのに?」 復讐心に火がついた琢磨は、自分の成功を見せつけるため、何度もとんかつ弁当を注文し続ける。 だが、届く弁当の味は想像以上だった。 そしてある日、綾音が差し出した冷凍とんかつの試作品が、琢磨の運命を大きく動かしていく。 過去の屈辱、消えない傷、落ちぶれた令嬢の謝罪。 復讐のつもりで始まった注文は、やがて小さな老舗店を救い、琢磨自身の孤独な人生まで変えていく――。因果応報|人生逆転|修羅場1.7萬字5 941