"8年目の遺失物" 第5話
なくとも裕子は、お盆休みが始まるから、何らかの決断を考えていた。
その頃、富士川サービスエリアからで約20分の所にある集落の民から、たな目撃報が寄せられた。報提供者は、62歳の農・吉田茂だった。
吉田は失踪当の午11過ぎ、集落の入にある国沿いで、1でっている若い女性を見たという。
「髪がくて、い着を着ていました。夜にしてはずいぶん着だったので覚えています」
女性はが通るたびに顔をげ、誰かを待っているように見えた。吉田は声をかけようか迷ったが、の事へち入ることをためらい、そのまま通り過ぎてしまった。
「あの、声をかけていればよかったと、今でもいます」
吉田は写真の女性と同物かどうかまでは断言できなかった。しかし、い髪と装は裕子の特徴に致していた。
警察は国周辺を捜索し、旅館やバス乗りも調べた。だが、裕子の名で宿泊した記録も、交通関を利用した記録も見つからなかった。
その直、事件をきくかす連絡が入った。話をかけてきたのは、誠の母であり、裕子の義母にあたる子だった。
子は警察ではなく、へ話をかけた。
「お盆休みにであったことを、あなたたちはっておいた方がいいといます」
その話を聞いたは、すぐに渡辺へ連絡した。
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警察署へ現れたの顔はくこわばり、話の内容を伝える声もく震えていた。
渡辺は翌、県の農にある子のを訪ねた。子は古いの縁側に座り、両を膝のへねたまま待っていた。
渡辺が向かいへ腰をろすと、子は自分のを見つめながらをいた。
「お嫁さんに、私は悪いことをしました。その話からしなければならないといます」
子の話は、お盆休み初の夕にさかのぼった。族全員で卓を囲んでいた、酒をんでいた誠が、突然裕子へ声を荒らげたという。
原因は銭の問題だった。裕子が自分の実へ、毎3000円から5000円ほどの活費を送っていたことを、誠がったのである。
額は決してきくなかった。それでも誠は、族ので裕子を責めてた。
「俺の料で、おの実まで養うつもりはない」
裕子は反論しなかった。箸を持ったまま俯き、めていく事を黙ってへ運んでいた。
子は息子が言い過ぎだとったが、そので止めることができなかった。嫁をかばえば息子がさらにるのではないかと考え、何も言わずに座っていたという。
「裕子さんが、どんな顔をしていたか今でも覚えています。私が言でも止めていればと、ずっと悔しています」
しかし、子が最も気にしていたのは、連休最終のけ方に見た景だった。
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午5頃、子が目を覚まして台所へくと、かりがついていた。裕子が1で卓に座り、数枚の便箋へ何かをいていた。
子が廊を歩く音に気づくと、裕子は急いで便箋を折り、ベージュのバッグへ入れた。
2はしばらく無言で見つめった。子が眠れなかったのかと尋ねると、裕子はさく頷いた。
「しだけ、考え事をしていました」
子はそれ以聞かなかった。け方に1でをく嫁の姿を議にはったが、それが最に見る姿になるとは像していなかった。
渡辺は、2005にバッグから見つかった3枚の便箋が、そのにかれたものだと考えた。裕子はサービスエリアへ到着するから、誰かへ言葉を残そうとしていたのである。
しかし、バッグを遺失物センターへ届けたのは、い髪で鏡をかけた別の女性だった。
渡辺が、その特徴に当てはまるがいなかったかと尋ねると、子の表が変わった。
「1度だけ見たことがあります。本ではなく、写真でですが」
子は居の引きしから、古い写真を取りした。写真には裕子と、い髪で鏡をかけたの女性が並んで写っていた。
渡辺は写真を受け取り、遺失物センターの元担当者が語った特徴と見比べた。齢、髪形、鏡のすべてが致していた。
写真の裏には、ボールペンでい言葉がかれていた。
「つらければ、お姉さんはいつでも助けてあげるからね」
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