"8年目の遺失物" 第8話
裕子は国まで歩き、通りかかった斎藤のトラックへ乗せてもらった。甲府へ向かった理由は、本美紀に直接会うためだった。
誠と美紀の関係をった裕子は、自分が見たものや聞いた会話が事実なのか、美紀本のから確かめたいと考えていた。
甲府の旅館にを隠しながら、美紀の居所を調べ、数に本のもとを訪ねた。美紀は最初、誠とは昔からの友にすぎないと主張した。
だが、裕子が持っていたや通話の記録を示すと、最には泣きながら関係を認めたという。
2がどのような言葉を交わしたのか、には詳しくかれていなかった。ただ、そののことについて、裕子はこう記していた。
「私は、あのに戻らなくてもいいのだと、その初めて分かりました」
裕子は夫に責められるたび、自分が悪いのだとうようになっていた。実へわずかな額を送ることも、母へ悩みを話すことも、許されない為のようにじていた。
翔太を置いていくことだけが、最まで裕子を苦しませた。
息子に会いたくないは、1もなかった。2歳の翔太がどのような言葉を覚え、どれほどきくなったのかを考えない夜もなかった。
それでも戻れば、誠が翔太を使って自分をへ縛りつけると裕子は恐れていた。実へ戻れば、誠が迎えに来る能性もあった。
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裕子は本名をきく変えることはしなかったが、自分をるのいない方都へ移った。さゆりが以つながりのあったさな縫製を紹介し、そこで働き始めた。
とまいを往復する静かな活だった。聞に自分の失踪記事がていることも、母や兄が探し続けていることもっていた。
しかし、連絡を取れば居所が誠へ伝わるかもしれない。その恐怖から、をくことさえできなかった。
8、裕子は自分の過を誰にも詳しく話さなかった。職では庭の事で故郷をれたとだけ説し、息子の写真を持つことも避けていた。
2005、遺失物センターに残されていたバッグが再び確認され、事件がき始めたことを、さゆりを通じてった。
バッグのには、裕子が義母のでいた3枚のが残されていた。1枚は母へ、1枚は兄へ、そしてもう1枚は、バッグを見つけたへ向けたものだった。
当の裕子は、そのを郵送する勇気さえ持てなかった。バッグと緒に置けば、いつか誰かが見つけてくれるかもしれないといういだけで封筒へ納めていた。
の最には、こうかれていた。
「私のバッグを発見してくださった方へ、から謝いたします。私はい、帰ることができませんでした。でも、今度こそ翔太に会いにこうといます」
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渡辺はを読み終えると、く息を吐いた。
裕子は事件に巻き込まれて命を失ったのではなかった。夫に見つからずき延びるため、自分の過から姿を消すを選んでいたのである。
しかし、きていることが分かったからといって、8の空が消えるわけではなかった。
母と兄が過ごしたの々も、母親を待ちながら成した翔太のも、元へ戻すことはできなかった。
が届いてから10、裕子は自ら警察署を訪れた。
受付から連絡を受けた渡辺が廊へると、入付に1の女性がっていた。髪は以よりくなり、目元には細かな皺が増えていたが、写真の面ははっきりと残っていた。
裕子は渡辺の姿を見ると、くをげた。
「い、ご迷惑をおかけしました」
渡辺はすぐには言葉を返せなかった。8、類のでしからなかった女性が、自分ので目のにっていた。
取調ではなく、静かな面談が用された。裕子は子へ座り、両を膝ので握りながら、1997の夜から現までの来事を順番に話した。
サービスエリアで夫の気配をじたこと。さゆりとの約束を守れなかったこと。トラックで甲府へ向かったこと。
美紀へ会い、誠との関係を確かめたこと。そして、息子を残してきることを選んだ8。
話の途で声が詰まることはあったが、裕子は席をたなかった。これまで言葉にできなかったを、1つずつ確かめるように語り続けた。
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