"喪服の隠し子" 第2話
何が起きているのか、すぐには理解できなかった。
ただ、その、妹が術へ運ばれる直ににした言葉が、突然のへ蘇った。
「実……子供がいる……」
酸素マスクのから、ユキは確かにそう言った。
私は妹の顔へをづけ、何を伝えたいのか聞き返そうとした。しかしその直、ユキは苦しそうに目を閉じ、識を失った。
そのまま数目を覚まさず、帰らぬとなった。
あの言葉を聞いたのは、私だけだった。
当の私は妹を失う恐怖でがいっぱいで、言葉のまで考える余裕がなかった。だが、タクの話を聞いた今なら、別のが見えてくる。
ユキが言った「実」とは、私たち姉妹の実ではない。
タクとユキが暮らしていたなら、ユキは「実」ではなく「」と言ったはずだ。そう考えれば、残るのはタクの実しかなかった。
話の相とタクの子供が、義実で暮らしているのではないか。
その考えにき着いた瞬、全にたいものがった。
もし本当にそうなら、タクは病な妹と結婚しながら、別の女性とのに子供を作っていたことになる。しかもその秘密を、族ぐるみで隠していた能性がある。
私はタクが通話を終えるに、そのをれた。
何もらないふりをして席へ戻ったが、読経も弔辞もほとんどに入らなかった。
広告
祭壇に飾られたユキの写真だけが、こちらを静かに見つめている。
本当のことを確かめなければならない。
私は妹にので詫びると、葬儀の途で斎をびした。
タクの実は、ユキ夫婦が暮らしていたから徒歩でける距にあった。
結婚、タクは「自分は1っ子で、両親も齢だから、くで暮らしたい」と話していたらしい。ユキは義両親との距がくなりすぎることを配していたが、夫の希望を受け入れた。
ところが実際に暮らし始めると、義実への帰省はほとんどなかった。
所にんでいるにもかかわらず、事に呼ばれることも、季節の事を緒に過ごすこともなかった。タクはそのたびに、両親が付きいを好まないからだと説していた。
私は息を切らしながら義実のへ着いた。
本来なら、このには誰もいないはずだった。タクも両親も、全員がユキの葬儀に参列している。
すぐにインターホンを押そうとしたが、指が止まった。
もしから誰かがてきたら、何と言えばいいのだろう。
まだタクが浮気をしていたという証拠はない。話の部を聞いただけで押しかけても、しらを切られれば終わりだった。
報がりないまま相と対峙して、勝てる自信はなかった。
私は玄関かられ、庭の方へ回った。
広告
のの様子をしだけ確認し、何もなければ斎へ戻ろうとったのだ。
庭に面した窓の1つが、わずかにいていた。
カーテンも完全には閉まっておらず、内の様子が見えた。誰もいないはずの居には、子供用のおもちゃらしきものが置かれている。
「まさか……」
胸がきく鳴った。
その、内から幼い子供の笑い声が聞こえた。
「待ちなさい。ほら、そんなに暴れないの」
若い女性の声が続き、窓のくをさなが横切った。
私は反射に庭のへを隠した。
やがて、1歳ほどの子供が庭へてきた。まだ歩き始めて数かといったおぼつかない取りで、両を広げながら楽しそうにへんでいる。
そのを、見らぬ女性が追いかけてきた。
女性はタクと同じくらいの齢に見えた。子供の顔ちは、その女性にも似ていたが、目元や元にはタクの面がはっきりとあった。
疑う余はなかった。
あの子供は、タクの子供だ。
そして目のの女性が、話の相なのだろう。
「あの男は、本当にユキを裏切っていたんだ」
声にしたつもりはなかったが、唇が勝にいた。
いつから裏切っていたのか。
ユキはいつ、その事実に気づいたのか。
病で伝えようとしていた「実に子供がいる」という言葉は、やはりこの景のことだったのか。
疑問への答えが見つかったはずなのに、はしもれなかった。
それどころか、次々としい疑問が湧き、涙が止まらなくなった。
妹が病でどんないを抱えていたのか。
広告
おすすめ作品
-
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 276 -
完結第17話
忘れたコートが教えてくれたこと
結婚式まであと3週間。高橋ゆいは婚約者・博人の実家に忘れたコートを取りに戻り、衝撃的な会話を耳にする。食卓に広げられていたのは、祖母から相続した自分のマンションを、博人の実家が営む会社の追加担保にする計画書だった。しかも本人への説明は「婚姻後1週間」の予定。14人の従業員を守るためだと訴える婚約者の母と、すべてを知りながら黙っていた博人。人生逆転|裡切られた|夫婦|真相|修羅場2.0万字5 396 -
完結第15話
3年眠った財閥社長を叩き起こした3歳の道士
3年間、意識不明のまま眠り続けていた財閥総帥・陸晏蕭。医師たちが命を諦めかけた瞬間、病室に飛び込んできたのは、峨眉山で修行した3歳の天才道士・沈兮兮だった。少女の強烈な平手打ちで奇跡的に目覚めた晏蕭は、彼女が自分の娘だと知って愕然とする。しかし兮兮は「パパなんていらない!」と完全拒絶。占いや不思議な術で周囲を驚かせる少女に、冷徹だった父親も少しずつ心を動かされていく。やがて3年前の事故に隠された陰謀と、少女が山を下りた本当の理由が浮かび上がり……。人生逆転|祖父母と孫2.1万字5 278 -
完結第10話
手取り23万円の俺、旅館で妻が「お嬢様」と呼ばれた
手取り月23万円のトラック運転手・中村和也は、妻の彩佳と娘の結衣を何よりも大切にしていた。幼い頃、亡き父と交わした温泉旅行の約束を果たすため、毎月五千円を五年間積み立て、ようやく三十万円を貯める。結婚記念日に彩佳が選んだのは、山奥に佇む名門旅館「月影楼」。質素な暮らしの自分たちには場違いに思えたが、玄関に到着した途端、従業員が彩佳に深々と頭を下げた。「お嬢様、お帰りなさいませ」。妻が長年隠してきた過去とは何なのか。家族への愛と、思いがけない運命の再会を描く物語。人生逆転|夫婦|第二の人生|親子関係2.4万字5 1735 -
完結第20話
五歳で売られた天才少女、悪意を嗅ぎ分け父を救う
母を亡くした五歳の少女・ゆえんは、祖母に五百元で売られそうになり、父・陸長風を探すため村を脱出する。悪意を異臭として感じ取り、難解な数式や医学の知識まで理解する不思議な力を持つ少女は、旅の途中で国防研究所の主任を救い、省都の名門・陸家へたどり着く。しかし、父は極秘任務のあと消息を絶っており、母が遺した銀の首飾りには国家機密に関わる秘密が隠されていた。迫りくる敵の魔の手、そして謎に包まれた父の行方。小さな天才少女が、その知恵と勇気で運命を切り開いていく。因果応報|人生逆転|祖父母と孫2.2万字5 742 -
完結第20話
車椅子の妻を離島に置き去り――船上の夫が見たもの
交通事故で車椅子生活となった42歳の千紗。献身的だった夫・啓介は、4,800万円の賠償金が決まると態度を一変させ、通帳を渡すよう迫り始める。さらに千紗の知らないところで施設入居の手続きまで進めていた。そんなある日、夫は「旅行に行こう」と千紗を離島へ連れ出す。ところが帰りの船の予約は、夫一人分だけだった。携帯も財布も奪われ、島に取り残された千紗。しかし夫は、彼女が密かに続けていたリハビリと、車椅子の下に隠された小さな備えを知らなかった。夫の裏切りから始まる、人生を取り戻す逆転の物語。人生逆転|裡切られた|夫婦2.9万字5 970 -
完結第18話
時給1111円で高齢者5人を雇った結果
父から受け継いだラーメン店が、大手チェーンに客を奪われ閉店寸前。店主の赤坂明のもとへ、職を失った高齢者五人が「働かせてくれないか」と訪ねてきた。明は時給1111円で全員を採用する。すると、元工場勤務、教師、タクシー運転手など、五人が長年培ってきた経験が思いがけない力を発揮し、店は少しずつ活気を取り戻していく。しかし、その変化を面白く思わない競合店の店長が、次々と妨害を仕掛け始める。感動|職場逆転|人生逆転|金銭問題2.1万字5 1126 -
完結第20話
5000万円の新居に義両親が無断で引っ越し――夫の嘘
実家の両親から五千万円の援助を受け、念願の新居を購入した。夫の健太とは親との同居をしないと約束し、二人だけの新生活を始めるはずだった。ところが引っ越し当日、義両親のベッドやタンスを積んだトラックが突然到着する。「今日から俺の親も住む。親孝行は当然だろ」と言い放つ夫。彩佳の同意もなく進められていた同居計画には、夫が隠してきた嘘があった。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|金銭問題|修羅場2.3万字5 933 -
完結第20話
葬儀3日後、姑に追放された私に亡き夫からの連絡
物流センターの事故で夫・直人を突然失った41歳の美和。しかし義母の数枝は、妻である美和に夫の顔を見ることすら許さず、葬儀を強引に取り仕切る。さらに葬儀の三日後、香典三百万円以上を独占し、13歳の娘・咲と美和を雨の夜に家から追い出してしまう。 絶望の中、親友に助けを求めた美和のスマートフォンに、午前四時、信じられないメッセージが届く。 「生きてる。母には言うな」 送信者は、火葬されたはずの夫だった。 閉ざされた棺の中にいたのは誰なのか。義母が隠そうとしたものとは――。夫の事故をめぐる疑惑と家族の裏切りを描く、衝撃の逆転サスペンス。因果応報|嫁姑|夫婦|親子関係|金銭問題2.3万字5 955