"魚臭い嫁の30万円返し" 第8話
私とコウのには、2の息子もまれた。
子供たちはさい頃からへ遊びに来るのが好きで、カウンターの向こうにつ父親を憧れの目で見ていた。
「きくなったら、お父さんみたいに寿司を握る」
の子が言うと、の子も負けじと胸を張った。
「僕もを守る」
コウは嬉しそうに笑いながらも、無理に継がなくていいと繰り返していた。
「自分が本当にやりたいとったらでいい。のためにを決める必はないからな」
将来、2がを継ぎたいと言うなら、私たちは応援する。
別のを選ぶなら、そのも尊するつもりだ。部の信頼できる職へを任せる方法もある。
それでも今のところ、息子たちは寿司が好きで、の伝いにも興を持っている。
いつか息子たちが営むで、私とコウが婚式を祝えたら素敵だとう。
モモも5ほどに結婚し、しにい女の子を産した。
母がきていれば、どれほどんだだろう。そう考えると胸が痛むが、モモの娘が笑う姿を見るたび、母の優しい表をいす。
モモは産、以よりし穏やかになった。
ただし、兄の話になると相変わらず厳しい。
「子供ができたからこそ、余計にお兄ちゃんのことが理解できない」
ある、モモは娘を抱きながら言った。
「族なら何をしても許されるとってたんだろうね。
広告
お母さんにも、お姉ちゃんにも」
「そうかもしれないね」
「でも私は、この子に族だからしろなんて教えたくない」
私も同じ気持ちだった。
母は族が仲良くすることを望んでいた。しかし母の言葉は、傷つけられても無条件に耐え続けろというではなかったはずだ。
相をいやり、できるだけ争わずに過ごしてほしい。
それでも相が何度も尊厳を傷つけ、まで求してくるなら、距を置くことも必である。
私はい、兄と縁を切ることに罪悪を持っていた。母の願いを裏切っているような気がしていたからだ。
だが今は、違うとえる。
母が本当に望んでいたのは、私たちが苦しみながら形だけの族を続けることではない。それぞれが穏やかに、幸せにきることだったのだろう。
モモの子育てがし落ち着いたら、私の族とモモの族で旅へこうと話している。
息子たちは今から、従妹とどこへくかを相談している。がいい、温泉がいい、物園へきたいと、話はなかなかまとまらない。
コウは相変わらず仕事で忙しいが、族とのを切にしてくれている。
が休みのには息子たちと料理を作り、には私たちをへ連れてく。魚の見分け方を教えながら歩く姿は、につとはし違う、父親の顔をしていた。
広告
兄夫婦から魚臭いと笑われた仕事が、今では私たち族の誇りになっている。
コウのについた魚の匂いを、私は嫌だとったことなど度もない。それは族を支え、客をばせるために働いてきたの匂いだからだ。
ある夜、2号の営業を終えたコウが帰ってきた。
「今、あの常連さんが来てくれたよ」
兄が接待の席で老呼ばわりした、あの客のことだった。
「元気だった?」
「元気。息子さん夫婦も緒だった。今度、孫の祝いで本を使いたいって」
コウは嬉しそうに話しながら、着を脱いだ。
との縁は議なものだとう。
兄は相を見し、信用を失った。コウは相を切にし、その縁がいをかけてを支えてくれた。
目先の30万円を欲しがり、族まで利用しようとした兄。
方で、すぐに結果がなくても、毎同じ仕事を丁寧に続けたコウ。
どちらが豊かなをに入れたのかは、今さら比べるまでもない。
私はコウの着を受け取りながら笑った。
「いつか息子たちので、婚式ができるといいね」
コウはし驚いた、目尻をげた。
「その頃まで、俺たちが元気でいないとな」
「もちろん。きするよ、私」
「俺も頑張るよ」
居から息子たちの笑い声が聞こえてきた。モモからは、娘が初めてったという画が送られている。
これからも、族との楽しい予定はたくさんある。
兄のいない族の形を、寂しいとうことはもうない。
緒にいるだけで相を傷つけるより、血のつながりがなくても互いを尊できるの方が、ずっと族らしい。
私は夫と息子たちのいる居へ向かった。
母が残してくれた優しさを、今度は私たちが次の世代へ渡していけばいい。
毎を元気に、楽しくきていく。
そして、できるだけく、切なたちのそばにいる。
それが今の私の願いだった。
広告
おすすめ作品
-
完結第18話
結婚初夜、義母を助けた私を殴った夫の誤算
結婚初夜、夫の実家で義父が義母の首を絞める現場を目撃した公認会計士の直美。助けようとした彼女を、信じていた夫・翔太は平手打ちし、「見て見ぬふりを覚えろ」と命じた。直美は義母を病院へ運ぶが、夫一家は弁護士と金の力を使い、彼女の口を封じようと動き始める。そんな中、義母が密かに託していた記憶装置が見つかった。嫁姑|絶縁|親子関係|介護2.6万字5 195 -
完結第25話
母との同居後、妻が倒れた――医師が私だけ呼んだ理由
父を亡くした春樹は、一人暮らしの母・節子を心配し、妻の夏美と三人で暮らし始める。家事も母の通院もこなす妻を見て、同居はうまくいっていると思っていた。ところがある朝、夏美が突然倒れ、救急搬送される。医師に一人だけ呼ばれた春樹は、妻の体に起きていた異変を知らされる。変更された婦人科の予約、開かれなかった白い封筒、妻に任せきりだった家の用事。自分は家族を守っているつもりだったのに、何を見落としていたのか。人生逆転|嫁姑|夫婦|親子関係3.1万字5 276 -
完結第20話
宅配箱を盗む隣家の子…餌を入れた翌朝、母親が激怒
ペットショップを営む榊哲也の家で、宅配ボックスから荷物が次々と消える。近所の目撃情報が指したのは、隣家の小学五年生・航太。しかし母親の千晶は「子どもを疑うな」と哲也を非難し、町内に悪い噂まで広め始める。哲也は自分宛ての荷物に店で扱う乾燥コオロギの餌を入れ、防犯カメラで行方を確かめることに。すると映像には、少年の行動以上に不可解な親子のやり取りが残されていた。さらに消えた荷物を追ううち、地域の見守り活動に関わる不自然な書類まで浮かび上がる。小さな宅配トラブルの裏に、何が隠されているのか。怒り|真相|修羅場2.8万字5 606 -
完結第17話
忘れたコートが教えてくれたこと
結婚式まであと3週間。高橋ゆいは婚約者・博人の実家に忘れたコートを取りに戻り、衝撃的な会話を耳にする。食卓に広げられていたのは、祖母から相続した自分のマンションを、博人の実家が営む会社の追加担保にする計画書だった。しかも本人への説明は「婚姻後1週間」の予定。14人の従業員を守るためだと訴える婚約者の母と、すべてを知りながら黙っていた博人。人生逆転|裡切られた|夫婦|真相|修羅場2.0万字5 394 -
完結第12話
消えた路地の矢印
昭和39年、東京オリンピックを目前に控え、東京の街は急速に姿を変えていた。23歳の標識職人・黒田俊も、新しい道路の案内板を作る仕事に追われていた。ところが工事によって古い路地が封鎖され、診療所へ通う老人や商店の人々が行き場を失い始める。立ち退きを迫られる活版所の親子、変わり続ける迂回路、そして正しいはずの標識に迷わされる人々。時代|歴史|昭和|真相|修羅場2.8万字5 46 -
完結第20話
車椅子の妻を離島に置き去り――船上の夫が見たもの
交通事故で車椅子生活となった42歳の千紗。献身的だった夫・啓介は、4,800万円の賠償金が決まると態度を一変させ、通帳を渡すよう迫り始める。さらに千紗の知らないところで施設入居の手続きまで進めていた。そんなある日、夫は「旅行に行こう」と千紗を離島へ連れ出す。ところが帰りの船の予約は、夫一人分だけだった。携帯も財布も奪われ、島に取り残された千紗。しかし夫は、彼女が密かに続けていたリハビリと、車椅子の下に隠された小さな備えを知らなかった。夫の裏切りから始まる、人生を取り戻す逆転の物語。人生逆転|裡切られた|夫婦2.9万字5 970 -
完結第14話
50人ドタキャンで廃業寸前、そこへ現れた意外な客
父から受け継いだ居酒屋「二鉄」を守るため、会社を辞めた32歳のテツ。廃業寸前の店に舞い込んだのは、元同僚・真治からの50人貸切予約だった。ところが宴会開始30分前、真治は突然の全員キャンセルを告げ、支払いまで拒否する。大量の料理を前に途方に暮れるテツ。そのとき、「今から50人入れますか?」と一人の青年が駆け込んできた。職場逆転|裡切られた|怒り|金銭問題|修羅場1.7万字5 1534 -
完結第20話
一年後の請求書
脱サラして念願の自家焙煎カフェを開いた橘鉄。しかし、店にはコーヒー一杯だけで毎日11時間も居座り、ゲームに没頭する大学生・日向明がいた。注意しても屁理屈を並べ、SNSでの炎上までちらつかせる始末。困り果てた鉄は、ある日「コーヒー一杯で終日ゲームし放題」という新サービスを始める。大喜びで年間契約にサインした明だったが、その契約には思いもよらない条件が隠されていた。一年間、何も言わずに見守り続けた店主が、ついに動き出す。怒り|真実|修羅場2.0万字5 824