"水槽裏の金歯" 第6話
「佐藤浩司が、自分の罪を軽くするために私を利用しているんです」
穏やかな笑みまで浮かべた。
「私は恵子を切にっていました。どうして私が、あのを傷つけるんですか」
8と同じ演技だった。
渡辺は黙って、秘密の帳簿を机のに置いた。
義子の微笑みが止まった。
「この帳簿に見覚えがありますね」
赤い印のついたページをく。
義子。
積3000万円を無断流用。
産投資に失敗。
損失総額3500万円。
鈴恵子から緊急借入れ。
返済できなければ、の仲に横領を公表する。
義子の目がわずかに揺れた。
「あなたは、この帳簿が世にることを恐れていた」
「事実ではありません」
「鈴さんがきていれば、あなたは全てを失う。での位も、財産も、30築いた信頼も」
義子は黙秘すると告げた。
その、取調のから声が聞こえた。
「姉御、もう終わったんですよ!」
錠をかけられた佐藤浩司が、廊の向こうから叫んでいた。
「全部、本当のことを話しましょう!」
ガラス窓越しに佐藤の姿を見た瞬、義子の肩がさく震えた。
その、築の商たちが提した嘆願も示された。
かつて義子を擁護していた々の署名は、今では厳罰を求める署名に変わっていた。
30築いた信頼が、夜で崩れていた。
頼る相はいなかった。
佐藤は自し、の仲も背を向けた。
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義子はい、机の点を見つめていた。
やがて肩の力が抜け、い声が漏れた。
「恵子が……私を崖っぷちまで追い詰めたのよ」
録音が、静かに回り続けていた。
宴会が終わった、恵子はすぐには帰らなかった。
400万円の入ったバッグを抱え、厨の奥で義子を待っていた。
義子には、その夜のうちに借を返すよう伝えてあった。
午1130分。
厨の扉を閉めると、恵子はバッグから帳簿を取りした。
「義子、今夜で終わりにしましょう」
恵子の声はたかった。
「元3000万円と、滞納している利息500万円。午0までに返して」
義子の顔がこわばった。
「そんな、今すぐ用できるわけがないでしょう」
「それは私の問題ではないわ」
恵子は帳簿のページをいた。
そこには、積を横領し、産投資で失敗した事実が記されていた。
「返せないなら、の朝、のみんなに見せる」
「恵子、待って。しだけをちょうだい」
「もう分待ったわ」
義子は恵子のの裾をつかんだ。
「1週だけ。せめて3だけでも」
恵子はそのを振り払った。
「は終わりよ」
背を向けてちろうとした瞬、義子ので何かが切れた。
築いてきた位。
の仲から向けられる尊敬。
級マンションも、財産も、全て失う。
恐怖とりに駆られた義子は、恵子の背をく突きばした。
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恵子はよろめき、型槽のステンレス製の角にをぶつけた。
鈍い音が厨に響いた。
恵子はへ倒れた。
部から血が流れ、体がさく痙攣していた。
義子のには、瞬だけ救急を呼ぶ考えが浮かんだ。
だが、恵子が助かれば、横領がらかになる。
義子は恐怖に支配された。
くに置かれていた魚を処理する具をに取り、倒れている恵子にとどめを刺した。
その衝撃で、恵子の歯から歯がれた。
さな属片はを転がり、シンクのへ滑り込んだ。
義子はそれに気づかなかった。
恵子がかなくなると、義子は佐藤へ話をかけた。
「今すぐへ来なさい。誰にも言ってはいけない」
30分、裏から入ってきた佐藤は、厨の景を見てち尽くした。
「姉御、これは……」
義子は驚くほど落ち着いていた。
「あんたの借500万円を消してあげる。も守ってあげる」
義子は佐藤を見据えた。
「その代わり、最まで伝いなさい」
2はのシャッターをろし、から見えないようにした。
恵子の痕跡を消し、遺体を複数の袋に分け、夜けにれた所へ運んだ。400万円の入ったバッグも、義子が持ちった。
厨には量のを流した。
血液と細かな痕跡は、シンクから排管へ流れた。に落ちていた歯もとともに排へ入り込んだ。
しかしはよりい。
歯は管の奥まで流れず、Pトラップの底に沈んだ。
義子と佐藤は厨全体に塩素系漂剤をまき、壁や、槽の周囲を何度も洗った。
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