"10年目のボイラー室" 第2話
田は事を終えると度部へ戻った。
午9頃、旅館の玄関からへた。
きな鞄は部に残し、さなリュックだけを背負っていた。佐藤夫婦は、田が予定通り周辺を散策しにったのだとった。
部の鍵も持ったままだったため、昼頃には戻ってくるのだろう。夫婦はそう考え、特に気に留めなかった。
その、田を見たという証言がいくつか現れた。
川沿いの堂を営む伊という男性は、午10頃に田らしい物を見たと話した。田は1で川沿いのをゆっくり歩いていたという。
ただし、伊が覚えていた方向はし奇妙だった。
観客がよく向かうではなく、田は町の方へ歩いていた。
方、青龍旅館の従業員だった田は、異なる証言をした。
「午11頃だったといます。田さんを旅館のくで見ました」
警察にそう話したものの、詳しく尋ねられると田の調は曖昧になった。
「部に戻っていくように見えました。ただ、かったので……本だったかどうかは分かりません」
さらに別の証言もあった。
2階に泊まっていた男性が、正午頃、1階から2の男性が話している声を聞いたという。
所は田の部にい廊だった。
「男の声が2つ聞こえました。しい調だったような気もしますが、何を話していたのかまでは聞き取れませんでした」
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男性は部からて確認したわけではなかった。
そのため、本当に田が話していたのかどうかは分からなかった。
昼を過ぎても、田は堂へ姿を見せなかった。
それでも佐藤夫婦は配しなかった。観客が朝から夕方までかけたままということは珍しくなかったからだ。
午4頃、旅館の話が鳴った。
佐藤が受話器を取ると、らない男性の声がした。
「田さんの部につないでください」
佐藤は保留にし、田の部へ話を回した。しかし呼びし音が鳴るだけで、誰もなかった。
「今、部にはいないようですが」
佐藤がそう伝えると、相はく答えた。
「分かりました。でまたかけます」
話はそこで切れた。
佐藤が名を尋ねるだった。
になってい返すと、その男性の声はし急いでいるように聞こえたという。しかし、そのは宿泊客への話など珍しくなかったため、佐藤はく考えなかった。
午7を過ぎた。
田はまだ戻らなかった。
さすがに気になった佐藤は、田の部のへった。何度か扉を叩いたが、返事はない。
「田さん、いらっしゃいますか」
反応はなかった。
佐藤は予備の鍵で扉をけた。
部のには誰もいなかった。
しかし、田の荷物はほとんど残されたままだった。着替えや洗面用具、本なども、朝にかけたと変わらない状態で置かれている。
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佐藤はそこで初めて、胸の奥にさなを覚えた。
夜10を過ぎても田は戻らなかった。
「で迷ったんじゃないでしょうね」
妻がそうに言うと、佐藤は窓のへ目を向けた。
「るくなっても戻らなかったら警察に連絡しよう」
事故が起きているのなら、すぐにらせるべきなのかもしれない。しかし、旅客が予定を変えて遅くなる能性もあった。
夫婦は翌朝まで待つことにした。
曜の朝。
玄関がく音を待っていた佐藤夫婦のに、田は現れなかった。
部ものままだった。
そこで佐藤は警察へ話を入れた。
ほどなくして警察官が旅館へ到着し、田の部を確認した。残された荷物や内の状況から、単純に予定を変更して帰ったとは考えにくかった。
警察は旅館周辺と川沿いを調べた。
も捜した。
しかし、田の姿はどこにもなかった。
川へ転落した痕跡も見つからず、事故を示すものもなかった。
午9に旅館をた、田誠はまるで景のへ溶け込んだように消えてしまった。
警察は当初、田の件を方事件として扱った。
35歳の成男性が1で旅している途に姿を消したというだけでは、すぐに犯罪と判断する材料はなかった。
しかし、旅館の部に荷物を残していたことは自然だった。
会社には曜に戻ると伝えている。
旅館を突然捨て、誰にもらせず別の所へ向かったと考えるには、説できないことがすぎた。
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