みかん小説
本棚

"熱海失踪、2時12分のポケベル" 第4話

さらに、失踪から約2週

は「自分1って、もう度チラシを配ってくる」と由へ告げ、3を空けた。

戻ってきた健は疲れ切った顔で言った。

「何も分からなかった。ごめん」

は逆に夫を労った。

「そこまでしてくれてありがとう」

その3、健が本当にどこで何をしていたのか。

警察は確認していなかった。

方、鈴警部補は完全に納得していたわけではなかった。

特に気になったのは、最初の事聴取で健が「美緒と最に別れたのは夜10頃です」と迷うことなく答えたことだった。

族が突然いなくなった直だというのに、健を確認するような仕すら見せなかった。

はその違を自分の帳へき残した。

〈最の目撃、22。回答にためらいなし。自然〉

さらにコンビニ員へ再確認すると、2へ来た正確なは分からないことが判した。

員は21か22。なぜ健だけが22と断言できるのか〉

の疑いはまった。

しかし物証はなく、からは「能性がい事件へ員を割き続けるな」という空気がまっていた。

結局、捜査は縮された。

1993にもたい季節が訪れた。

京の部で、妹が使っていた物を片づけられずにいた。

机のには就職活用の問題集が残されていた。

広告

かれたページには黄い蛍ペンで線が引かれ、美緒がその続きを勉するつもりだったことが伝わってきた。

化粧品もそのままだった。

も。

は夜になると々妹の部へ入り、何もせずに座っていた。

方で、健常はしずつ元へ戻っていった。

会社の経営は持ち直し、従業員も増えた。

1995には、由とのに娘がまれた。

親戚が集まる席で美緒の話がると、健は目を赤くして俯いた。

その涙を疑う者はいなかった。

同じ1995、事件の台となったの旅館は老朽化のため取り壊された。

にはしい建物が建ち、1階には、2階には学習塾が入った。

美緒が最に泊まった部も、け放たれていた窓も、もうしなくなった。

事件そのものが、常の景へ沈んでいくようだった。

ところが1996

は夫のある言葉を聞いた。

その夜、健は取引先との酒席からひどく酔って帰宅した。呂にも入らずベッドへ倒れ込み、そのまま眠ってしまった。

夜。

が隣で眠っていると、健が突然、さく呟いた。

「……すまない」

は目をけた。

たった言だった。

しかし普段の夫の声とは違って聞こえた。

喉の奥から絞りすような、く苦しい声だった。

「あなた?」

声をかけても返事はない。

は眠ったままだった。

広告

は仕事のことで何かあったのだろうと、自分に言い聞かせた。

だが、その言葉は胸の奥に残った。

同じ頃、健は仕事で静岡方面を回る際にも、周辺だけは避けるようになっていた。

旅館跡から歩いて10分ほどの所に取引先があったが、そこへだけはの従業員へ任せた。

「社、ここだけどうしてかないんですか?」

従業員が聞くと、健類から顔をげずに答えた。

「あの辺はが分かりにくいんだよ」

それ以しなかった。

1997には、事務所で別の来事も起きた。

しく入った従業員が類を探して健の机の引きしをけると、奥に1枚の女性の写真が裏返しで置かれていた。

何気なくに取った瞬、健子からがった。

そして無言のまま写真を奪い取り、引きしの奥へ押し込んだ。

「すみません」

従業員が謝っても、健は何も言わなかった。

にその従業員は警察へ話している。

った顔ではなかったんです。むしろ無表でした。でも、目だけがいつもの社と全然違いました」

写真の女性が誰だったのか。

そのは誰もらなかった。

事件から6が過ぎた1999

美緒の失踪事件は、ほとんど忘れられた事件になっていた。

警察の保管庫には、いファイルが1冊残されていた。数枚の報告と旅館の宿帳のコピー、簡単な事聴取の記録だけが綴じられたものだった。

そのファイルを再びくことになったのは、全く別の事件がきっかけだった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: