みかん小説
本棚

"消えた御曹司と500万の罠" 第2話

は返す言葉を失った。

ミキはさらに線を逸らし、ため息をついた。

「それに、あなたの過って何なの?」

「過?」

「5歳のに記憶を失って、施設に預けられたんでしょう。親が誰かも分からない。どうして1になったのかもらない」

胸の古い傷を、指で直接抉られているようだった。

「そんな何も分からないと、どうやって未来を考えればいいの?」

はしばらく声をせなかった。

ようやく唇をかした、自分でも分かるほど声が震えていた。

「それは……俺に父親になる資格がないってことか?」

ミキはしも迷わなかった。

「はっきり言うわ」

彼女は悠を真正面から見た。

「あなたみたいな父親がいるくらいなら、まれてこない方がこの子には幸せよ」

から力が抜けた。

「考えてみて。子供がきくなって、友達に何て言うの? うちのお父さんはただの運転です。おじいちゃんもおばあちゃんもいません。お父さん自、自分がどこの誰かも分かりませんって」

「やめてくれ」

「そんな父親の子供が、どれだけ惨めないをするとう?」

自分のそのものを否定されたようだった。

これまでの奥で何度も恐れてきた言葉を、最もしていた女性から突きつけられた。

は拳を握った。

「じゃあ、どうして2も付きったんだ」

ミキは黙っていた。

「どうして俺をしてるって言った?」

広告

それでも答えない。

はたまらず声をげた。

「どうしてなんだよ!」

ミキは面倒そうに髪をかきげた。

「それなりに楽しかったわよ」

「……それなり?」

「私の言うことを何でも聞こうとするあなたを見るの、嫌いじゃなかった。最初から、よく言うことを聞く犬みたいだとってた」

を疑った。

「でも、その犬の能力がすぎたのよ」

ミキは平然と言い切った。

そして病院へ支払うが必だと告げた。

は、その言葉が何をするのか理解した。

「本当に……それで終わりなのか?」

「その方がみんなのためよ」

ミキの表には迷いがなかった。

はそれ以何も言えなかった。

自分は卒だった。

施設育ちだった。

親が誰なのかもらなかった。

その事実を突きつけられると、反論すること自体がみじめにえた。

は言われた額を、ミキの座へ振り込んだ。

スマートフォンで入を確認したミキは、何のも見せずバッグへ端末を戻した。

「もう連絡してこないで」

ドアが閉まった。

その音だけが、狭いワンルームのにいつまでも残った。

はしばらくったままけなかったが、やがてそのへ崩れるように座り込んだ。

息が苦しかった。

この部にいることさえ耐えられなかった。

着をつかみ、傘も持たずにた。

っていた。

広告

たい粒が顔を叩いたが、ほとんど何もじなかった。

ただの向くまま歩き続けた。

横断歩で信号を待っている、隣にいた族が目に入った。

父親が5歳ほどの男の子を肩していた。母親は傘を差し、男の子は父親の髪をつかみながら声をげて笑っている。

の胸がく痛んだ。

自分も、あんな父親になりたかった。

子供を肩して。

緒に笑って。

どこにでもあるような族になりたかった。

しかしミキの声がの奥で繰り返された。

――あなたみたいな父親がいるくらいなら、まれてこない方が幸せよ。

は俯き、に歩きした。

を吸ったい。

まるで自分のをそのまま背負っているようだった。

夜遅く、ようやく部へ戻ると、そのままベッドへ横になった。

井を見つめながら、悠は幼い頃のことをしていた。

施設にいた頃も、眠れない夜には何度も井を見ていた。

いつか両親が迎えに来る。

「遅くなってごめんね」と謝って、自分をへ連れて帰ってくれる。

そんな像を何度しただろう。

だが、誰も来なかった。

そして25歳になった今も、何も変わっていない。

スマートフォンが鳴った。

会社からだった。

本さん。朝、会の特別送迎をお願いします。午6までに勤してください》

く返信した。

《承しました》

も働かなければならない。

運転本悠

今の自分に残っている唯の肩きだった。

せめて、その仕事だけは完璧にやろう。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: