みかん小説
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"白タク墓参り" 第6話

藤波の顔から、のいい笑みが消えかけていた。

「なのにあなたは、美さん、柚ちゃんと呼んだわね」

「どこかで聞いたんですよ」

「どこで?」

「客の世話か何かで」

私はさく笑った。

「このは覚えたばかりなんでしょう?」

藤波の元が引きつる。

「柚はね、い町から数に来たばかりなの。うちに泊まるのも今回が初めて」

私は男の目を見た。

「そんな5歳の孫の名を、どこのお客の世話があなたまで運んでくれたのかしら」

藤波は答えなかった。

答えられないのだ。

「あなたのお話は最初から同じだった」

私は歩も退かなかった。

「嫁の悪を言いながら、最には必ず、名義、権利、実印へ戻っていった」

男の喉がさくく。

「あなたが配していたのは私の命なんかじゃない。私の判子1つでかせる、あのでしょう」

その瞬

藤波の顔から、完全に仮面が落ちた。

「ばあさん」

声が別のようにくなった。

「調子に乗るのも概にしろよ」

男がづいた。

の静けさので、荒くなった呼吸だけが聞こえる。

伸ばされたが、私の腕へ届きかける。

そのだった。

本堂の方から、きな鐘の音が響いた。

ゴーン――。

藤波のが止まる。

くにいた老夫婦がこちらを見た。

寺男も顔をげる。

の目。

藤波は周囲を確認し、伸ばしかけたを引いた。

私は乱れてもいない袖をゆっくりえた。

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「本当は誰よりいい子の美が、そんなこと考えるわけないでしょう」

藤波の顔が歪んだ。

寄りだから簡単に騙せるとったんでしょうけれど、もうな嘘を考えるものよ」

私は隆志の墓へ背を向けないまま言った。

「このは私が首を縦に振らない限り、誰にもかせない。所はみんな売った。最に残った1軒だから、あなたたちは嫁の悪まで使って私から権利を騙し取ろうとした」

くから音が聞こえた。

最初はの音かとった。

けれど違った。

サイレンだった。

藤波の表が変わる。

サイレンは1つではない。

次第にづき、寺のが止まる音が続いた。

藤波は墓と私の顔を交互に見た。

「待ってくれ」

男の声が震え始める。

「俺は頼まれてやっただけだ」

私は静かに問い返した。

「誰に?」

「沼田だ。沼田って男だよ」

やっぱり。

あの話の声は、沼田だった。

姿の警察官たちが段を駆けがってくる。

藤波は逃げを探すように周囲を見回したが、もうけなかった。

「なんでだ……通報なんかできるはずが」

その呟きを聞き、私は鞄へを入れた。

「気づいてないの、とあなた最初に言ったでしょう」

私は携帯話を取りした。

「気づいていなかったのは、あなたの方よ」

駆け寄ってきた警察官へ、私は携帯話と藤波から渡された名刺を差しした。

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での話は、できる限り録音してあります。途でこの話を受けたの会話も入っているはずです」

警察官がすぐに携帯話を受け取った。

藤波はそので取り押さえられた。

私がようやく息を吐いただった。

「お母さん!」

聞き慣れた声が墓へ響いた。

振り向くと、社務所のから美ってきた。

そのろから柚も駆けす。

「ばあば!」

は美を振りほどき、そのまま私の腰へぶつかるように抱きついた。

「はいはい。ここにいますよ」

私はさな背を何度も撫でた。

いつもなら憎まれの1つも言う美が、私のち止まったまま何も言わない。

唇をく結び、目を赤くしていた。

「無事で……よかった」

だけ声が震えた。

私は美の腕を軽く叩いた。

「あなたこそ、ちゃんと気づいたのね」

は何度も頷いた。

藤波に置きりにされた直、美は警察へ連絡したという。

しかし最初は、なかなか事件として扱ってもらえなかった。

が自分でタクシーに乗っただけでは、連れりかどうか分からないって言われたんです」

は悔しそうに唇を噛んだ。

「それで、お母さんに話したんです」

「あの話ね」

「はい。あの話し方を聞いて確信しました」

が私を見る。

「お母さんが私に、あんな丁寧な言葉を使うはずないですから」

わず笑いそうになった。

普段から言いたい放題だからこそ伝わった図だった。

「それだけじゃないんです」

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