"白タク墓参り" 第8話
仏壇の隆志と誠にも1杯ずつ供える。
「隆志さんのおかげね」
私はさく呟いた。
美が何も言わず、隣で茶をすすった。
けれど、胸のどこかにはまだ引っかかりが残っていた。
藤波は捕まった。
しかし、糸を引いた沼田はまだにいる。
話の向こうで聞いた、あの粘つく声をいすたびに、喉の奥へさな棘が刺さるようだった。
そのの夕方。
ほうじ茶がまだ温かいうちに、話が鳴った。
警察からだった。
「ああ、奥さん。沼田の件ですがね」
あの、寺へ駆けつけてくれた嵩の警察官の声だった。
「最初は全部否認していたんですが、藤波の供述と録音、それに通話記録を突きつけたところ、次第に言い逃れができなくなりまして」
私は湯のみを置いた。
「それで?」
「全部認めましたよ」
警察官は続けた。
「あなたのを何とかに入れようとしていたこと。以から嫌がらせの張りをしていたこと。藤波を使って権利と実印を取ろうとしたことも」
私はゆっくり息を吐いた。
胸のに残っていたものが、ようやくへていくようだった。
「もう玄関に変な張りが貼られることもないでしょう。再発の件も、度に戻して正式な続きをやり直すことになるそうです」
話を切った、私はしばらくかなかった。
やがて帯のから懐計を取りし、蓋をけた。
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コツ、コツ。
さな音が聞こえる。
その向こうで、隆志が笑っているような気がした。
よくやった。
そんな声が聞こえた気がして、私はしだけ目を細めた。
「お母さん、何を笑ってるんですか」
美が湯のみを持ったまま聞いてきた。
「別に」
「また何か企んでる顔ですよ」
「失礼ね」
「次は絶対、らないに乗らないでくださいよ」
「はいはい」
私が適当に返事をすると、美は呆れたように笑った。
隣では柚がと鉛を広げ、また数字をいている。
今度はの番号ではない。
1、2、3と覚えたばかりの数字を並べ、その横へらしき絵を描いていた。
るい差しが縁側いっぱいに差し込んでいる。
あので窓のに広がっていた暗いとは、まるで違うだった。
私は美の淹れたほうじ茶をんだ。
温かい。
隆志が残した言葉。
誠が残した携帯話。
柚が何気なくいた数字。
そして、普段は憎まればかり叩く美が気づいた、たった度の自然な話し方。
誰か1だけでは、きっとにわなかった。
族はれた所にいても、それぞれが持っていたものをつなげて私を守ってくれた。
私はもう度、仏壇の写真へ目を向けた。
そしてので、隆志へ答えた。
分かっているわよ。
困ったほど慌てない。
誰かに急かされたら、度止まる。
ゆっくりお茶でもんでから考える。
これからは私だけではない。
美へ。
柚へ。
こので続いていく族へ。
あなたの言葉を渡していくから。
私は湯のみを両で包み込んだ。
その向こうで、美と柚の笑い声がなっている。
この声が聞こえるを、私はこれからも守っていく。
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