"水底に沈めた嘘" 第3話
警察はそれを審とは考えなかった。
夫が突然消えたのだから、計を管理する妻が通帳を確認するのは自然なことだった。
ただ、誰も確認しなかったものがあった。
俊助が使っていたポケットベルだった。
俊助が消えたも、ポケットベルの基本料は毎支払われ続けていた。
文名義の通帳から、自引き落としで。
同じに。
同じ額が。
毎、途切れることなく。
だが当、その事実を捜査官が確認することはなかった。
俊助がいつも持っていく釣り具についても、から考えれば自然な点があった。
俊助は釣り竿を必ず2本持っていった。
兄の賢介も、同僚の田もそう証言している。
柳ののに残されていたのは1本。
そしてトラック内のケースにも1本。
本数だけを見れば、きちんと2本揃っていた。
しかし、ケースのには釣り竿とは別のものが入っていた。
弁当箱だった。
その朝、俊助がで用したものだった。
蓋は閉じたままで、のいご飯には度も箸をつけた形跡がなかった。
警察はその事実を記録していたが、特にしなかった。
まず釣りを確保するために竿だけを持っていき、で弁当を取りに戻るつもりだったのだろう。
そう考えられた。
通信記録にも奇妙な点があった。
失踪の曜。
俊助のポケットベルには、公衆話から1件の番号が残されていた。
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警察は発信所までは確認したが、公衆話だったため、誰が番号を入力したのか特定できなかった。
そして失踪当の曜。
文は警察に対し、
「夫が帰らないので、午から何度もポケットベルを鳴らしました」
と説していた。
しかし、に確認された受信記録には、その形跡が残っていなかった。
当の捜査官は、貯池周辺の波状態が悪かったためだと判断した。
基局の受信状況が定だった。
械側の問題だったのだろう。
そう結論づけられた。
もう1つは通報刻だった。
文が警察へ話したのは午7を過ぎてからである。
11の野では、その刻にはすでにが落ちている。没から1半以経っていた。
捜査官は文へ尋ねた。
「いつもなら、何頃にご主は帰宅しますか」
「夕方には帰ります」
「それなら、なぜもっとく連絡しなかったんですか」
文はし考えた。
「釣りが好きなですから。遅くまでいることもあるといました」
そして、さく付け加えた。
「まさか、という気持ちもありました」
その「まさか」という言葉は捜査記録の片隅に残された。
だが、疑われることはなかった。
失踪翌から3、警察は貯池をに規模な捜索をった。
潜士2が入り、ゴムボートで面を調べ、周辺のむらや農も歩いた。
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しかし発見されたのは、トラックと釣り具だけだった。
警察は次第に、俊助が自ら姿を消した能性をく見るようになった。
職の同僚たちに借や女性関係を尋ねたが、決定な話はなかった。
それでも捜査記録を見ると、俊助の融取引を詳しく調べた形跡はなかった。
ポケットベルの記録も分には追跡されていない。
失踪の公衆話の発信者を突き止める試みも、それ以はわれなかった。
約3か。
捜査は事実、止まった。
結論は「期失踪」。
事故を裏付けるものもなく、自ら命を絶ったと判断できる証拠もなく、犯罪を示すものもない。
類ので、俊助は「突然姿を消した男」になった。
兄の賢介は納得しなかった。
何度も警察署へを運び、再捜査を求めた。
「しいがかりがれば、必ず調べます」
そのたびに、同じ答えが返ってきた。
しかし、しいがかりは現れなかった。
だけが過ぎていった。
文は、夫の失踪から3かほど経つと、しずつ常へ戻り始めた。
買い物へる。
所のへ挨拶をする。
俊助の勤務先へ退職続きを頼む。
隣の鈴幸子は、その頃から文の姿にさな変化をじたという。
「しみが消えたということじゃないんです。でも……し余裕がたように見えたんです」
1998の、文はの改修を始めた。
古くなった台所のシンクを交換し、居の壁もしくした。
所のたちは、気分を変えようとしているのだとった。
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