"水底に沈めた嘘" 第8話
文は初めて顔をげた。
「渡辺幸さんを消すことです」
取調が静まった。
「ご主が?」
「はい」
文の話では、俊助がその作業員へ先に依頼していたという。
文自が頼んだのではない。
夫がを消そうとしていた。
それをった瞬、それまでじていたのは裏切りへのりだったが、そこから恐怖に変わったと文は話した。
「このは、必ならを消そうとするなんだといました」
その作業員が帰った、文は俊助のポケットベルへ何度かメッセージを残した。
「選びなさい」
夫に幸との関係を終わらせるよう求めた。
しかし俊助は決断しなかった。
「だから、私が選びました」
伊藤は黙って文を見た。
「何を選んだんですか」
文はし息を吸った。
「作業員をもう度呼びました」
そして依頼内容を変えたという。
は現で渡した。
何をどこで、どのように実するのか。
文は、自分がっている範囲を淡々と話し始めた。
声は震えていなかった。
伊藤は録音が回っていることを確認しながら、最まで遮らず聞いた。
文は、自分がそうした理由について繰り返した。
「怖かったんです」
「俊助さんが先に誰かを消そうとしていたから?」
「はい」
「次は誰だとったんですか」
文はテーブルへ線を落とした。
「私だといました」
そこで供述は度止まった。
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伊藤は取調をると、廊の窓のにった。
の差しが差し込んでいた。
俊助が消えた7の朝。
の向こうで柳ののに釣り竿だけが残されていたにも、が経てば同じようにが差したはずだった。
伊藤はそのも裏付け捜査を続けた。
した作業員が1997に貯池の堤防事へ参加していたことは、当の事記録で確認された。
担当区域は端も含まれていた。
俊助の遺骨が見つかった所となっていた。
しかし、きな問題が残った。
実したとされる作業員は2002にしている。
文が何を指示したのか。
本当に俊助が先に渡辺幸を狙っていたのか。
それを直接るは、もう誰もいなかった。
俊助はくなっている。
作業員もくなっている。
渡辺幸はきていたが、俊助から危害を加える計画を聞いたことはなかった。
文の言葉のうち、どこまでが事実で、どこからが自分を守るための説なのか。
証する段は残されていなかった。
2005。
検察は文を殺に関与した容疑で起訴した。
裁判は翌2006まで続いた。
検察側が提したのは、残されていた音声メッセージ、保険会社への相談記録、俊助名義の座から作業員へ流れた、失踪の文の、そして文自の供述だった。
検察は、これらが1つの流れを示していると主張した。
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方、弁護側は直接証拠のをく訴えた。
文が作業員へ殺害を指示した会話の録音はない。
目撃者もいない。
実したとされる物はすでにしている。
文の供述には、自らに利な内容が含まれている方で、「俊助から危害を加えられる恐怖があった」という説も含まれていた。
それが事実なのか。
から作られた弁なのか。
確認することはできなかった。
2006初め。
第1審の判決が言い渡された。
殺について無罪。
証拠分だった。
裁判所は、状況証拠が複数することを認めながらも、それだけで刑事責任を確定することはできないと判断した。
判決文には、被告の為への徳評価と、刑事裁判で罪を認定するための証は別の問題であるという趣旨が記された。
検察は控訴した。
しかし第2審でも結論は変わらなかった。
直接証拠の欠如。
共犯とされた物の。
そして文の供述を複数の方向に解釈できること。
2006。
無罪判決が確定した。
文は裁判所の階段を弁護士と並んでりた。
報陣がカメラを向けた。
文は顔を隠さなかった。
質問にも答えなかった。
そのままへ乗り込み、扉を閉めた。
兄の賢介は、判決のらせを入院先で聞いた。
話を置いた、い何も話さなかったという。
そばにいた族によれば、賢介はやがて窓のへ目を向け、ただ言だけ呟いた。
「俊助、すまない」
渡辺幸は判決、名古をれた。
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