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"300億を捨てた相場師" 第4話

袋のからてきたのは、古びた通の封筒だった。

表には宛名の代わりに、ただ言だけかれていた。

恵さんへ」

矢島は息をんだ。

「常さんが失踪するいたです」

「なぜこれを?」

「失踪した斎で見つけました」

「6、持っていたんですか?」

千鶴は目を閉じた。

「怖かったのです」

このを警察に渡せば、常が最もに見せたくなかったさが世に晒される。

そううと、どうしても言えなかったという。

「でも、このまま私までんだら、常さんはだけ残して理由もなく消えたたいのままになってしまう」

千鶴の目から涙が流れた。

「あのたいなんかじゃありません。誰よりも、自分が犯した過ちに苦しんでいたんです」

矢島は黙ってを受け取った。

「お願いです。常さんが最に何を考え、どこへったのか……調べてやっていただけませんか」

「分かりました」

矢島はく頷いた。

「必ず調べます」

千鶴は、ようやく肩の荷をろしたように目を閉じた。

病院をると、はまだっていた。

桜井が言った。

「矢島さん。これは、ただの失踪じゃなかったんですね」

「ああ」

矢島は古い封筒を見つめた。

「6分からなかった。なぜ何もかも置いて消えたのか。なぜ失踪に団ったのか」

彼はに覆われた町を見た。

「答えは、あの団にある」

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が終わり、が解けた。

4

の桜が咲く頃、矢島と桜井は県営A団を訪れた。

くすんだ壁。

古い階段。

子供用の自転や植鉢。

6とほとんど変わっていなかった。

管理恵について尋ねると、配の男は記憶を辿るように頷いた。

「ああ、恵さん。いこと203号んでいましたよ。寄りのない方で、最もお1でした」

「その部は今どうなっていますか?」

管理の表が変わった。

「それが……妙なんですよ」

「何がです?」

恵さんがくなって何にもなるのに、賃が払い続けられているんです」

桜井が聞き返した。

「誰もんでいない部の?」

「そうです。毎きちんと。ただ、支払の名は伏せられていました」

矢島はすぐにった。

だ。

恵がいなくなったも、この部だけは残したかった。

管理の許を得て、203号の扉をけた。

く閉ざされていたはずの内は、なほど荒れていなかった。

古びた畳。

さな流し台。

壁際には質素な仏壇が置かれていた。

仏壇のてには、すっかり乾燥してはいたものの、を供えた痕跡が残っていた。

桜井が呟いた。

「誰か来ていたんですね」

賃を払うだけじゃない。掃除をして、も替えていた」

矢島は内をゆっくり見回した。

そして、箪笥の冊の古いノートを見つけた。

くと、几帳面な文字が並んでいた。

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千鶴から渡されたと同じ跡だった。

の字だった。

そこには、付と共に恵への言葉が記されていた。

――恵さん、今もここへ来ました。

――あなたにどうしても詫びたかった。

――私はあなたに何つ恩を返せないまま、あなたを1で逝かせてしまった。

ページをめくる。

――などいくら積みげても虚しいばかりです。

――あなたが貧しい暮らしので私に分けてくれた、あの杯の温かい飯。

――あれに比べれば、私の300億など何の価値もありません。

桜井は黙り込んでいた。

ノートの最くには、さらに決定な文章があった。

――いつか全てを片付けたら、財産もしがらみも何もかも捨てて、私はこの部に帰ってきたい。

――ここであなたのそばにいながら、残りの々を静かに過ごしたい。

――それが私の最の願いです。

矢島は、その文字を見つめた。

「これだったのか……」

が財布も通帳もも残して消えた理由。

彼にはもう、それらが必なかった。

財産にも、台の敷にも、社会位にも未練がなかった。

ただ、自分が最も貧しかった頃にきたこの部へ戻りたかった。

「梶さんはここへ帰ってきたかったんですね」

桜井が呟いた。

恵さんのいる所へ」

「ああ」

矢島は頷いた。

だが、その直だった。

桜井が部の奥を見てきを止めた。

「矢島さん」

畳の部が、わずかに浮いている。

2で持ちげると、そのさな点検があった。

を懐灯で照らす。

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