"16回の拒否" 第4話
「嫌がるほど、綺麗に撮ってあげたいんですよ」
そう言いながら、さらに得そうな顔になる。
「僕の写真を見れば、『撮ってもらってよかった』ってなりますから」
みさ子がカメラから顔をそらした。
その瞬だった。
カシャッ。
シャッターが切られた。
みさ子は驚いて黒田を見る。
「今、撮りましたか?」
「ええ。自然ないい表でしたよ」
黒田は悪びれることもなく液晶画面を確認した。
「ほら、も綺麗でしょう」
みさ子は写真ではなく、黒田の顔を見た。
「載せないでくださいね」
「分かっていますよ」
黒田は頷いた。
だが、黒田が「分かった」とっていた内容は、みさ子が伝えたものとはまるで違っていた。
黒田はこう解釈していた。
みさ子は写りの悪い写真を載せられたくない。
名や所をられるのが。
特定数に見られるのが怖い。
それなら、自分がそのを取り除いてやればいい。
けれど、みさ子が伝えていたことはつだけだった。
自分が写った写真をSNSへ載せてほしくない。
ただ、それだけだった。
みさ子は、断ることが苦なではなかった。
仕事でも所付きいでも、自分の考えは比較はっきり伝えてきた。
嫌なことは嫌だと言えば、抵のには伝わった。
ところが黒田には、その言葉が届いていかない。
「名はしません」
「変な写真は載せません」
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「限定公なら丈夫です」
「皆さんびます」
みさ子が何を言っても、黒田は別の答えを返してくる。
そのたびに、みさ子は説をやり直さなければならなかった。
名の話ではない。
写真の来の話ではない。
誰が見るかという話でもない。
理由を話せば分かってもらえるとって、以の来事まで説した。
ところが理由を話すと、今度はその理由そのものを否定された。
「そんなに危ないものではありませんよ」
「配しすぎです」
「げさですよ」
断るために話した理由が、断りを取り消すための材料に使われていく。
みさ子は静かに息を吐いた。
嫌だと言っているのに、「嫌ではない理由」を相が探してくる。
こんなに疲れることなのかと、初めてじた。
しれたところでは、黒田が液晶画面を見ながら笑っていた。
悪のある顔ではない。
本気で、自分は良いことをしているとっている顔だった。
みさ子は、それが番厄介なのだとじた。
悪のあるなら、はっきりることもできる。
だが黒田は、親切のつもりでいる。
こちらがくれば、自分がの狭いであるかのような空気になりかねない。
みさ子は、先ほど拾った赤い葉を着のポケットへ入れた。
今はもう、できるだけ黒田のカメラのへないようにしよう。
そのはまだ、それだけで済むとっていた。
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休憩を終えたは、再び遊歩を歩き始めた。
赤や黄に染まった々のを、参加者たちはゆっくりんでいく。気は良く、の葉の隙から差し込む差しも柔らかかった。
「今は本当に気持ちいいですね」
「この辺りまで来ると、空気も違いますね」
そんな会話を交わしながら歩いていたが、発して数分もしないうちに黒田が声をげた。
「皆さん、ちょっと待ってください」
がを止める。
黒田はし先にある葉を指さした。
「ここ、背景が綺麗です。皆さんで1枚撮りましょう」
参加者たちは顔を見わせたものの、結局言われるまま々のへ並んだ。
黒田はカメラを構える。
「もうしへ寄ってください」
全員がしへく。
「いや、今度は葉が隠れますね。し戻ってください」
またく。
「ろの方、し顔をしてください」
「の方は半歩へ」
1枚撮るだけのために、全員が何度も位置を変えた。
ようやくシャッターが鳴った。
ところが黒田は液晶画面を確認すると、首を傾げた。
「ちょっと表がいですね」
1の参加者が苦笑した。
「黒田さん、さっきから止まってばかりですよ」
「せっかく来たんですから、いい写真を残さないともったいないでしょう」
「1枚撮れれば分ですよ」
「1枚でも来が悪ければがありませんから」
黒田にとって、皆が先へみたがっていることはきな問題ではなかった。
今は面倒でも、になれば謝する。
その考えは朝から変わっていない。
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