"16回の拒否" 第6話
「せっかくですから、皆さんのお弁当を真んに寄せてください」
参加者たちは仕方なく、自分の弁当をかし始めた。
黒田は構図を確認する。
「そのペットボトルは写さない方がいいですね」
1本のペットボトルがろへ移される。
「ビニール袋も見えないところへ」
袋も隠される。
「その弁当の蓋が目ちますね。端へ寄せましょう」
「そちらのおかず、もうしにせますか?」
事を始めるはずだった参加者たちは、黒田の指示に従って弁当を並べ直した。
しばらくして、誰かが慮がちに聞いた。
「黒田さん、もうべてもいいですか?」
「あとしです」
黒田はファインダーを覗き続ける。
「せっかくなら綺麗に残した方が、皆さんも嬉しいでしょう」
ようやく1枚を撮り終える。
参加者たちは、ほっとしたように箸を持った。
だが黒田は続けた。
「次は、皆さんがべているところを撮ります」
1の女性が困ったように笑う。
「べてるところって、あまり綺麗に写らないんじゃないですか?」
「丈夫です。自然な雰囲気を撮りますから」
黒田はしれたところへち、参加者たちへカメラを向けた。
皆がべ始める。
カシャッ。
カシャッ。
何度もシャッター音が鳴った。
「そちらの方、箸で顔が隠れました。もう度、今のおかずを持ってもらえますか」
箸を止めた男性が、言われた通りに同じおかずを持ちげる。
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「会話は続けてください。カメラは気にしなくていいです」
気にしなくていいと言われても、誰もが黒田のきを識していた。
みさ子は、黒田から顔を背けるような位置に座っていた。
それを見た黒田は、し横へ移した。
「さん、もうしこちらを向いてください」
みさ子は箸を置いた。
「べているところは撮らないでください」
黒田は軽く笑った。
「元は写さないようにしますよ」
「元の問題ではありません」
「では横顔だけにします」
「そういうことではなくて、今は撮らないでほしいんです」
みさ子は、今度こそはっきりと言った。
黒田は度カメラをろした。
みさ子が何を嫌がっているのか、自分なりに理解したつもりだった。
女性なのだから、事の顔を撮られるのが嫌なのだろう。
ならば、べている瞬を避ければいい。
それなら問題は解決する。
みさ子が隣の女性と話し始める。
箸を置き、ふっと笑った。
その瞬。
カシャッ。
みさ子の笑顔が消えた。
「黒田さん」
「今はべていませんでしたよ」
黒田は、問題をうまく避けたという顔をしていた。
「撮らないでほしいと言いました」
「でも事の姿ではありません」
「私は、今は撮られたくないんです」
黒田はし困ったような顔をする。
「そこまで気にしなくても、綺麗に撮れていますよ」
みさ子は、それ以何も言わなかった。
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言葉を増やせば、また違う解釈をされる。
「事だから嫌」
「元が嫌」
「写りが嫌」
そうではない。
ただ、「撮らないでほしい」と言っている。
けれど、その番簡単な言葉だけが黒田には届かなかった。
隣に座っていた藤本が、空気を変えるように黒田へ声をかけた。
「黒田さんも、そろそろべた方がいいですよ」
「僕はで丈夫です」
黒田は笑った。
「こういう記録は、で価値がるんですよ」
「そうですか」
藤本はそれ以何も言わず、自分の弁当へ線を戻した。
黒田は、その反応を「写真に興がないなのだ」と受け取った。
しばらくして事が終わると、今度は藤本がスマートフォンを取りした。
「皆さん、1枚だけ撮ってもいいですか?」
女性たちは顔を見わせる。
「1枚ならお願いします」
藤本は、撮るに続けた。
「SNSには載せません。写っている方にだけ送りますね」
それを聞いて、参加者たちが頷いた。
藤本は1度だけシャッターを押した。
そして撮った直、全員へ画面を見せる。
「これで丈夫ですか?」
「はい」
「丈夫です」
全員が確認したところで、藤本はスマートフォンをポケットへ戻した。
黒田はその様子を見ながら、内でった。
――あれでは自然な瞬なんて撮れない。
撮るに許を求めたら、誰もがカメラを識してしまう。
撮ったにいちいち見せていたら、そのの流れも止まる。
写真を分かっていないの撮り方だ。
そうった。
けれど、藤本のスマートフォンを向けられた参加者のには、誰として顔を背ける者はいなかった。
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