"16回の拒否" 第13話
説を続けようとした、そのだった。
カシャッ。
黒田はシャッターを切った。
女性はし驚いた顔をしている。
黒田は液晶画面を確認する。
「ほら、綺麗に撮れましたよ」
何も変わっていなかった。
ハイキングサークルで、あれだけ言われたも。
みさ子から16回も拒否されたと聞かされたも。
自分自が藤本に向かって、
「やめてください」
と1度言い、それがそので尊されたも。
黒田のにある考えは変わらなかった。
自分が良いとう写真なら、相も最にはぶ。
自分が危険ではないとうことなら、相も配する必はない。
自分に悪がないのだから、それほど問題ではない。
黒田が失ったのは、ハイキングサークルで写真を撮る会だけではなかった。
もっときなものだった。
「このなら、自分のを尊してくれる」
そうってもらえる信頼だった。
みさ子は、写真そのものが嫌いだったわけではない。
藤本が、
「1枚撮ってもいいですか」
と尋ねたには承している。
集写真にも入っている。
ただ、自分が写った写真を、らないまで見るSNSへ載せられたくなかった。
それだけだった。
写真が綺麗に撮れていることと、その写真を公していいことは別だった。
名をかなければいい。
限定公なら問題ない。
綺麗に写っている。
皆が褒めている。
広告
本もでぶ。
それらはすべて、黒田が自分の側から考えた理由だった。
けれど、そのどれつとして、
「だから本のを無していい」
という理由にはならない。
自分にとっては何でもない写真でも、写っている本にとっては違う。
誰といたか。
どこへかけたか。
いつそこにいたか。
何をしていたか。
写真には、本が言葉にしていない報まで写り込む。
1度SNSへた画像が、誰に見られるかは分からない。
誰かが保する。
族へ送る。
へ転送する。
そこからさらに別のへ渡る。
自分の投稿を削除したとしても、消えるのは自分が管理している所だけだ。
黒田自が、
「サークルのだけだから」
とっていた写真は、わずか数でサークルとは無関係のみさ子の友へ届いていた。
そこに悪はなかった。
だからこそ、度広がったものを止めるのは難しかった。
写真を撮るに確認する。
公するに、改めて本へ尋ねる。
「嫌だ」
と言われた、その言葉がどの程度本気なのかを自分の基準で判定しない。
相が笑っていたから。
っていなかったから。
写真を見たから。
普通に会話していたから。
そんな理由で、にされた拒否が消えることはない。
みさ子は笑いながら歩いていた。
けれど、黒田へ向かっては、
「載せないでください」
と言っていた。
広告
黒田はその笑顔を見て、言葉を無した。
みさ子が顔を背けたには、
「本気で嫌なら顔を背けるはず」
と自分で言いながら、その顔を背けた瞬を撮した。
自分に都のいい部分だけを拾い続ければ、どれだけ確な拒否も届かなくなる。
本当は、理由すら必なかった。
「載せないでください」
「分かりました」
それだけで終わる話だった。
藤本が黒田へスマートフォンを向けた、それは証されていた。
「サークルのSNSへ載せてもいいですか?」
「やめてください」
「分かりました」
たった1回。
数秒で終わった。
藤本は、
「でも綺麗に撮れますよ」
とは言わなかった。
「名はしません」
とも言わなかった。
「皆さんも見たがるといます」
とも言わなかった。
なぜ嫌なのか説を求めることさえしなかった。
本が望んでいない。
それだけで、スマートフォンをろした。
黒田は、自分の「やめて」は1度で尊された。
それでも、みさ子の「やめて」を16回聞いても、自分が同じことをすべきだったとは理解できなかった。
域交流イベントの会で、黒田は撮ったばかりの写真を女性へ見せていた。
「ほら、背景も綺麗でしょう」
女性は画面を見るより先に、もう度言った。
「ですから、SNSには載せないでくださいね」
「分かっていますよ」
黒田は笑った。
その「分かっています」が、本当に相の言葉を理解したものなのか。
それをるのは、これからの黒田のだけだった。
しかしなくともその点では、黒田はまだ、自分が変わる必があるとはっていなかった。
自分は悪いことをしていない。
善でやっている。
綺麗に撮っている。
最にはばれる。
その考えのにいる限り、目ののが何度「嫌だ」と言っても、その言葉は黒田ので別のへ置き換えられてしまう。
と関わる、本当に必なのは、相の拒否に納得することではない。
自分なら平気なのに、と理解できなくてもいい。
なぜそこまで嫌なのか、腑に落ちなくてもいい。
それでも相が望まないなら、やめる。
たったそれだけのことだった。
ハイキングサークルの集写真には、そのも参加者たちの笑顔が残った。
藤本が撮った、し傾いた、ごく普通のスマートフォン写真だった。
葉は黒田の写真ほど鮮やかではない。
も完璧ではない。
構図も特別ではなかった。
けれど、そこに写るたちは誰も顔をそらしていなかった。
撮られることを承し、誰へ送られるかをり、自分で「いい」と決めてカメラのにっていた。
だからこそ、誰かに「自然に笑ってください」と指示されなくても、皆が自然に笑っていた。
黒田が最まで理解できなかった答えは、写真の技術のにはなかった。
レンズでもない。
構図でもない。
でもない。
それは、カメラを向けるよりに、目のにいるの言葉を聞くことだった。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
妊娠8か月の私に28人分のおせちを作らせた義母
妊娠8か月の優奈は、義母から「家族6人分」と聞かされていたおせち作りを引き受ける。だが台所に用意されていたのは、販売用の28人分。さらに義妹の店名が入った重箱には、優奈の名前が製造責任者として無断で使われていた。 体調を崩して病院へ向かった優奈は、録音や注文表を証拠として残す。予定より早く帰宅した夫・康平は、母から合鍵を取り上げ、親戚を帰らせるが、やがて妻の署名や免許証、退職金まで利用した500万円の融資計画が発覚する。 康平は家族へ怒るだけでなく、母の越境を長年黙認してきた自分の責任とも向き合う。一方の優奈も、誰かに救われるのを待たず、自分の名前、仕事、暮らしを自ら守り始める。 28人分のおせちから始まった騒動を通して、「家族のため」という言葉に奪われていた選択権を取り戻す夫婦の再生と、境界線の大切さを描いた物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4万字5 1357 -
完結第12話
継母が私に遺した「価値ゼロ」の古民家
継母・良子の死後、養女の明日香に遺されたのは、山奥に建つ資産価値ゼロの古びた一軒家だけだった。一方、実子である高志と絵美子は、都内の高級住宅6軒を相続し、介護を続けてきた明日香を「他人」と嘲笑う。 母に愛されていなかったのか――。傷つきながらも家を片づけに向かった明日香は、不自然に敷き直された畳と、その床下に封印された巨大な金庫を発見する。母が最期に託した銀色のペンダントは、その扉を開くための鍵だった。 金庫の中に残されていたのは、莫大な財産と「愛する娘へ」と記された一通の手紙。そこには、明日香を強欲な実子たちから守るため、良子が密かに進めていた計画が明かされていた。 高級住宅を手に入れ、裕福な暮らしに浮かれる兄姉。しかし、彼らが「財産」だと信じた6軒には、決して逃れられない秘密が隠されていた――。 血のつながりを盾にする家族と、行動によって愛を遺した母。傷ついた養女が母の本心を知り、自分の人生を取り戻していく、遺産と家族をめぐる逆転の物語。人生逆転|真相|親子関係|金銭問題1.8万字5 867 -
完結第11話
孫の一言で取り戻した通帳
「ばあばの通帳、ママのバッグにいつも入ってるよ」 年金支給日の朝、6歳の孫が何気なく口にした。 嫁の箸が止まり、黒いバッグから緑色の通帳ケースが覗いていた。 2年前、骨折した私に代わり、毎月4万円だけ下ろす約束で預けたものだった。 「今日は自分で記帳してくるわ」 そう告げると、嫁の顔から血の気が引いた。 近所の信用金庫で、1年8か月ぶりに通帳を開く。 4万円だった出金は、いつしか6万、8万、10万円へ増えていた。 そして今日も、私が朝食を取る前に8万円が引き出されていた。 私は何も問い詰めず、キャッシュカードを停止した。 その日の午後、嫁は青ざめて帰宅した。 さらに翌日、ゴミ箱から落ちたATM明細を広げた瞬間――私はその8万円が生活費ではなかったと悟った。人生逆転|祖父母と孫|嫁姑|第二の人生|金銭問題1.6万字5 1206 -
完結第15話
正月、娘に熱汁を浴びせた義兄へ110番
娘がグラスを1つ割っただけで、義兄は笑いながら熱い汁物を8歳の娘へ浴びせた。 しかも泣き叫ぶ娘を前に、義母も親族も止めるどころか「正月から大げさ」と笑っていた。 夫まで兄を庇い、「今日は丸く収めよう」と私に黙るよう求めてきた。 私は娘の腕を流水で冷やしながら、警察署長を務める実兄へ電話した。 「お兄ちゃん、今度はもう手加減しないで」 だが兄が私に命じたのは、身内の力を使うことではなく、「今すぐ110番して、証拠を全部残せ」ということだった。 その言葉で私は、義実家の天井に防犯カメラがあることを思い出した。 警察が映像を確認した直後、それまで「手が滑っただけ」と笑っていた義兄の顔色が一変する。 そして夫まで知らなかった“決定的な場面”が映っていたことで、あの正月に笑っていた全員の立場がひっくり返り始めた。怒り|嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 1515 -
完結第12話
夜勤明け、鍵を替えられた私の静かな反撃
30時間の夜勤を終えて帰宅した看護師・南を待っていたのは、義母によって交換された玄関の鍵だった。「反省したら土下座しに来なさい」という連絡に、南は「そうですか。では、さようなら」とだけ返信する。 だが、義母と無職の夫は知らなかった。その高級マンションは、南の勤務先が契約する借り上げ社宅であり、家賃も生活費もすべて南の収入で支えられていたのだ。 南は騒がず、締め出しを自白したSNS投稿を保存。社宅の退去手続き、電気・水道・ガスの解約、弁護士への離婚依頼を淡々と進める。月曜日の午後5時、部屋の明かりが消え、管理会社と警察が玄関に現れた。 自分を家政婦のように扱った家族との関係を断ち切り、誇りある仕事と人生を取り戻す女性の、静かで痛快な逆転物語。因果応報|人生逆転|嫁姑|親子関係1.9万字5 4347 -
完結第12話
嫁の「逃げて」で暴かれた妻の計画
「お義父さん、今すぐ車を降りてください。絶対に奥さんのところへ戻らないで」 妻との旅行中、ほとんど電話をしてこない嫁から突然そう告げられた。 「食べ物も薬も、絶対に口へ入れないでください」 私は妻が差し出した、水なしで飲める白い錠剤を思い出した。 トイレへ行くふりをして車を降り、観光バスの陰まで必死に走った。 やがて駐車場へ出てきた妻は、笑顔を消し、鋭い目で私を捜し始めた。 嫁の車へ逃げ込むと、一通の誤送信メールを見せられた。 《サービスエリアを過ぎたら薬を飲ませる。お兄ちゃんからそっちに連絡を入れておいて》 その夜、妻が持ってきた私の旅行鞄を開けると、底から見覚えのない書類が出てきた。 山間部にある介護施設のパンフレット。 入所予定者の欄には、私の名前と病歴が記されていた。 《認知機能の低下》《本人に病識なし》《今週末に入所予定》 そして保護者欄には、息子でも妻でもない、私の知らない男の名前が書かれていた。人生逆転|夫婦|真実|裡の顔1.7万字5 963 -
完結第10話
父の料亭を継いだ翌日、板長が全員連れて独立
「料理も作れないあんたじゃ、この料亭も終わりだな」 父の葬儀を終え、私が老舗料亭を継いだ翌朝だった。 板長は12人の従業員を連れ、駅前で独立すると宣言した。 「客も仕入れ先も、全部俺についてくる」 私は引き止めず、「分かりました」とだけ答えた。 13人が去った板場には、包丁一本残っていなかった。 ところが予約帳を調べると、宴会7件に謎の《保留》が記されていた。 新店舗の契約日は、父が倒れる3週間前。 酒屋にはすでに「先代は長くない」と話していたという。 さらに父の金庫から、黒ずんだ一冊のノートが見つかった。 過去に辞めた従業員の名前、その横には何度も同じ文字が残されていた。 《黒田君》 そして父が亡くなる4日前のページには、《黒田誠治 断る。二度目》の一行があった。 その下に書かれた短い文章を読んだ瞬間、私は板長を追わなかった父の本当の意図を知った。人生逆転|金銭問題|修羅場1.5万字5 1620 -
完結第10話
俺を脅し続けた同級生が、留守中の家で出会った男
「1か月後までに100万円用意しろ。無理なら、その犬がどうなるか分からないぞ」 無職の俺から金を奪い続けるのは、中学時代から俺をいじめていた同級生だった。 両親を亡くし、相談できる相手もいない俺は、言われるまま20万円以上を渡していた。 そんな雨の日、捨て犬を拾ったことで、無愛想な大男・犬塚と少女メイに出会った。 事情を聞いた犬塚は、喧嘩を仕掛ける代わりに一枚の封筒を置いた。 中に入っていたのは、海外企業の求人票と航空券。 「犬を連れて海外へ行け。その代わり、この家の鍵を貸せ」 俺が国外へ移って1か月後、同級生から映像付きの電話が来た。 俺の家に停まっていた高級車は、落書きされ、ミラーまで壊されていた。 『100万円じゃ足りねえ。今度は1000万円用意しろ』 「その車、俺のじゃないよ」 笑っていた同級生の背後から、低い声がした。 「俺の車に、何してくれてんだ?」人生逆転|怒り|修羅場1.5万字5 1210