みかん小説
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"止まったカードと空の家" 第12話

「ここに猫のベッド置こうかな」

「まず審査通ってからね」

「絶対来るよ」

「もう決めてるじゃん」

「だって、この広いし」

あやはリビングを見回した。

「ママと私だけじゃ、ちょっと余ってるもん」

「贅沢なこと言うね」

「だから猫が来たらちょうどいい」

私はキッチンでお湯を沸かした。

マグカップを2つす。

あやにはココア。

私はコーヒー。

んでいたマンションでは、正文の帰宅を気にして計を見る癖があった。

は見ない。

誰かの帰りを疑いながら待つ必はない。

スマートフォンには弁護士からい連絡が入っていた。

正文から、

「いつかあやが会いたいと言ったには連絡してほしい」

と申しがあったという。

私は画面をしばらく見た。

ならりが湧いたかもしれない。

今は、し違う。

許したわけではない。

忘れたわけでもない。

正文がしたことによって、あやが傷ついた事実は消えない。

けれど、この先あやが成し、自分ので父親に会いたいとが来るかもしれない。

そのまで私のを塞ぐつもりはなかった。

私は弁護士へ返信した。

『娘本が希望したは、そのに改めて検討します』

送信。

それだけだった。

「ママ」

「ん?」

あやがココアをみながら私を見る。

「幸せ?」

唐突な質問だった。

私はし考えた。

正文と結婚したも幸せだった。

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あやがまれたは、もっと幸せだった。

だからは簡単ではない。

幸せだったがあるからといって、ずっと続くとは限らない。

逆に、ひどく傷ついたからといって、その先まで幸だと決まっているわけでもない。

「幸せだよ」

私は答えた。

「本当?」

「うん」

「私も」

あやは満そうに笑った。

私は娘の顔を見ながら、あの浮気旅の朝をした。

スーツケースを持ち、楽しそうにていった正文。

「お産買ってくるよ」

そう言っていた。

本当にあの

正文は自分が帰る所を失うとはっていなかっただろう。

美津も、自分のがなくなるとは考えていなかったはずだ。

私だって、その数週までは、夫と親友を同に失う未来など像していなかった。

は、たったつの裏切りできく変わる。

けれど、壊れたに何を選ぶかは、自分で決められる。

私はすることを選ばなかった。

正文を追いかけることも。

美津に泣いて理由を聞くことも。

「私の何が悪かったの」

と自分を責めることもしなかった。

証拠を集めた。

娘を守った。

た。

しい活を作った。

もちろん、あのの私のすべてが正しかったとはわない。

りの勢いで正文の荷物を美津のへ送ったことなど、今振り返ればもっと静な方法もあった。

それでも、あのの私は必だった。

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切な2に同に裏切られ、それでも娘のではっていなければならなかった。

だから今は、当の自分を責める気にはならない。

よくやったとう。

泣きながらでも証拠を残した。

震えながらでも婚を決めた。

怖くてもしいを買った。

そのつが、今につながっている。

数週

正式な譲渡続きを終え、の猫がへやってきた。

最初の数具のへ隠れていた。

あやがづきすぎると逃げる。

私がご飯を置いても、こちらがれるまでべない。

丈夫かな」

あやは配していた。

「急がなくていいよ」

私は言った。

「この子にもが必なんだよ」

それは猫に向けた言葉であり、どこか自分たち親子にも向けた言葉だった。

しい所。

しい暮らし。

傷ついた気持ち。

全部すぐに慣れる必などない。

1週

2週

しずつ猫は姿を見せるようになった。

ある夜。

ソファで本を読んでいたあやの隣へ、猫が初めて自分から乗った。

「ママ!」

声をしかけ、あやは慌ててを塞ぐ。

私も声で答えた。

「よかったね」

あやはかないよう必になりながら、満面の笑みを浮かべていた。

猫は丸くなり、やがて眠った。

私はその景をキッチンから眺めた。

静かな夜だった。

嘘もない。

疑いもない。

帰ってこない夫を待つ必もない。

ただ娘と、しく加わったさな族がいる。

私は窓のを見る。

いつか正文が、自分のしたことを本当に理解するが来るのかもしれない。

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