"消えた女将と800万の通帳" 第6話
やがて、疑いは義子へ向かった。
「最初から数字ごまかしてたんちゃうか」
繁盛しているように見せかけた。
売があるように装った。
自分を騙して600万円を取った。
そんな考えがかられなくなった。
義子はを譲ったも、々美子の定へ顔をしていた。
ある午。
義子が定からてくると、に本がっていた。
「女将さん」
顔がかった。
「どうしたん?」
「商売、駄目なんです」
義子はし驚いた。
「最初はそんなもんやって。客もしいに慣れるまでかかるし」
「違います」
本は歩づいた。
「3かずっと売落ちてるんです」
「……」
「半分ですよ」
義子は眉を寄せた。
「もうちょっとよくしてみたら?」
その言葉で、本の顔が変わった。
「これ、詐欺ちゃうんですか?」
義子の表から笑みが消えた。
「何?」
「繁盛してるやから600万払ったんです。なのに買った途端に客半分って、おかしいでしょう」
「私がやってたは繁盛してた」
「じゃあ、なんで俺になったら半分になるんですか!」
「商売はやり方次第やろ」
「厨も同じや! メニューも値段も同じや!」
本の声がに響いた。
周囲のから何か顔をした。
定ので、美子もガラス越しに見ていた。
義子も引かなかった。
「契約あるやろ。引き継ぎも全部した」
「返してください」
「無理や」
「600万ですよ!」
「私が騙した証拠あるん?」
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本は拳を握った。
「このまま返さんかったら、ただじゃ済みませんよ」
言い残し、へ戻っていった。
それ以。
義子が定へ来るたび、本はへてきた。
「返してください」
「無理や言うてるやろ」
「詐欺や」
「詐欺ちゃう」
同じやり取りが繰り返された。
周囲の主たちも、何度も目撃した。
方、では武夫の求がさらに激しくなっていた。
「800万どこや!」
「言わへん」
「せ!」
「さん!」
武夫はを探すようになった。
引きし。
タンス。
義子の鞄。
携帯話まで取りげ、を確認した。
だが通帳はない。
美子の定に預けていたからだった。
義子は2方向から追い詰められていた。
本は600万円を返せと言う。
武夫は800万円を全部せと言う。
義子にとっては、そのどちらも渡せないだった。
2009。
義子は定へ来る回数まで減った。
話にもないが増えた。
ある夜。
珍しく義子から美子へ話があった。
「姉さん」
「どうしたん?」
返事がない。
「義子?」
話の向こうから、さく息を吸う音が聞こえた。
「最、ほんまにしんどい」
「武夫?」
「……」
「本さん?」
義子は答えなかった。
「何があったん?」
しばらく沈黙が続いた。
「このままやと、えらいことになりそうや」
美子の背筋がえた。
「何言うてんの。今どこおる?」
「なんでもない」
「義子」
「ごめん。もう切るわ」
話は切れた。
美子は何度かかけ直した。
義子はなかった。
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2009914。
そのの午。
義子は美子の定へち寄った。
を譲ってからは、毎来ることはなくなっていた。2、3、には4空くこともある。
美子はいつものようにコーヒーを淹れた。
「珍しいな。昼に」
「ちょっとくまで来たから」
義子はカウンターの隅に座った。
美子はすぐに異変に気づいた。
以より痩せている。
目のが暗い。
そして、爪のが黒ずんでいた。
「顔悪いで」
「最、寝られへんだけ」
「武夫とまた揉めてんの?」
義子は答えず、コーヒーをんだ。
普段の義子なら、夫への満を吐きしていた。
本との揉め事も話した。
だがこのは違った。
美子が話す。
義子は頷く。
々さく笑う。
自分からはほとんど話さない。
さらに美子が気になったのは、義子が何度も計を確認していたことだった。
「何か予定あるん?」
「いや」
「さっきから計見てるやん」
「ちょっとな」
1ほど座った、義子は鞄をにちがった。
「姉さん、もうくわ」
「もう?」
「うん」
入へ向かう。
義子は引き戸にをかけ、し振り返った。
「ありがとう」
美子は笑った。
「何がありがとうやねん」
義子も笑った。
しかし、その笑顔にはいつもの力がなかった。
「また来いや」
「うん」
ガラス戸が閉まった。
それが、美子が義子を見た最になった。
同じの夕方6頃。
義子が自宅くのを歩いている姿を、所の民が見ていた。
隣には夫の武夫。
2は並んで歩いていた。
鳴りっている様子もない。
普通の夫婦が夕方にし散歩しているように見えた。
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