"湖底の白衣" 第4話
底に、自が沈んでいた。
鈴はライトを体へ向けた。
錆が広がり、が窓やドアの隙から伸びていた。それでもの基本な形は残っており、1970代の国産に詳しい鈴には見覚えがあった。
トヨタ・コロナ。
そうった瞬、胸の奥がざわついた。
底のはきく横転していなかった。
斜面の途で比較まっすぐな姿勢を保ち、まるでそこへ置かれたように沈んでいた。
鈴は壊れた窓のくへライトを向けた。
魚が内へ入り、またていく。
の姿は見えなかった。
しかし、勝にへ入ることはしなかった。
何も沈んだには、事故や事件に関係する証拠が残っている能性がある。
鈴は持っていたカメラで、体を複数の角度から撮した。
位置を確認し、浮した。
岸へ戻ると、すぐ元警察へ連絡した。
「の底にがあります。かなり古いです」
最初、話を受けた係員は半信半疑だった。
芦ノから古い物が見つかること自体は珍しくない。
しかし鈴が潜経験や、の状態を具体に説すると、警察も確認することになった。
数、警察のボートが現付へ到着した。
専のダイバーが潜る。
しばらくして無線が入った。
「両を確認しました。トヨタの乗用とわれます」
さらにナンバープレートの部が読み取れた。
広告
その番号が照会された、警察内部に緊張がった。
21。
19731215に京から消えた。
田恵美子が所していたのトヨタ・コロナだった。
当、若警察官として恵美子の事件に関わっていた本田警部にも連絡が入った。
定がづいていた本田は、その名を聞いた瞬に言葉を失った。
忘れたことなどなかった。
全国へ配しても見つからなかった。
何千件もの報を確認しても、すらつかめなかった女医。
そのが、芦ノの底にある。
本田は現へ向かった。
ボートのから静かな面を見つめた。
しかし、所をればるほど疑問は増えた。
「どうして、ここなんだ」
恵美子が最にいたクリニックから、芦ノまではかなりれている。
往診先として考えられていた所とも違う。
自宅へ戻るでもない。
京からへ向かい、いくつものを通らなければ到着しない所だった。
1973の捜査では、恵美子がこのまで来た能性などほとんど検討されていなかった。
は約15メートルの所にあった。
21沈んだを壊さず引きげるには、専の技術が必だった。
警察は難回収の経験を持つ業者へ協力を依頼した。
作業には3をした。
ダイバーは内へを入れず、体のフレームへ慎にケーブルを固定した。
広告
報を聞きつけた報陣や見物が岸辺へ集まった。
そのには、かつて事件を担当した退職警察官もいた。
やがて面がきく揺れた。
ゆっくりと、錆びた根が現れた。
続いて窓枠。
ドア。
体全体がから姿を現した。
21の活によって、だった塗装はほとんど見るもなかった。
属には錆が広がり、が垂れがっていた。
それでも、本田には分かった。
「違いない」
あの、恵美子が乗ってただった。
体から量のが流れ落ちた。
警察はすぐに周囲を規制し、鑑識作業を始めた。
助席から、古い医療バッグが見つかった。
革は傷んでいたが、には診療に使っていた器具や処方関係の類が残っていた。
グローブボックスからは検証と保険関係の類がてきた。
さな帳もあった。
ページには、197312以の患者の予定までき込まれていた。
しかし、内をどれほど調べても見つからないものがあった。
田恵美子本だった。
骨はなかった。
もなかった。
内に量の血痕や激しい争いの跡も確認されなかった。
運転席もきく乱れていない。
「じゃあ、本はどこにいるんだ」
誰かが呟いた。
が見つかれば、21の謎が解ける。
誰もがそうっていた。
ところが実際には逆だった。
恵美子がいないの発見によって、事件はさらにい謎へ変わってしまった。
体の詳しい調査が始まった。
腐の状態。
の堆積。
の付着。
広告
おすすめ作品
-
完結第13話
25年目の自白状
1982年、群馬県安藤市。雑貨店を営む佐藤大吾の9歳の息子・健二が、雨で増水した川のそばで姿を消した。 現場には健二の運動靴が残され、下流では赤い帽子も見つかった。警察は川への転落事故と判断するが、大吾だけは納得できなかった。あの日、黒い車に乗せられた赤い帽子の少年を見たという証言があったからだ。 しかし捜査は進まず、妻の三重子も「私には選択肢がなかった」という謎の言葉を残してこの世を去る。 息子も妻も失った大吾は、それでも25年間、健二の部屋をそのまま残し、帰りを待ち続けた。 そして2007年、差出人不明の黄色い封筒が届く。 そこに書かれていたのは、たった一文。 「あなたの息子は、自分のものではない人生を生きました。」 25年前の川の事故、東京へ消えた黒い車、妻が抱えていた秘密。 すべてがつながった時、父は息子が奪われた本当の理由を知ることになる――。ミステリー|真相|行方不明1.9萬字5 38 -
完結第13話
消えた女将と800万の通帳
大阪・難波の路地裏で、安くて温かい料理を出す「3000円酒場」。 女将の中村義子は、うどん屋から店を立て直し、常連たちに愛される繁盛店を作り上げた。だがその裏で、働かない夫・武夫に売上を持ち出され、心身ともに追い詰められていた。 やがて義子は店を800万円で手放し、小さな部屋で静かに人生をやり直そうと決意する。 しかし、その金を狙っていたのは夫だけではなかった。店を買った男もまた、思うようにいかない経営に苦しみ、義子へ「金を返せ」と迫るようになる。 そして2009年9月14日。 親友の定食屋で「ありがとう」とだけ残した義子は、その日の夕方、夫と並んで歩く姿を最後に忽然と姿を消した。 夫か、それとも店を買った男か。 2人の容疑者が浮かび上がる中、真相は5年間闇に沈み続ける。 そして2014年秋。大阪から遠く離れた埼玉の荒れ地で、止まっていた時間が突然動き出す――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 130 -
完結第13話
恩に沈む猛獣舎
2002年、兵庫県宝塚市の小さな私設動物園で、ベテラン飼育員・郡山安が忽然と姿を消した。 猛獣舎に残されていたのは、きれいに揃えられた黒い長靴と、日付だけが書かれた飼育手帳。扉は内側から施錠され、そばには長年彼が世話をしてきたベンガルトラがいた。 町ではすぐに噂が広がった。 「あの飼育員は、虎に呑み込まれたのではないか」 しかし獣医は断言する。虎は何もしていない、と。 やがて動物園は閉園し、事件は未解決のまま忘れられていった。だが19年後、跡地の造成工事中に、古い増築舎の基礎の下から身元不明の人骨が見つかる。 それは、郡山ではなかった。 では、土の下に眠っていた男は誰なのか。なぜ郡山は長靴を揃えて姿を消したのか。 一人の元巡査が、19年前に書き残した疑問を手に、動物園に沈んだもう一つの失踪事件を追い始める。ミステリー|行方不明2.0萬字5 129 -
完結第11話
北アルプスの0.5秒
2024年、東京都足立区の古いアパートで、1台のビデオカメラが見つかった。 持ち主は孤独死した60代の男。クローゼットの奥に隠されていた登山リュックの中から出てきたそのカメラには、15年前の北アルプスで撮影された映像が残されていた。 日付は2009年10月24日。 その日、資産家社長・坂本竜三の愛人だった伊藤桜は、登山中に突然姿を消した。直前に坂本と激しく口論し、森へ逃げ込んだ彼女を坂本が追いかけたため、誰もが「犯人は坂本だ」と信じていた。 しかし、遺体も物証も見つからず、事件は未解決のまま15年が過ぎる。 そして発見された映像には、誰も知らなかった桜の本当の顔が映っていた。 彼女は誰かと電話をしていた。坂本を騙し、財産を奪う計画を語りながら、さらに別の裏切りまで口にしていたのだ。 次の瞬間、カメラは激しく揺れ、悲鳴とともに崖下へ落ちていく。 最後に映ったのは、崖の上に立つ一人の男の影。 15年間、無実の男を犯人にし続けた事件の真相が、わずか0.5秒の映像から動き出す――。ミステリー|行方不明1.7萬字5 1759 -
完結第10話
午前0時30分の空白
1991年9月、24歳の会社員・清田け子は、深夜の藤沢駅で同僚と別れたあと、公衆電話を使った。 それが、彼女の確かな足取りとして残る最後の場面だった。 誰に電話をかけたのか。 その後、誰と会ったのか。 なぜ彼女は、自宅へ帰らなかったのか。 12日後、平塚市の歩行者用地下道で、煙を上げるドラム缶が発見される。 人通りのある場所。朝になれば誰かが通る地下道。 それなのに、犯人はなぜそこを選んだのか。 周到に準備されたように見える一方で、最後の行動だけがあまりにも不可解だった。 藤沢駅の公衆電話から、平塚の地下道まで。 消えた12日間に、いったい何が起きていたのか――。ミステリー|遺體発見1.5萬字5 114 -
完結第9話
12年目の虫かご
1990年代後半の真夏の朝、山間の小さな村で、虫かごを持った5人の子供たちが山へ向かった。 雑貨店の前でラムネを飲み、「夕方までには帰る」と笑って手を振った5人。しかし、その日を境に、彼らは二度と家へ戻らなかった。 山で迷ったのか、川へ流されたのか、それとも誰かに連れ去られたのか。村中が必死に捜索する中、誰よりも熱心に動いていたのは、消えた少年の叔父だった。 だが、1人の刑事だけは小さな違和感を捨てられずにいた。 山へ向かっていない足跡。新しく打たれたコンクリート。そこに残された、腕時計の一部らしき小さな金属片。 それでも証拠は足りず、事件は長い年月の中へ沈んでいく。 そして11年後。古い床下から見つかった5つの虫かごと、止まったままの子供用腕時計。 あの夏、子供たちは本当はどこへ向かっていたのか。 村が信じ続けた“優しい叔父”の姿が崩れた時、12年間閉ざされていた真実がようやく姿を現す。ミステリー|行方不明1.3萬字5 1041