"25年目の自白状" 第2話
「子……」
吾がづこうとすると、彼女はさく首を振った。
そして、ただ川を見つめた。
涙も流さなかった。
叫びもしなかった。
その沈黙が、吾には自分の叫び声よりもくじられた。
夜になり、捜索はいったん打ち切られた。
それでも吾は川岸かられなかった。
投器に照らされた濁流を見つめながら、何度も健の名を呼んだ。
どこかから、
「お父さん」
と声が聞こえる気がした。
その、1の老がづいてきた。
町では見かけない顔だった。
「佐藤さんですか」
「……はい」
「方のお子さんのお父さんですね」
吾は力なく頷いた。
老は周囲を気にしながら声を落とした。
「昨の午、赤い子をかぶった男の子を見たんです」
吾は顔をげた。
「赤い子?」
健はその、赤い野球を持って学へっていた。
「どこで?」
「川からしれたです。黒い乗用に乗っていました」
吾の呼吸が止まりそうになった。
「1で?」
「いいえ。男のと緒でした」
「その子は……どんな様子でした?」
老は迷った、言った。
「泣いているように見えました」
吾は老の肩を掴んだ。
「はどこへ?」
「京方面へ向かうです。それ以は分かりません」
「警察に話しましたか?」
「話しました。でも、寄りの見違いでしょうと言われました」
吾はすぐに警察官のところへった。
しかし警察は、老の証言をしなかった。
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現には健の運靴がある。
川岸で遊んでいた子供たちの証言もある。
急激な増。
状況から考えれば、転落事故の能性が最もいという説だった。
翌朝。
流から赤い野球が見つかった。
それを見た警察の見方は、ますます固まった。
「川へ流されたと考えるのが自然です」
吾は子を握りしめた。
しかしのどこかで、老の言葉だけが残っていた。
黒い。
らない男。
京方面。
1週にわたる捜索でも、健は見つからなかった。
遺体はなかった。
やがて警察は、
「増した川への転落事故と推定」
という形で捜索を縮した。
町の々もしずつ常へ戻っていった。
だが、吾と子だけは違った。
彼らのは、19825のので止まったままだった。
健の部は、何つ変えられなかった。
机のには途まで描いた絵が置かれている。鉛で描かれた3族の絵で、まだ父親の顔だけが塗られていなかった。
本棚には学の教科。
ベッドの脇には野球のグローブ。
制にはかすかに子供らしい汗と洗剤の匂いが残っていた。
子は夜になると、その部へ入った。
気もつけず、何も健のベッドの横に座っている。
吾が迎えにっても、返事をしないが増えた。
「子」
声をかけても、妻は暗い部のでじっとを見つめている。
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「もう寝よう」
「……」
「も学だろう」
しばらくして、子はかすかな声で答えた。
「私が悪いの」
「何を言ってるんだ」
「私が……」
そこで言葉を止める。
吾はそれを、母親として息子を守れなかった罪悪だとっていた。
だから何度も言った。
「おのせいじゃない」
「川が増したんだ。誰にもどうすることもできなかった」
だが子は、そのたびに苦しそうに目を閉じた。
吾にはらされていないことがあった。
健が消えたそのの夜。
彼はすでに群馬県をれていた。
黒いセダンの部座席。
9歳の健は薬をまされ、眠らされていた。
運転していた男は川という若い運転だった。
助席には、林純郎の部が座っていた。
「本当に丈夫なんでしょうね」
川は何度も部座席を見た。
「子供ですよ」
「余計なことは考えるな」
助席の男がい声で言った。
「指示通り運転しろ」
「でも、この子は……」
「何もらない方がきできるぞ」
それ以、川は言えなかった。
は夜のを京へ向かってり続けた。
その頃、吾はだらけの姿で川岸を歩き回っていた。
同じに、父と息子の距は刻刻と広がっていた。
数週。
吾は京へ向かった。
老が話した黒いの証言だけが頼りだった。
健の写真を何枚も印刷し、警察署、病院、児童相談所、施設を回った。
「この子を見ませんでしたか?」
「群馬県から方になっています」
「9歳です」
しかし、誰もらなかった。
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