"25年目の自白状" 第4話
』
そしてに、
『健』
と署名されていた。
吾はけなかった。
何度も瞬きをする。
文字がぼやける。
鳴りがした。
「健……?」
25。
度も聞くことのできなかった名。
吾は子に崩れ落ちた。
を握るが震えている。
「きてるのか……」
裏側を見る。
京港区の所がかれていた。
それだけだった。
説はない。
話番号もない。
吾は封筒を何度も確認した。
それ以、何も入っていない。
その。
突然、子の遺がに浮かんだ。
『許して。
私には選択肢がなかったの。』
吾は顔をげた。
25、理解できなかった文。
黄い。
息子の名。
京。
黒い。
子の。
すべてが、どこかで繋がっている。
その夜、吾は健の部へ入った。
壁には19825のカレンダー。
吾は付を指でなぞった。
「おはきていたんだな」
返事はない。
「父さんがく」
翌朝。
雑貨の扉に、
『しばらく休業します』
といた札を掛けた。
さな旅鞄だけを持ち、京きのバスに乗った。
隣の席に座った若い女性が、途で尋ねた。
「京へご旅ですか?」
吾はし迷ってから答えた。
「息子に会いにくんです」
「そうなんですね」
「25ぶりです」
女性は驚いた顔をした。
しかし、吾の表を見て、それ以尋ねなかった。
京へ到着したのは夕方だった。
吾は港区へ向かい、の所からしれたホテルへ入った。
広告
ベッドに座って、もう度をく。
『あなたの息子は、自分のものではないをきました。』
自分のものではない。
どういうだ。
別としてきたということか。
誰かに育てられたのか。
なぜ。
吾はほとんど眠れなかった。
ので、25の川が現れた。
の向こうからが呼んでいる。
「お父さん」
吾がづく。
しかしの顔が、らないの男へ変わる。
そのろに子がっている。
『許して』
のの妻が泣く。
『私には選択肢がなかったの』
吾は汗びっしょりで目を覚ました。
翌朝。
に記された港区のマンションへ向かった。
級宅。
派な建物。
吾の暮らしてきた世界とはまるで違った。
指定された部のにつ。
インターホンへ伸ばした指が震える。
25。
この瞬だけを待っていた。
押す。
しばらくして扉がいた。
50代半ほどの女性がっていた。
品な。
えられた髪。
吾を見るなり、彼女の顔が変わった。
「どなたですか」
「佐藤吾です」
女性の唇が震えた。
「佐藤……」
「この所がかれたを受け取りました」
吾は黄いを見せた。
女性はドアを閉めようとした。
吾は咄嗟にを伸ばした。
「お願いします!」
女性が止まる。
「25待ったんです」
吾は声を震わせた。
「息子の健はどこにいるんですか?」
女性の目に涙が浮かんだ。
広告
そして、静かに言った。
「あなたの息子さんは……もうくなっています」
吾の界が揺れた。
「何を……」
「を送ったのは私です」
「でも、健と署名が」
「私が健さんの名をきました」
吾は何も言えない。
女性は扉をきくいた。
「へ入ってください」
「全部、お話しします」
女性の名は、林美紀子。
そして彼女のから語られたのは、吾が像したどんな話よりも残酷なものだった。
リビングには価な絵画が飾られ、具も吾には値段の像がつかないほど派だった。
テーブルのには、1の若い男性の写真が置かれている。
を着た男。
30歳に見える。
9歳の健とは違う。
だが吾は、その目から線をせなかった。
どこかっている。
「このは……」
美紀子が子へ腰をろした。
「林純也です」
「あなたの息子さん?」
美紀子はしばらく答えなかった。
そして静かに首を振った。
「世には、そういうことになっていました」
吾の胸がざわつく。
「25、私には純也という息子がいました」
美紀子は話し始めた。
「い先性疾患があり、医師からくはきられないと言われていました」
美紀子の夫、林純郎はきな病院グループを経営していた。
医療界だけでなく、政界にも太い脈を持つ物だった。
将来には政治の世界へむ野望さえ抱いていた。
「病気の息子がいることを、夫は点だと考えていました」
吾は眉を寄せた。
「点?」
「族すら自分の評判のために使うでした」
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
継母が私に遺した「価値ゼロ」の古民家
継母・良子の死後、養女の明日香に遺されたのは、山奥に建つ資産価値ゼロの古びた一軒家だけだった。一方、実子である高志と絵美子は、都内の高級住宅6軒を相続し、介護を続けてきた明日香を「他人」と嘲笑う。 母に愛されていなかったのか――。傷つきながらも家を片づけに向かった明日香は、不自然に敷き直された畳と、その床下に封印された巨大な金庫を発見する。母が最期に託した銀色のペンダントは、その扉を開くための鍵だった。 金庫の中に残されていたのは、莫大な財産と「愛する娘へ」と記された一通の手紙。そこには、明日香を強欲な実子たちから守るため、良子が密かに進めていた計画が明かされていた。 高級住宅を手に入れ、裕福な暮らしに浮かれる兄姉。しかし、彼らが「財産」だと信じた6軒には、決して逃れられない秘密が隠されていた――。 血のつながりを盾にする家族と、行動によって愛を遺した母。傷ついた養女が母の本心を知り、自分の人生を取り戻していく、遺産と家族をめぐる逆転の物語。人生逆転|真相|親子関係|金銭問題1.8万字5 921 -
完結第12話
昭和51年、帰宅目前で消えた25歳女性社員
「一人で静かに帰りたいので、大丈夫です」 昭和51年、25歳のみち子は飲み会のあと、一人でタクシーへ乗った。 運転手は、彼女を自宅からわずか50メートルの場所で降ろした。 「夜遅くにありがとうございました」 それが、みち子を見た最後の証言だった。 布団は朝まで誰にも使われず、通帳も着替えも部屋に残っていた。 上司と同僚には不自然な空白時間があったが、何も見つからなかった。 そして9年後。 亡くなった上司の娘が、遺品のアルバムを開いた。 失踪当夜の宴会写真の次に、見知らぬ和室を写した一枚が貼られていた。 机の上には、黒い女性用のハンドバッグ。 写真の裏には、みち子が消えた数日後の日付が押されていた。昭和|ミステリー|真相1.7万字5 6539 -
完結第18話
消えた交換手と鳴らなかった電話
昭和49年の雪の夜、電話交換手の澄子が姿を消した。十三歳の娘・和枝は、母が家族を捨てたという噂を聞きながら育つ。十九年後、取り壊された交換局から届いた勤務簿には、失踪の夜、澄子が自宅へかけようとして《接続不能》になった通話が記されていた。 和枝が調べ始めると、家の電話線が刃物で切られていたこと、澄子が高齢者宅への灯油配達をめぐる不正を追っていたことが分かる。母は家族を守ろうと町を離れたが、その後も帰れなかった理由には、父の沈黙と、澄子自身のためらいが重なっていた。 ようやく母と再会した和枝は、生きていてくれた喜びと、置き去りにされた寂しさの両方を抱える。十九年を一度の会話で埋めることはできない。それでも二人は、次に話す日を自分たちで決める。雪の日につながらなかった電話が、今度は確かに母へ届く。昭和|ミステリー|真相2.7万字5 236 -
完結第14話
臨月の私を追い出し、新居を売ろうとした義母
臨月を迎えた優香は、夫の出張中、義母から「里帰り出産なら、もう戻らなくていい」と実家へ追い出される。しかも自宅には義妹一家が住み着き、子ども部屋は勝手に美容サロンへ改装されようとしていた。 さらに、不動産会社が持参した資料から、共有名義の自宅が4,680万円で売りに出されていることが発覚。義母たちは優香夫妻の署名と印鑑を無断で使い、売却益を義妹夫婦の借金返済へ回そうとしていたのだ。 出張先から急きょ戻った夫・健太は、玄関で《売却物件》の内覧票と偽造された委任状を発見する。妻を守れなかった自分の甘さを認めた健太は、母と妹へ退去を命じ、優香とともに警察や弁護士、不動産会社へ相談。家と財産、そして生まれてくる娘の生活を取り戻していく。 「家族だから」という言葉で他人の人生を支配する義母たちに、明確な境界線を引いた夫婦。家とは、鍵や名義だけではなく、そこに住む人が自分の意思で未来を選べる場所なのだと描く、家族再生の物語。怒り|嫁姑|真相|修羅場2.1万字5 508 -
完結第11話
元警察官の父が娘に渡した一枚の封筒
久しぶりに会った娘・香織の頬に痣を見つけた元警察官の父・誠一。夫の話になると目をそらす娘に、父は勤務先の住所だけを尋ね、それ以上追及しなかった。 一か月後、再び夫に突き飛ばされた香織へ、父は一通の封筒を渡す。中にあったのは夫の秘密ではなく、香織が「大したことではない」と消してきた異変を、日付順に記した一枚の紙だった。 繰り返される暴力と謝罪の連鎖を認めた香織は、初めて「今日は帰らない」と自分で決断する。父は夫を裁くことも、離婚を命じることもせず、娘が自ら選べる安全な場所だけを守り続けた。 これは、父の静かな愛に支えられた女性が、自分の恐怖を否定するのをやめ、失っていた人生と平穏を取り戻していく再生の物語。夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 665 -
完結第14話
昭和40年、15歳で東京へ出た少年
昭和という時代は、遠い昔の出来事のようでいて、実はまだ私たちのすぐ隣に息づいています。ふと街角で漂う夕餉の匂い、遠くで響く電車の踏切の音、あるいは夕暮れの光が窓辺を茜色に染める瞬間、不意に胸の奥底で目覚める記憶があります。それは個人のアルバムの片隅にある色褪せた白黒写真のようでありながら、触れれば今なお温かい温度を保っています。 昭和四十年(一九六五年)春。 日本の各地にある名もなき小さな駅のホームには、同じ年頃の少年少女たちが立ち尽くしていました。十五歳。義務教育である中学校を終えたばかりの少年たちが、生まれて初めて親元を離れ、見知らぬ巨大都市・東京へと向かう朝でした。 ここに、ひとりの少年がいます。名を「ミノル」としておきましょう。 ミノルという名は、当時の日本中どこにでもあった平凡な名前です。そして、彼が辿った道筋もまた、特別な英雄の叙事詩ではなく、あの時代を懸命に生きた何十万人もの少年少女たちが共有した、どこにでもあった人生の縮図でした。だからこそ、この物語はミノルひとりだけのものではありません。かつて故郷の駅で見送られたあなた自身の物語かもしれず、あるいは黙々と働きづめで背中を丸めていたあなたの父や母、祖父母が歩んだ足跡そのものかもしれません。 今夜は、時計の針の音を少し遠くに押しやり、部屋の明かりを少しだけ落として、かつてこの国の土台をその小さな手で支えた少年たちの軌跡に、静かに耳を澄ませてみてください。時代|昭和|真相2.1万字5 710 -
完結第10話
昭和63年、消えたいちご農園主――3年後の古い倉庫
「分かった。じゃあ、2時頃に行く」 昭和63年4月5日、いちご農園主の夫は、一本の電話を受けて家を出た。 「夕飯までには戻る」 それが、家族が聞いた最後の言葉になった。 通帳も印鑑も着替えも、すべて家に残されていた。 夫の手帳には、乱れた字で二行だけ書かれていた。 《佐藤さんの件、今日で決める》 《2時 古い倉庫》 しかし名前の挙がった男は、電話も面会も否定した。 倉庫の持ち主も、最初は「会っていない」と証言した。 夫の行方が分からないまま、3年が過ぎた。 そして倉庫の取り壊し当日、周囲と色の違う床へ重機の刃が入った。昭和|ミステリー|真相1.5万字5 130