"凍った再婚式" 第10話
自分がきたいからく。
ただそれだけだった。
京都駅をり、を歩いた。
祇園霞のも通った。
あのから数かしか経っていなかった。
けれど、わざわざへ入ろうとはわなかった。
あそこは正夫が恥をかいた所でも、私が勝った所でもない。
私がお茶をみ、桜の菓子をべた所だった。
それだけでよかった。
私はその、京都で暮らすことを決めた。
正夫が買った3800万円のマンションではない。
あの部は財産分与の続きので売却された。
私は別の所を探した。
きな部はいらなかった。
36んだには、必以に物があった。
使わない器。
正夫が買ったゴルフ用品。
来客用の布団。
何もけていない箱。
押し入れいっぱいのい。
しい部には、本当に必なものだけを持っていきたかった。
選んだのは、陣にいさなマンションだった。
2LDK。
窓から古い京都の並みがし見えた。
徒歩圏内に商があり、豆腐、百、さな菓子があった。
産会社で契約を渡された、私は何度も内容を確認した。
これまでなら正夫の名が先にあった。
宅ローン。
保険。
。
きな契約には、いつも「林正夫」の文字があった。
今回は違った。
買主。
林佳子。
自分の名だけだった。
ペンを持った瞬、しが震えた。
夫の結婚招待状を見つけた夜には震えなかったのに。
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自分のを自分で買うには、なぜか緊張した。
署名を終えると、産会社の担当者が言った。
「おめでとうございます」
私はわず笑った。
婚に1でを買うことを「おめでとう」と言われるとはっていなかった。
でも、その言葉は嫌ではなかった。
引っ越した最初の朝。
私はまだ段ボールが残る部で目を覚ました。
正夫はいない。
「コーヒー」
と言うもいない。
朝のを気にする必もない。
私は自分のためだけに湯を沸かした。
抹茶を点てた。
窓をしけると、朝の空気が入ってきた。
の通りでは、さながき始めていた。
豆腐の女性が先へ箱を並べている。
自転で通勤するが通る。
くの寺から線のりがに混じって流れてきた。
静かだった。
けれど、36暮らしたでじていた静けさとは違った。
以の静けさには、正夫が帰ってくるまでの「待つ」が含まれていた。
今は何になるのか。
夕を温め直すのか。
酒をんで帰るのか。
嫌はいいのか。
そういうことを考えながら待つ静けさだった。
今は、誰も待たなくていい。
自分が眠ければ寝る。
お腹が空けばべる。
かけたければかける。
それだけのことが、最初はとても鮮だった。
玲子はよく京都へ遊びに来るようになった。
ある、2で錦へった。
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鮮魚のでを止め、し良い刺を買った。
「こんなにべられる?」
玲子が笑った。
「あなたもべるでしょう」
「本酒も買おう」
「昼から?」
「誰にられるのよ」
私たちは顔を見わせて笑った。
部へ戻り、刺を皿へ並べた。
正夫が使っていた器ではない。
私が京都へ来てから、自分で選んだ青い皿だった。
玲子が本酒を注ぎながら言った。
「ねえ、佳子」
「何?」
「314のこと、今でもみたいだったとう?」
私は箸を止めた。
披宴。
いドレス。
裁判所の類。
2500万円。
3800万円。
100の招待客。
確かに、普通ならに度あるかどうかの来事だった。
でも私が最初にいしたのは、それではなかった。
「桜のお菓子」
「え?」
「あの、旅館でべた桜の菓子をいす」
玲子は目を丸くした。
「あそこ?」
「うん。すごく綺麗だった」
「正夫さんが式のために用したやつでしょう」
「そうみたい」
私はし笑った。
「36ぶりだったのかもしれない」
「何が?」
「誰かの好みを気にせず、自分がべたいようにデザートをべたの」
玲子はしばらく私を見ていた。
それから笑った。
「そんなことで?」
「そんなことよ」
でも、たぶんはそういうさなことで変わる。
誰と結婚しているか。
いくら財産を持っているか。
どこにんでいるか。
もちろん事だ。
けれど毎は、もっとさな選択でできている。
今は何をべるか。
何に眠るか。
どのを歩くか。
誰と会うか。
誰のためにを使うか。
私はい、それを自分で決めているつもりで、正夫をに決めていた。
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