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"消えた金づる夫" 第5話

「ちょっと! どういうことよ!」

妻は完全に取り乱していた。

話の向こうでは娘の声も聞こえ、何かを探しているような物音が響いていた。

に何もないじゃない! 具も荷物も全部なくなってる! あなた、体どこにいるのよ!」

俺はんでから答えた。

「やっと帰ってきたのか。待ちくたびれたな」

「ふざけないで!」

「別にふざけてない」

俺は落ち着いた声で説した。

「見て分かる通り、あのマンションから俺は退した。おたちの荷物はくのレンタル倉庫に入れてある」

「は?」

「鍵はおの実へ送った。必なら勝に取りにけ」

妻はしばらく言葉を失った。

おそらく、そこで初めて旅の俺の言葉をしたのだろう。

俺は続けた。

「それから、俺ももう限界だ」

話の向こうが静かになった。

婚する」

「……何言ってるの?」

「そのままのだ。おとは婚する。あとは好きにきればいい」

「ちょっと待って」

妻の声からりがし消えた。

「待たない。それと、あのマンションにはもう今まで通りめない。しい居は自分で探してくれ」

それまで俺を馬鹿にしていた妻が、ようやく状況のさに気づいたようだった。

だが、プライドのい妻が素直に謝るはずもなかった。

数秒の沈黙の、再び声を荒らげた。

婚するですって? 等じゃない!」

俺は黙って聞いた。

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「だったら財産分与してもらうから! 今までの財産、半分は私の権利でしょ!」

通りだった。

この女なら、まずの話をすると分かっていた。

「それに何の相談もなく勝にマンションを解約して、荷物まで移して。そんなこと許されるとってるの?」

「弁護士には相談してある」

俺がそう答えると、妻は瞬黙った。

「弁護士?」

「ああ。数かからな」

「何よ、それ」

俺はそこで初めてし笑った。

「お、本当に何も分かってないんだな」

「何がよ!」

「財産分与の話をするなら、まず何が対象になるかくらいっておいた方がいい」

妻が苛った声をした。

「どういうことよ」

「基本に問題になるのは、結婚活ので夫婦が形成してきた共財産だ。何でもかんでも半分になるわけじゃない」

妻は黙っている。

法律の細かなところなど、考えたこともなかったのだろう。

俺は続けた。

「あのマンションは賃貸だ。そもそも俺たちの所物じゃない」

「でも具とかとかあるでしょ」

「婚姻から俺が持っていたものについては、俺の側の財産として扱われるものもある。何が対象になるかは弁護士を通して理する」

「じゃあ貯は?」

その質問に、わずため息がた。

までだった。

「夫婦で形成した預については、必な分は理することになるだろうな」

「だったら結構あるでしょ」

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「本気で言ってるのか?」

俺が尋ねると、妻は黙った。

「おが毎どれだけ使ってきたとってる」

俺は座の残した。

収入はかった。

それでも妻がやバッグ、、遊びにを使い続けた結果、俺が定していたほどの貯蓄は残っていなかった。

「かなり使ってくれたからな。おが期待してるほど残ってないぞ」

話の向こうが静まり返った。

俺はそこで話を終わらせなかった。

「財産分与の対象になるものは、もちろん弁護士を通してきちんと分ける」

「だったら――」

「ただし」

妻の言葉を遮った。

「おには慰謝料を請求する」

「え?」

「300万円」

妻が息をむ音が聞こえた。

「何で私が払うのよ」

俺は机のに置いていた探偵の調査報告へ目を落とした。

「まだとぼけるのか」

「何の話?」

「拓哉のことだよ」

その瞬話の向こうから音が消えた。

妻は何も言わなかった。

俺は淡々と続けた。

「ホテルに入ったも、てきたも、全部記録されてる。何度会ったかも分かってる」

「……」

「写真もある。探偵に数か調べてもらった」

「ちょっと待って」

「拓哉の勤務先も所も分かってる。そっちにも正式に請求する予定だ」

妻の呼吸が急に荒くなった。

「そんな……」

「ハワイ旅まで3っておいて、今さら何を驚いてるんだ」

そこでようやく、妻は理解したらしい。

今回のことは、旅いついてったわけではない。

俺は何かから準備していた。

証拠を集め。

弁護士へ相談し。

居を契約し。

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