みかん小説
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"消えた金づる夫" 第6話

妻たちがを空けるを待っていた。

「これで分かっただろ」

俺は静かに言った。

「もう元には戻らない」

それまで気だった妻は、突然黙り込んだ。

数秒まで財産分与を求し、俺を責めていた声が完全に消えた。

話の向こうから聞こえるのは、浅い呼吸だけだった。

やがて、さなすすり泣きが聞こえてきた。

「敏文……」

久しぶりに妻が俺の名を呼んだ気がした。

結婚してから何も経つうちに、「ねえ」とか「あんた」と呼ばれることの方が増えていた。

俺は何も答えなかった。

すると妻は、震える声で言った。

「本当にごめんなさい」

俺は無言のまま聞いた。

「私、あなたの気持ちを踏みにじってたことに、今ようやく気づいたの」

まで鳴っていたとはえない声だった。

「でも、あなたを本気で裏切るつもりじゃなかったの」

その言葉に、俺は目を閉じた。

何度もホテルへき。

娘を連れて拓哉とかけ。

挙げ句の果てには3でハワイ旅った。

それで裏切るつもりはなかったという。

が分からなかった。

「これからはを入れ替える」

妻は必だった。

「もう無駄遣いもしない。拓哉くんとも度と会わない。あなたのこともちゃんと切にするから」

俺はそこでようやくいた。

「遅い」

「お願い」

「何あったとってる」

「え?」

「俺がおに何度もの使い方を考えてほしいと言った、おは聞かなかった」

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妻は黙った。

「娘が俺を馬鹿にした、おは止めなかった。それどころか緒に笑ってた」

「それは……」

「浮気して、娘まで巻き込んだ」

つずつ言葉にしていくと、自分がどれほどしていたのか、改めて分かった。

「今謝ってるのは、俺を傷つけたことに気づいたからじゃないだろ」

「違う」

がなくなったからだ」

「違うって」

も今まで通り使えなくなる。拓哉とのこともバレた。慰謝料も請求される。だから困ってるだけだ」

妻は泣きながら否定した。

「本当に反省してるの」

「だったら、俺が何もらない状態でも反省できたはずだ」

返事はなかった。

妻が何を言おうと、俺の気持ちは変わらなかった。

むしろ今になって謝れば許してもらえるとわれていることが、最まで軽く見られているようで腹たしかった。

「今の話は弁護士を通してくれ」

「敏文、待って」

「もう直接話すことはない」

俺はそのまま話を切った。

スマートフォンを机に置くと、し震えていた。

鳴りったわけではない。

それでも、続いた夫婦関係を自分の言葉で終わらせたのだ。

しばらく子に座ったままけなかった。

そのの夜。

再び話が鳴った。

今度は娘だった。

俺は度迷ったが、通話にた。

「もしもし」

娘は最初から泣いていた。

「お父さん」

久しぶりに聞く呼び方だった。

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普段は「あんた」と言われることがくなっていた。

「何だ」

「お母さんから聞いた」

「そうか」

「本当に婚するの?」

「する」

「ちょっと待ってよ。そんな急に」

俺はわず笑いそうになった。

俺にとっては急ではない。

も積みなった結果だった。

「急じゃない。俺はずっとしてきた」

「でも、までなくす必ないじゃん」

「俺はもうあそこにむつもりがない」

娘はしばらく黙った調になった。

「私まで巻き込まないでよ」

その言葉を聞いて、胸の奥にあった最の迷いまで消えた。

「巻き込まれた?」

「だって夫婦の問題でしょ」

「おは拓哉と緒に何度もかけてたな」

娘は黙った。

「母親が浮気してるってってたんだろ」

「……ってたけど」

「ハワイにも緒にった」

「だって、お母さんがいいって言ったから」

「そして旅の朝、俺に何て言った?」

娘は答えなかった。

俺は忘れていなかった。

「あんたみたいな父親は恥ずかしい。顔を見るのもうっとうしい。消えてくれ」

つずつ、娘自が言った言葉を返した。

話の向こうから、すすり泣く声が聞こえた。

「そこまで言っておいて、今さら父親扱いされても困る」

「ごめんなさい」

「俺みたいな奴が父親だと恥ずかしいんだろ」

「違う」

「だったら拓哉と仲良くすればいい」

「お父さん」

しい父親になってもらえばいいんじゃないか」

そう言って、俺は話を切った。

胸が痛まなかったと言えば嘘になる。

娘がさかった頃の顔は、今でも覚えている。

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