"消えた金づる夫" 第10話
あそこにはもう、俺たちの活はない。
あの部で何度も夕をべた。
娘の誕を祝った。
妻と喧嘩もした。
俺1で黙って耐えた夜もあった。
それら全てが、本当にい過になっていた。
俺はち止まらず、そのまま歩いた。
スマートフォンには妻からの着信もない。
娘からもそのは連絡がなかった。
静かな午だった。
俺はふと、ハワイ旅へ発した朝のことをいした。
きなスーツケース。
浮かれた妻。
楽しそうな娘。
そして、玄関で俺が言った言葉。
「今でさようならだな。永に帰ってこなくていいぞ」
あの、2は笑った。
俺も本気でこんなところまで来られるのか、のどこかではだった。
けれど今なら分かる。
あのに終わったのは、俺のではなかった。
俺をづるとしか見ない妻に縛られた活。
父親である俺を馬鹿にする娘の言葉を黙って受け止め続ける毎。
帰る所なのに、自分の居所がなかった庭。
それらに、ようやく別れを告げることができたのだ。
妻は俺のを失い、拓哉にも見捨てられた。
自分が相をづるとして見ていたのと同じように、自分もまたがあるから必とされていたことをった。
娘も、自分が当然だとっていた活が、誰かの努力で成りっていたことをった。
そして俺は、自分のを取り戻した。
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居の玄関をけると、当然誰もいない。
以なら「誰もいない」を寂しいとったかもしれない。
今は違う。
静かな部へ入り、鞄を置く。
好きな音量で音楽を流し、自分のために夕を作る。
誰かの顔をうかがう必はない。
誰かから収入を馬鹿にされることもない。
仕事から帰ってきた俺を、「邪魔」と言うもいない。
1であることと、孤独であることは違うのだと、俺はようやくった。
窓のには、京のかりが広がっていた。
以より狭いマンション。
以よりない具。
それでも俺には、この部の方がずっと広くじられた。
自分の居所があるからだ。
俺は蔵庫からビールを取りし、窓際の子へ腰をろした。
そして誰に聞かせるでもなく、さく呟いた。
「やっと終わったな」
妻と娘がハワイへ向かったあの。
2は、自分たちが帰ってくる所を失うとは考えていなかった。
俺もまた、自分がここまできっぱり全てを終わらせられるとは、しまでっていなかった。
けれど、には限界がある。
どれほど穏やかなでも。
どれほど争いを避けるでも。
何をされても永に耐え続けるわけではない。
俺の、その限界が来たのがあのだった。
妻と娘が笑いながら浮気相との旅へていった朝。
俺はので決めた。
もう、戻らない。
もう、利用されない。
もう、自分を嫌うのためだけにを使わない。
その決断から、全てが始まった。
今の俺には、以のような華やかな庭はない。
だが、もう悔していない。
ハワイへ旅つ2の背に告げた言葉は、負け惜しみでも嫉妬でもなかった。
あれは、い言えなかった別れの言葉だった。
そして今なら、同じ言葉を迷わず言える。
今でさようならだ。
今度こそ、本当に。
永に。
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