"嘘を握った右手" 第7話
子をくかぶり、にはさな旅鞄。
には現の束。
名義の携帯話。
そして血のついた腕計。
運転が聞いた。
「どちらまで?」
はすぐに答えなかった。
窓の。
の本。
何度も方を確認する。
「港までお願いします」
りした内で、プリペイド携帯をく。
着信6件。
登録名はない。
だが誰かは分かっていた。
佐藤えり子。
は話をかけなかった。
源を切る。
岸沿いので窓をけ、携帯話をへ投げた。
黒いへ消える。
しかし通信記録までに沈むわけではない。
最に接続した基局は、すでに警察の画面に残っていた。
1018午926分。
港は濃いに覆われていた。
は荒れ、防波堤へ波が繰り返し打ちつけている。
鈴たちは、の携帯話が最に接続した区域を3つに分けた。
速バスターミナルの防犯カメラ。
黒い子。
のジャンパー。
旅鞄。
がタクシーへ乗る姿がはっきり残っていた。
運転も見つかった。
「港くでろしましたよ」
「そのは?」
「りません」
さらに旅館から連絡が入る。
港裏の古い宿。
午120分頃、似た男が現で宿泊している。
302号。
「夜に来て、誰も部へ入れるなって言いました」
旅館主はそうに話した。
「朝になったら、のを聞いてきましてね」
「何のです?」
「漁とか、へくとか」
広告
鈴は防刃装備を確認した。
「裏も固めろ」
3階。
狭い廊。
302号。
「伊藤さん。警察です」
返事はない。
もう度。
「にいることは分かっています。けてください」
窓がく音。
「裏へ!」
刑事たちがドアをこじける。
内には煙の煙。
焼酎瓶。
べかけのカップラーメン。
窓の。
のが見えた。
排管を掴み、の庇へりようとしている。
「止まれ!」
が振り返った。
次の瞬、をした。
体が2階の庇へ落ちる。
古い脂根がきくしなった。
は転がり、隣の建物へび移った。
警官が追う。
産。
氷箱。
魚を運ぶトラック。
朝の混み。
はを押しのけながら港へった。
濡れた面で滑り、それでも起きがった。
そして係留の漁へび乗った。
員を突きばし、甲板奥へ逃げる。
航準備さえしていない。
逃げはなかった。
は甲板に置かれていた作業用ナイフを掴んだ。
「来るな!」
警察官たちがを囲む。
子がでんだ。
の側。
の。
髪が自然にく刈られている。
そのに、貨よりきく髪が失われた部分。
赤い傷。
鈴はそこを見た。
健のから見つかった毛髪。
毛根についた皮膚組織。
「」
鈴が静かに言った。
「ナイフを置け」
「俺は何もやってない!」
「何もしてないなら、なぜ逃げる」
「健が先に俺を殺そうとしたんだ!」
鈴の目が細くなった。
広告
警察はまだ事件名も被害者名も告げていない。
「々が誰の事件で来たか、言ったか?」
の顔が固まった。
「の傷も調べる」
鈴は歩む。
「田健さんは、ぬ直に誰かの髪を握っていた」
は無識にへをやった。
その瞬。
渡辺が横からび込んだ。
の刑事も腕を掴む。
ナイフが甲板へ落ちる。
錠をかけられても、は叫んだ。
「俺は殺してない!」
「じゃあ誰だ」
はを閉ざした。
しかし数秒。
「……あの女がやらせたんだ」
鈴が見た。
「どの女だ?」
はもう答えなかった。
旅館302号。
置きりにされた旅鞄のから、額の現が見つかった。
さらに男性用腕計。
田美紀が確認する。
「兄のものです」
健が10く使っていた計だった。
別の袋。
健が普段使っていた携帯話。
乾燥倉庫のしい京錠の鍵。
血の付着したの袋。
は全て否定した。
「俺のじゃない」
「健さんの携帯が、おの鞄からた」
「拾ったんです」
「どこで?」
「覚えてない」
取調べが始まる。
930夜。
「どこにいた」
「友達と」
「名」
答えられない。
居酒。
ネットカフェ。
全て裏が取れなかった。
携帯話の基局は午6以、嶺周辺。
夜1041分には沢付。
遺体が運ばれた推定と致していた。
さらに鑑定。
健のからた毛髪。
爪のの皮膚。
乾燥倉庫の鉄子からた混DNA。
すべて。
伊藤と致。
確率は99.99%以。
鈴は鑑定をのへ置いた。
「おの髪が健さんのにあった」
広告
おすすめ作品
-
完結第19話
昭和54年、消えた母の集金袋
昭和54年の集金日、商店街の積立金86万4千円とともに母・澄江が姿を消した。金を持ち逃げしたという噂を残したまま17年。娘の直子は、父の遺品から「返すこと」と書かれた千円札を見つけ、古い帳簿を調べ始める。 調査で見つかった受領書は、澄江が集金した全額を会計担当の大竹へ渡していたことを示していた。大竹は会費の使い込みを隠すため、澄江が倉庫の点検槽へ落ちた夜に救助を呼ばず、失踪後も嘘を重ねていた。ただし、転落の瞬間に何が起きたかは分からない。 直子と弟の修司は母の汚名を晴らし、積立金の記録と返金先を調べ直す。帳簿に残った「集金係の未入金」という記述も訂正された。直子は母の集金袋を店の棚に戻し、修司と並んで帰り道を歩く。時代|昭和|ミステリー|真相2.8万字5 71 -
完結第12話
昭和51年、帰宅目前で消えた25歳女性社員
「一人で静かに帰りたいので、大丈夫です」 昭和51年、25歳のみち子は飲み会のあと、一人でタクシーへ乗った。 運転手は、彼女を自宅からわずか50メートルの場所で降ろした。 「夜遅くにありがとうございました」 それが、みち子を見た最後の証言だった。 布団は朝まで誰にも使われず、通帳も着替えも部屋に残っていた。 上司と同僚には不自然な空白時間があったが、何も見つからなかった。 そして9年後。 亡くなった上司の娘が、遺品のアルバムを開いた。 失踪当夜の宴会写真の次に、見知らぬ和室を写した一枚が貼られていた。 机の上には、黒い女性用のハンドバッグ。 写真の裏には、みち子が消えた数日後の日付が押されていた。昭和|ミステリー|真相1.7万字5 6677 -
完結第18話
消えた写真屋の父が残した一本のビデオ
昭和62年の運動会の日、写真館を営む信吾が姿を消した。店から商店街の預かり金200万円もなくなり、家族を捨てて逃げたと疑われる。8年後、娘の由美は運動会のビデオの続きに、失踪したはずの父が午後4時過ぎ、道路計画をめぐって時計店主と口論する姿を見つけた。 由美が調べると、道路の調査資料は書き換えられ、父はそれを示す写真を守ろうとしていたことが分かる。一方で信吾は生きており、家族に連絡できる時期になっても帰らなかった。母の千鶴も、子どもを守るつもりで映像と自分が受け取った金のことを隠していた。 真相が明らかになっても、失われた8年は戻らない。由美と千鶴は新しい写真の店を開き、信吾とは時間をかけて会い直す。由美は今の家族をそれぞれの居場所で撮り、自分の写った一枚も店の棚に置いた。昭和|ミステリー|真相2.7万字5 144 -
完結第18話
消えた交換手と鳴らなかった電話
昭和49年の雪の夜、電話交換手の澄子が姿を消した。十三歳の娘・和枝は、母が家族を捨てたという噂を聞きながら育つ。十九年後、取り壊された交換局から届いた勤務簿には、失踪の夜、澄子が自宅へかけようとして《接続不能》になった通話が記されていた。 和枝が調べ始めると、家の電話線が刃物で切られていたこと、澄子が高齢者宅への灯油配達をめぐる不正を追っていたことが分かる。母は家族を守ろうと町を離れたが、その後も帰れなかった理由には、父の沈黙と、澄子自身のためらいが重なっていた。 ようやく母と再会した和枝は、生きていてくれた喜びと、置き去りにされた寂しさの両方を抱える。十九年を一度の会話で埋めることはできない。それでも二人は、次に話す日を自分たちで決める。雪の日につながらなかった電話が、今度は確かに母へ届く。昭和|ミステリー|真相2.7万字5 1224 -
完結第10話
昭和63年、消えたいちご農園主――3年後の古い倉庫
「分かった。じゃあ、2時頃に行く」 昭和63年4月5日、いちご農園主の夫は、一本の電話を受けて家を出た。 「夕飯までには戻る」 それが、家族が聞いた最後の言葉になった。 通帳も印鑑も着替えも、すべて家に残されていた。 夫の手帳には、乱れた字で二行だけ書かれていた。 《佐藤さんの件、今日で決める》 《2時 古い倉庫》 しかし名前の挙がった男は、電話も面会も否定した。 倉庫の持ち主も、最初は「会っていない」と証言した。 夫の行方が分からないまま、3年が過ぎた。 そして倉庫の取り壊し当日、周囲と色の違う床へ重機の刃が入った。昭和|ミステリー|真相1.5万字5 213 -
完結第12話
合格発表の日、父が消えた
「お父さん、合格したよ」 2010年3月6日、18歳の栞が大学合格を知った日、父は帰ってこなかった。 勤務先の金庫からは480万円が消え、父のロッカーには仙台行きの新幹線切符が残されていた。 《もう父親でいる資格がない。二人で暮らしてくれ》 さらに大学には、栞が試験問題を買ったという匿名の告発まで届いた。 栞は合格を辞退し、父は金を持ち逃げした男として消息を絶った。 それから14年後。 閉鎖された予備校の隠し書庫から、栞の名前が書かれた答案用紙が見つかる。 封筒には、不可解な一文が添えられていた。 《本人は受験せず》 答案の文字は栞の筆跡ではなかった。 そして母は、14年間隠していた白い目覚まし時計を差し出した。 その修理票には、父が乗ったはずの新幹線が出た「32分後」の受付時刻が記されていた。ミステリー|真相1.8万字5 2659 -
完結第11話
13歳の娘だけ、保険証にいなかった
「お母ちゃん、どうして私の名前だけないの?」 昭和36年、藤井家に届いた新しい国民健康保険証。 父、母、10歳の弟、7歳の弟――家族全員の名前が並んでいた。 けれど13歳の美津子だけが、どこにも載っていなかった。 母は保険証を取り上げ、「役場の間違いだから」と隠した。 父も黙ったまま、一度も娘の顔を見なかった。 不安になった美津子は、翌朝一人で役場へ向かった。 職員は台帳をめくると、急に表情を曇らせた。 「お母さんと一緒に来た方がいい」 「私、藤井美津子ですよね?」 返事はなかった。 そして最後に、職員は重い口調で告げた。 「あなたは、修一さんと和子さんの戸籍には入っていないんだよ」 その夜、美津子が「私は誰の子なの」と問い詰めると、母は13年間隠してきた女性の名前を口にした。歴史|昭和|ミステリー1.6万字5 649 -
完結第11話
最終列車で消えた18歳
昭和63年、廃線前夜の最終列車に乗った18歳の娘が、途中で姿を消した。 終点に着いた車内には、旅行鞄と赤いマフラーだけが残されていた。 鞄の上には、駅長の父へ宛てた短い手紙。 《お父さんの決めた人生には戻りません》 娘は名古屋の短期大学へ進学する予定だったが、父は直前になって猛反対していた。 それから35年、娘の行方は分からないまま父は亡くなった。 翌年、解体中の旧駅で、伝言板の裏から薄い鉄箱が見つかる。 中には娘の受験票、12通の手紙、診断書、通帳、そして古い録音テープ。 受験票の裏には、失踪8日後の日付でこう記されていた。 《本人来校。入学辞退の意思なし》 ところが、その2日後には父の署名入りの辞退届が提出されていた。 さらに鉄箱から出てきた最終列車の切符には、改札鋏の痕が一つもなかった――。ミステリー|真相|行方不明1.6万字5 507 -
完結第11話
卒業3か月前に消えた娘
1995年11月、卒業まであと3か月だった富山大学4年生・大山蓮子が、突然消息を絶った。 家には財布も読みかけの本も残されていた。ところが、半年以上かけて集めた卒業論文の取材資料だけが、すべて消えていた。 蓮子は都市開発で土地を手放した住民たちを訪ね、補償金の記録を調べていた。失踪前、友人には「土地のお金を調べていたら、生きている人たちの話が出てきた」と漏らしている。 下宿に残された地図には、土地買収が行われた3つの地域を示す赤い丸。そして古い行政資料から浮かんだ担当者の名前は、失踪前夜に蓮子と口論していた叔父・達夫だった。 達夫には完璧なアリバイがあり、捜査はやがて縮小される。しかし6年後、赤い丸がつけられた土地の工事現場から、二重の袋で守られた2枚の書類が見つかった。 余白には蓮子の筆跡で、こう記されていた。 《単価に不自然な変更あり》 そして最後に――《担当者 大山達夫》。ミステリー|真相|行方不明1.6万字5 1141