"嘘を握った右手" 第8話
沈黙。
「爪のにも、おの皮膚」
の呼吸が速くなる。
「倉庫の子にもおのDNA」
「……争ったんです」
「を縛られたと?」
「最初は縛ってなかった!」
言った瞬。
は失敗に気づいた。
鈴は遺体の写真を机へ置いた。
「から誰が縛った?」
は唇を噛む。
「偶発な喧嘩で、こうなるか」
い沈黙。
やがて。
「殺すつもりじゃなかった」
がさく言った。
鈴は聞く。
「誰が殺そうとした?」
の目に涙が浮かんだ。
「最初は……脅すだけって言われたんです」
「誰に」
が両で顔を覆った。
「あの女です」
「佐藤えり子か」
は頷いた。
「あいつがいなくなれば、をやるって言った」
「いくら」
「わさびを売ったから……借を全部返して、それでも残るくらい」
「誰が計画した」
「えり子です」
の声は震えていた。
「健さんを倉庫に呼んだのも、あの女です」
930午153分。
田健の秘密の携帯話が鳴った。
肥料をバイクへ積んでいた健は、資材の脇へ移して話にた。
佐藤えり子だった。
「今の夜、会えますか」
「話すことはないと言ったはずだ」
「最に理したいんです」
8末。
健は乾燥倉庫で、えり子とが緒にいるところを見た。
その瞬から3の関係は壊れた。
を殴り、畑から追いした。
えり子へは、
「度とあの男に会うな」
と告げた。
り。
裏切られた屈辱。
自分だけを騙していたとっていた女が、同じ畑で働く男とも関係を持っていた。
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えり子は泣いて謝った。
「夫には言わないで」
とは終わらせる。
契約も健に利な形へ変える。
そう約束した。
だが嘘だった。
ある、えり子が席をした隙に、卓のプリペイド携帯へメッセージが入った。
から。
『今夜も会いたい』
健は黙って画面を撮した。
さらに、いくつかのやり取りを保した。
数。
「もう度嘘をついたら、おの夫に全部送る」
そう告げた。
その瞬。
えり子にとって健は、隠れて会う相ではなくなった。
秘密を握る危険なへ変わった。
930。
話でえり子は別の話をした。
「のことも話しましょう」
「何だ」
「あなたが希望していた期契約。準備しました」
健は迷った。
わさびは収穫期を迎えようとしていた。
現の契約には曖昧な点があり、主が方に解除すれば、何も育てた作物の権利をめぐって争いになる。
「本気か?」
「はい。夜7、乾燥倉庫で」
「なぜ倉庫だ」
「のに見られたくないでしょう?」
健はしばらく黙った。
「これが最だ」
話が切れる。
えり子はすぐ別の番号へかけた。
伊藤。
「来るわ」
「本当にやるんですか?」
「今さら何を言ってるの」
「で解決できないんですか」
「写真がある。メッセージもある」
えり子の声はたかった。
「夫に話されたら、あなたも終わりよ」
は何も言えない。
には借があった。
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盗んだ薬を売った疑いも健に持たれていた。
倫まで見すれば、から消えるだけでは済まない。
「最初に言った通りよ」
えり子は言った。
「携帯と証拠の所を聞きすだけ」
「そのは?」
「私が判断する」
わさびを売れば、相当なになる。
えり子は、へを渡すと約束した。
借を返し、夫と別れ、別のへく。
はその言葉を信じたかった。
午540分。
健はスーパーを通り、畑へ戻った。
シャワーを浴びた。
濃いの作業着に着替えた。
秘密の携帯話はタンスの裏へ隠した。
万のため、メモも残す。
『えり子が、また嘘をついた』
午621分。
再び話。
「どこですか」
「畑だ」
「遅れないでください」
「契約、本当にあるんだろうな」
えり子は笑った。
「来れば分かります」
午648分。
えり子はい軽トラックで乾燥倉庫へ到着した。
荷台にはべ物。
焼酎。
コップ。
封筒。
そしてロープ。
黒い袋。
ビニールシート。
封筒のは、法効力のない偽の契約だった。
は先に倉庫へ入っていた。
奥の物置部へ隠れる。
「本当に契約の話をするんですか」
「最初はね」
「がんだら、警察が……」
えり子が見た。
「誰が殺すなんて言ったの?」
ではそう言った。
しかし軽トラックの運転席には、聞に包まれた刃物があった。
午714分。
からバイクの音。
は物置へ入った。
ドアが閉まる。
健が倉庫へ入ってくる。
「鍵を替えたのか」
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