"嘘を握った右手" 第13話
兄が戻ったとはわない。
んだは戻らない。
だが、あので兄が何もをかけて育てたものが、ほんのしだけ残った。
「お兄ちゃん」
美紀はさく呼んだ。
が吹いた。
芽が揺れる。
事件からが経つにつれ、嶺の常はしずつ戻っていった。
だが民たちは、が暮れたに沢へりるを避けるようになった。
廃棄物集積は閉鎖された。
遺体が見つかった所はで埋められ、やがて背のい雑に覆われた。
乾燥倉庫を解体した。
1の作業員が古い青緑の柱に、5本のい傷を見つけた。
の肩ほどのさから。
へ向かって伸びている。
警察は事件捜査に確認済みの建物であり、古い材の亀裂かもしれないとしてたなを認めなかった。
柱はそののうちに解体された。
傷が何だったのか。
もう確かめる方法はない。
がる夜。
がを覆うと。
古くからむのには、
「沢の方から、鉄がを擦るような音が聞こえる」
と話す者もいた。
古い子を引きずる音。
の音。
枝が建物に当たるだけ。
そう説するもいた。
さらに、
「誰かがい声で同じ言葉を繰り返す」
と言う者までいた。
――嘘をつくな。
――もう嘘をつくな。
本当にそんな声がしたのかは誰にも分からない。
ただ1つ。
この事件で消えなかったものがある。
健のに残った、ほんの数本の髪。
タンス裏へ隠した古い携帯話。
乾燥倉庫の分盤に残した、さなメモリーカード。
犯たちはを洗った。
を燃やした。
話を捨てた。
遺体を埋めた。
そして何度も嘘をねた。
だが。
んだ田健が最までさなかった証拠は、1つずつへ戻ってきた。
彼をへ追いやったのは、1度きりのりではなかった。
いねられた嘘。
欲望。
発覚することへの恐怖。
。
そして。
自分のを守るためなら、のを終わらせてもいいと考えた2の選択だった。
わさび畑は枯れた。
乾燥倉庫も消えた。
事件現をる建物も、今は残っていない。
それでもになると。
健の墓の隣では。
美紀が植えた1本のわさびが、毎、さな緑の葉を伸ばしていた。
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