"井戸に沈んだ制服" 第5話
制に包んだ蓋骨を用し、紐で固定する。
それを暗い井戸の底へ慎にろす。
その為を像するだけで、現にいた者たちは言葉を失った。
衝に処分したのではない。
何らかのを持って、そこへ置いた。
そう考えた方が自然だった。
さらに鑑識で、制の部から古い血液反応が検された。
血液型は越子と矛盾しなかった。
そして制そのものにも調査が入った。
専の鑑定によれば、その型は1960代に県内のある女子学で使用されていたものだった。
学は1971に閉している。
「なぜ、こんなものが使われた?」
捜査本部での刑事が呟いた。
「たまたま古い布として使っただけじゃないのか」
別の刑事が答える。
「だったら、もっと使いやすい布はいくらでもある」
制はぼろ切れのように乱雑に巻かれていたわけではない。
度きちんと畳まれ、蓋骨を包むようにねられていた。
犯がそれを、
「制である」
と認識して使った能性はかった。
閉した学の記録が集められた。
籍した徒。
教師。
事務職員。
用務員。
制の保管に関わった能性のある者。
数の記録である。
名簿が欠けているもあった。
所が変わっている者もい。
すでにした者。
県へ移った者。
結婚して姓が変わった元徒。
捜査員はずつ追いかけた。
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その過程でな事実が分かった。
越子自も若い頃、その学で数、教師として働いていた。
1950代半。
教員になったばかりの期だった。
つまり、制は越子の過と無関係ではない。
そこから捜査の方向が変わった。
「当、越子さんと緒に働いていたを優先して調べよう」
古い職員名簿が机へ広げられた。
名をつずつ確認していく。
故。
転居。
故。
県。
そしての名で、刑事の指が止まった。
池田正。
73歳。
元歴史・教師。
から数kmの所に現も居。
しかも、蓋骨が見つかった田の井戸からもくない。
「この、まだくにいるな」
「越子さんと勤務期がなってる」
「何?」
「数」
ただ、それだけでは疑う理由にならない。
同じ学で働いたはにもいた。
警察はずつ確認するため、池田宅も訪問対象へ加えた。
この点で捜査員たちはまだらなかった。
古い制という本の細い糸が、何分もの秘密が眠るへ続いていたことを。
池田正のは、からで数分ほどれた所にあった。
古い造宅だった。
建物自体は頑丈そうだったが、庭はあまり入れされていない。
伸びた。
枝の広がった。
使われていない植鉢。
玄関脇には錆の浮いた自転が置かれていた。
刑事が呼び鈴を押す。
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しばらくして、内側から音が聞こえた。
戸をけたのは、柄で痩せた老だった。
の髪。
い鏡。
古いカーディガン。
「池田正さんですね」
「はい」
「警察です。しお話を伺いたいのですが」
池田は驚いた表をほとんど見せなかった。
「どうぞ」
内へ招き入れる。
には古い本がかった。
歴史。
関係の資料。
古典。
辞典。
巻物。
壁際の本棚は井くまで埋まり、部はにも積みげられている。
古いと乾燥した植物が混ざったような匂いがした。
池田はへ茶をした。
作は落ち着いている。
「昔、県内の女子学で教員をしていましたね」
「ええ」
「歴史とを?」
「主にそのつです」
「野越子さんをごじですか」
その名がても、池田の表はほとんど変わらなかった。
し考え、
「野……」
と繰り返した。
「教師をしていた女性です」
「昔、同僚にいたような気がします」
「覚えていますか」
「もう40くですよ」
池田はく笑った。
「の顔など、ずいぶん忘れました」
「昨10に方になったことは?」
「聞で見ました」
「最会ったことは?」
「ありません」
「いつが最です?」
「分かりません。学を辞めてから会っていないといます」
刑事は池田の顔を見た。
声に揺はない。
線もきく揺れない。
警察が突然来たにもかかわらず、自然なほど落ち着いていた。
「越子さんの蓋骨が、くの井戸から見つかりました」
その瞬だけ、池田の瞼がわずかにいた。
だが、すぐに元へ戻った。
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