"井戸に沈んだ制服" 第8話
すぐ元が分かるものもあった。
過に池田が教えていた元徒。
隣にんでいた女性。
すでにしている女性。
しかし、問題があった。
靴があるからといって、その女性が殺害されたとは限らない。
何らかの方法で盗んだ能性もある。
実際、札に名がかれていた女性のには、現もしている者がいた。
「昔、靴をなくしたことは?」
警察から尋ねられ、の女性はしばらく考えた。
「あります」
「いつ頃?」
「若い頃です。学の駄箱からなくなった」
別の女性も、
「洗濯物と緒に玄関先のサンダルが消えたことがある」
と答えた。
つまり池田は、殺害した相だけでなく、い関を持った女性の靴を盗み、収集していた能性があった。
それが捜査をさらに複雑にした。
ただし越子については違う。
『浄化の』
という札。
失踪当の付。
本の靴。
のくから発見された蓋骨。
偶然では説できなかった。
取調で、刑事は池田のへ靴を置いた。
「これは野越子さんのものだ」
池田は見る。
「族が確認した」
返事はない。
「札の字はあなたの跡だな」
池田はゆっくり頷いた。
「そうです」
刑事は瞬言葉を止めた。
否定するとっていた。
「じゃあ説してもらおう」
「何をですか」
「なぜ越子さんの靴を持っていた?」
池田は靴を見つめた。
そして、
「必だったからです」
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と答えた。
「何に?」
沈黙。
「越子さんを殺したのか」
池田の表は変わらない。
「質問を変えよう。10、越子さんに会ったか」
「……」
「へ乗せたのか?」
「……」
「井戸へ蓋骨を入れたのはあなたか?」
池田は刑事を見た。
それから、まったく別の話を始めた。
「にはに結びつくものがあります」
「何だって?」
「持ち物です。記憶です。線です」
「質問に答えろ」
「靴は面と接するものです」
池田の声は静かだった。
「は毎、靴を通してに縛られている」
刑事は眉を寄せた。
「何を言ってる」
「それをせば、し軽くなる」
「誰が?」
「魂です」
刑事は机を叩いた。
「野越子さんを殺したのかと聞いている!」
池田はまばたきしただけだった。
「私は殺したとはっていません」
「じゃあ何をした?」
「解放です」
そのの取調べでも、同じだった。
池田は般なでの自をしない。
だが、靴や写真については否定しない。
質問すると、
「純粋さ」
「浄化」
「線」
「からの解放」
といった言葉を何でも語った。
話のには、既の宗教や団体との確なつながりは見つからなかった。
自分で作りげただった。
警察は精神科医の協力を求めた。
複数回の面接がわれる。
池田は、自分の為が社会の法律に反すること自体は理解していた。
だからを施錠し、靴を隠した。
そのでは、自分が何をしているか分からない状態ではない。
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方で、
「自分は必な儀式をっている」
という考えを固に持っていた。
被害者をのとして語ることもなかった。
「対象」
「魂」
「役割」
そうした表現を使った。
ある面接で医師が尋ねた。
「なぜ写真の目を切ったのですか」
池田はし考えた。
「線が残るからです」
「誰の線ですか?」
「彼女たちの」
「目を切り抜けば、何が変わる?」
「こちらを見なくなる」
「あなたは見られるのが怖かった?」
池田は否定した。
「違います」
「では?」
「顔から線をなくせば、個ではなくなる」
その言葉は、に事件を象徴するものとなった。
写真から目を奪う。
靴を奪う。
名と付を札にく。
池田のでは、それぞれが何らかのを持っていた。
警察は彼のノートを分析し、その独自の儀式を便宜、
「浄化」
と呼ぶようになった。
越子の靴の札に本がそういていたからだった。
だが、越子に何をしたのか。
いつ。
どこで。
どうやって命を奪ったのか。
体をどこへ運んだのか。
池田はそこだけを決して語らなかった。
越子事件の捜査と並して、のノートに記されていた過の失踪事件が再調査された。
特に注目されたのは、1980代に方となった3の女性だった。
3の事件に直接の関係はなかった。
齢も活も違う。
は若い女性。
は会社勤め。
もうもこの域の民だった。
共通しているのは、
「ある突然姿を消した」
ということだけだった。
当の捜査記録が倉庫から運びされた。
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